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おい!アヒル。ほんとに言ってるのか!?

少し肌寒い5月初旬の夜3時頃、殆どの人が寝静まっているのだろうか、辺りは静寂に包まれていた。

街灯も少なく月明かりの方が目立つ薄暗い住宅街の中に一軒だけテレビの音や光を漏らしている家があった。

そこに住んで居るのは秋沢蒼斗(21)髭ボーボーのロン毛で、ちゃんと整えればいい顔そうな顔を台無しにしているダサいメガネの究極ダメダメ人間。

蒼斗は高校中退後適当に仕事して、適当に暮らしてきたダメ人間の中のダメ人間。現在はろくに仕事もせず、コンビニで酢だこさん太郎を大量に購入して、部屋に籠もってずっとゲームをしている。

そんな蒼斗の至福の一時と言えば、ハッパを吸うことぐらいだろう。

いつものようにパケから砕かれたハッパをひとつまみボングに詰め込んで火を点ける。

大量の煙をぶはぁーーと吐きながらボソッと呟いた。

「やっぱこうでないと人生やってらんねーよなぁ。」

煙を吐きながら天井を仰いでいた蒼斗は一気に起き上がりロールプレイングゲームの途中だったのか、テレビ画面に意識を持っていく。

コントローラーを手に取りボソボソと独り言を言いながらゲームの世界へと入ってゆく。

「もう3週以上やってるけど、また最初からプレイするか!」

newgameのボタンを押しオープニングムービーを黙って見る。

しばらくし、ゲームは序盤のヒロイン登場シーンとなった。

「いやぁ。羨ましいよなぁこの主人公。こんな可愛い姫と一緒に冒険なんてうらやまし過ぎるぜ全く。」

目を充血させながらもう何枚目になるかわからない酢だこさん太郎へと手を伸ばす。

酢だこさん太郎を頬張りながら水をがぶ飲みする蒼斗。

彼の独り言は尽きることなくずーっとボソボソなにか言ってる。

「あぁ。俺もゲームの主人公となって美しい姫を守りながら世界救いてぇなぁ…………そんなの無理か。」

自分で言っときながら、なに言ってんだよと呆れながら苦笑いする。

「その夢、叶えてあげようか?」

「あー頼む頼む。超絶美少女のヒロイン用意してなっ!………ん!?」

突如として聞こえた声に反射的に答えた蒼斗だったが、ふと我に還る。

今聞こえた声というより頭の中に直接聞こえてきた声は幻聴なんかではなく、間違いなく少年の声だった。

それはまだ声変わりもしてない幼く少し高い少年の声。

さすがにハッパ吸っているとは言っても今のは聞き間違いじゃないだろうと判断し黙って耳を澄ませる。

しかしいくら耳を澄ましても聞こえてくるのはゲームの音だけ。

蒼斗はそのままなにも言わずゆーっくりと後ろに振り返る。

そしてそこにあった物?を見て驚愕の余り完全にフリーズした。

口を開け目を見開いたまま固まってる蒼斗を見て表情一つ変える事なくその物?…その黄金のアヒルは告げた。

「こんばんは蒼斗くん。さっき君が言った事は本当かい??」

アヒルがしゃべった!?と思いつつも少し冷静さを取り戻し恐る恐る聞き返す。

「な、なんのことだ?」

「君がさっき言った主人公になりたいって話だよ。」 

淡々と話す黄金のアヒルだが、蒼斗はこれは現実なのか、それとも幻覚なのか?などなど駆け巡る思考の渦に巻き込まれ話が全然入ってこない。

返事が返ってこない事で察したのか黄金のアヒルはわざとらしく咳払いをして注目を促す。

「蒼斗くん。驚くのも当然だろうけど、これは現実だよ。幻覚でも夢でもない現実そのものだよ。」

その言葉によって蒼斗は整理が出来たのか少しムッとした顔でアヒルを睨む。

「おいアヒル。なんでしゃべれるんだおまえ??」

もっと気になる部分あるだろうなんでソコを一番最初についてきたんだよなどと困惑しつつも淡々と告げる。

「それを今から君に説明するためにここのきたのだろう!」

ピシッとするアヒルに対しまず現れなきゃそんな疑問生まれないだろなどとブツブツ言って疑うような目で睨んで続きを促す。

全くやりにく相手だなと思いつつも、話を流した。

「それで、さっきの言葉は本当かい??」

流したなこの野郎と思いつつもここは話を進めるのが優先かと冷静な判断を下す。

「あぁそうだな。こんなくそみたいな人生やめらるなら俺もゲームの世界にでも入りたいねぇ!!?」

どうなんだよおまえは俺を招待してくれるのかよ?と言わんばかりの口調でアヒルを睨む。

それに動じる事なくアヒルも自信を持って断言した。

「出来るとも!君が了承すれば今にでも僕たちの作り上げた世界へと招待しよう!」

なら頼むと勢いよく立ち上がろうとした蒼斗だが、まだ待てとアヒルが目で訴えた。

「だが待て蒼斗くん。君の本気を見せてもらわなけらば困る。」

数秒の沈黙の後、蒼斗は目をキラキラさせながらアヒルを見る。

「おい!アヒル……おまえほんとに言ってるのか!!?ほんとに俺姫と出会えるのか!!?」

今世紀最大の歓喜を溢れ出した蒼斗にアヒルは告げた。

「では人生で最初で最後のチャンスを君に与えよう蒼斗くん。君は僕たちの作り出した最高の舞台である箱舟。いや、ゲーム盤のプレイヤー及び住人として召喚される事を願うかね?」

迷う事なんてなにもない。こんな現実世界に未練なんてねぇ。今までの俺の妄想が理想が今現実になるってんなら掴み取るしかねぇだろ。

「あぁ。頼むよアヒル。」




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