アイハナ
お見苦しい文かもしれませんが、最後まで読んでくださると嬉しいです。
恋愛は時として人を狂わせ、殺人鬼を生みだしてしまう。それほどまでに誰かが誰かを思う心は強い。特に嫉妬はやっかいなものだ。例え楽しく話しているだけでも彼氏もしくは彼女には不安に思うこともある。もし手を出そうものなら、、、、、
AT高校に通うごく普通の高校生のお話。
俺の名前は西山健
みんなからはやまけんって呼ばれてる。
「じゃあテストを返すぞー!みんな心臓バクバクさせて渡されるのを待て!」
先生はこうやって生徒を精神的にいじってきやがる。
でもみんなから慕われてる。成田先生。
「東!」
「はい」
「お前は今回も100点だ!よくやったな!」
「はい!!ありがとうございます!」
「はい次、、、」
どんどん自分の番が迫ってくる。頭を抱えて心臓をバクバクさせていた。
「はいつ、、、西山ぁあ!」
「はいぃぃっっ!?」
「まぁた37点!前回と一点しか変わってない!!どーゆー勉強すればこんな点数取れるんだ!!」
「いやぁこれも才能ですわ。俺も自分の才能が怖いっすわ~!」
「西山、お前は今日居残りな!先生と2人っきりでな!」
クスクスクス
「えぇー!先生と2人っきり?冗談はそのハゲ散らかした頭だけにしてください!」
ザワザワクスクス
先生のツルツルの頭と顔が茹でたタコのように赤くなっていく。
「西山ぁぁぁ!!!てめえこのクソガキ!あとでしごいてやっから覚悟しとけよ!おぉ?」
「あ、は、はい、、、」
こうして俺の1日が始まるわけ。
「先生ー、もう帰ってもいいっすか?俺約束があるんすけど、、」
そう、今日は幼稚園からのなじみである高山幸也とその友達の女の子二人と遊ぶ約束がある。
幸也とはクラスは違うが今でも親友だ。
「だーめーだ!この問題が解けてからにしろ!」
ったくくされ先公がっ。
なんて口に出して言えない。
もうxyの見すぎで目を閉じるとxyが羅列している。
俺は女の子と遊ぶことを楽しみすぎてそこから必死こいた。
今になってはどうやって5分足らずであの問題を解けたのか自分でもわからない。
天才、その言葉はきっと俺みたいなやつが使う言葉なんだろうな。
「よくやったな西山。お前はやればできるな!なんて言うかボケぇ!こんくれー解けて当然だぞ!まあお疲れさん。」
んだとコラ!てめーのその残り少ねー頭のひじき、全部抜いてやろうか??
なんて言えたらきっと心晴れ晴れなんだろな!
「は、はい。本気出してみましたから」
急いで幸也と女の子たちとの集合場所に向かった。
「おせーよ!!!」
俺を見るなりでかい声で幸也が怒鳴った。
走ったから汗かくし、幸也がでかい声出すから周りの人から見られるし、恥ずかしい!
「わりーわりー、担任のハゲたまがなかなか解放してくれなくてさ。」
そんなことを言いながら幸也が連れてきた女の子二人をチラ見。
一人は黒髪さらさらの清楚な感じのとても可愛い子で、もう一人は、、、
なんて言うかとてもふくよかで、、、
期待させるより簡単な言葉で言えば、ブスだった。
「こんにちは!俺AT高の西山健っていいます!
みんなからはやまけんって呼ばれているのでよかったらやまけんって呼んでね」
「こんにちは!」
私が先よと言わんばかりに挨拶を返してきた。
あのブスが。
「こんにちは!私、M高の田山花恋でっす!よろしくぽよ~!」
あ?
花恋?
ぽよ~?
名前と顔が一致してねーぞ!
かわいい言葉使ってんじゃねーよ!
似合わねーよ!
「よ、よろしくね!花恋ちゃん!」
そして待ちに待った黒髪美少女!
「こんにちは。私もM高に通う中島葉月です。よろしく」
元気がないというか、なんか、、、
「葉月ちゃんね!よろしく!」
この四人でゲーセンに行くことになった!
夕方だし、なかなか人が多かった。
始終俺は葉月ちゃんの気をひこうとたくさん話しかけた。
でも、、、
すごくそっけなかった、、、
その代わりと言ってもなんだがブスが俺にマシンガンの如く話しかけてきた。
「ねぇねぇ!やまけんは結構モテるんでしょ??かっこいいし!!もし私が彼氏いなかったら告ってたかも!」
あ?
お前に言われても嬉しくねーんだよ!
「なになに~?健に浮気??」
ちゃかすように幸也がブスに言った。
幸也だけは昔からやまけんとは呼ばない。
「ちがうんだから!勘違いしないでよね!!」
あ?
なにツンデレの決まり文句言ってんだよ!
そんなことを思いながら幸也のほうに目を向けると、葉月ちゃんと楽しく会話していたようだ。
俺には笑顔さえ見せなかったのに。
心の中で自分の涙で溺れた。
「幸也くんは料理何が好き?
彼女にはなにを作ってもらいたい?」
葉月ちゃん、めっちゃ幸也との距離が近くなっているような、、
「そうだなー、俺は」
「ねえちょっと!!!聞いてる?」
ブスが幸也と葉月ちゃんとの会話に耳をそばたてて集中していた俺に言った。
「やまけんはどんな子がタイプなの?」
「うーん、俺は、、、」
葉月ちゃんみたいな子!
なーんて葉月ちゃんになら言えたのかな、、
「可愛い子より、可愛らしい子かな」
「えー?待ってもしかして私を見て言ったー?」
あ?
俺、おめーの後ろのポスターの女の子を見て言ったんだよ!
「う、うん。そーだね、、」
違うよってはっきり言えばよかったって後悔したのは20秒後だった。
突然ブスがりんごになった。
素直に言えば顔が赤くなった。
「よかったら二人で少し話さない?」
え?
「行ってきなよ!俺は葉月ちゃんとここで待ってるからさ!」
幸也ぁぁぁあ!!
てめー!!!
とまどっているとブスが俺の手を引いて外に出ようとした。
「外に行くのー?」
「いいからいいからー!」
よくねーよ!
手を引かれてあまり人気のないゲーセンの裏側に連れてこられた。
「さっきね私嘘ついたの。ホントはね私彼氏いないの。」
うん知ってる。
「だからさっきやまけんに告白されて突然だったけど嬉しかったよ!」
突如涙を流しながらはなしてきた。
え?告白したみたいに受け取ってりんごになってたの?
違うからね!!
女の子にの涙は男を引き寄せる。
でもこいつは違う。
まずなにもかも違うでしょ!
告ったわけじゃねーし。
「ごめんさっきのは告白したわけじゃないんだ。あくまでタイプは可愛らしい子ってことだから。」
焦りながら言った。
「え?、、
そうだよね、、私みたいなブスは誰にも相手にされないもんね」
実際ブスでもこんなこと言ってきたらなんかこっちが申し訳なくなる。
「そんなことないよ!絶対花恋ちゃんを好きになる男が出てくるって!」
必死に励ました。
まだしくしく泣いてる。
あーもう!!!
今頃幸也は葉月ちゃんと楽しく話しているのに俺はなんでこんな思いをしなきゃなんないんだぁぁあ!
泣きやんだ頃に俺が幸也たちのところに戻ることを促した。
戻ってきた俺たちを見てまずなにを言われるかは予想できてた。
「おっかえり~!え?どうしたの?なんで目赤くなってるの?大丈夫?花恋ちゃん」
幸也が予想通りの言葉を発した。
「なんでもないの。目にゴミが入っただけ。楽しく会話してたよやまけんと!」
いや楽しくなかったんですが?
てかこんなに優しい言葉を言ってくれる幸也に惚れるだろ普通。
実際幸也はイケメンだし頭もいいし運動もできるし。
「そだよ!楽しく話してた。」
とりま空気を読んだよね。
「さて、そろそろご飯食べて解散しよっか!」
幸也がしきってくれた。
近くのファミレスに寄った。
幸也のやつ変な気をきかせて俺をブスと向かい合わせになるように座った。
葉月ちゃんは幸也と話した方が楽しいようだ。
幸也もそうらしい。
かく言う俺は、、、
なんか気まずい。
形だけ見れば俺が勘違いさせちゃったみたいな感じだしね。
俺は悟られないように仕方ないからブスに話しかけた。「花恋ちゃんはどういう男がタイプなの?」
「優しくて、イケメンで頭良くて運動もできる人!」
いや、それ幸也じゃん。
「でも私積極的だからみんな逃げちゃうんだよねー!
」
いや、まず顔と体型!
「そーなんだぁ!幸也がそれ相応だよ!」
「ねぇ、今私幸也くんと話してるんだからさ。空気読んでよ。」
葉月ちゃんに睨まれた。
泣きそうになった。
「あははっ!健もイケメンだし優しいよ!頭と運動はあれだけどギターすごくうまいよ!」
幸也がいらんフォローしてくれた。
ここでやっと葉月ちゃんから話しかけられた!!
「健さんてギターやってるんですか?」
敬語でよそよそしいな、、
まぁ仕方ないよね。
「そうだよ!よかったら今度のライブ見に来てね!!」
ここぞとばかりにアピールした。
「まぁ時間があれば行きたいと思います。」
来ないパターンのやつだねこれ。
「うん!!絶対行く!!」
ブスが私一番とばかりに言ってきた。
「ありがとう!!」
明るく言った。
「葉月ちゃんはアーティスト誰が好き?」
俺がさらっと聞いてみた。
「ディライト」
ディライトとは今若者に爆発的な人気のアイドルだ。
「ディライトかー!今流れに乗ってるよね!!ちなみに俺はデルド!」
ちなみにデルドとは20年前くらいに爆発的ヒットを記録した海外のバンドで、そのギタリストは速弾きがすごい!ただ速いだけじゃなくメロディアスで魂がこもってる!
「ごめんデルド知らない。」
ここで会話が終わってしまった。
なんか、、、
俺ってコミュ障、、
なんやかんやで解散の時が来た。
ここでみんなで連絡先交換しあった。
あまり話せなかったけど、葉月ちゃんの連絡先交換できてよかった。
それから何日もたって遊んだことすら記憶から薄れてきた頃、葉月ちゃんからLINEがきた。
ここでいつもならテンション上がりまくる。
しかーし!!
あそこまで脈ないですよ感出されて、邪魔者みたいな感じに扱われたのにここで興奮するのはただのMだ。
「あのさ、やまけんさんに聞きたいことあるんですけど。」
「なに?」
「今何してる?」
「ギター弾いてる」
仕返しのつもりはないけどなんかプライドがあったから冷たい感じに返してしまった。
「この前はごめんなさい。冷たくあたってたみたいで、、、」
「別に気にしてない。」
なんだか冷たく返してしまいながらもなんだかテンション上がってきた。
あの子が俺にこんなこと言うなんてぇぇえ!
これだから男ってやつは単純って言われるんだな!
「明日時間ある?」
え?
「あるけど、どうしたの?」
「それは明日のお楽しみ!」
え?え?えぇぇええ?
これって!!!
これってえぇ!
俺は叫びたい気持ちだったが今は夜の11時。
「楽しみにしとくわ!」
「うん!また明日ね!おやすみ!」
女神がいるならお礼をいいまくってたね!
朝が来た。
日が昇る。
朝日というのは美しいものだ。
でもこの文からもわかるように日の出を見ている。
つまり興奮して眠れなかった。
どんな話をするか、どこへ行くか頭を悩ませつつ妄想をしていたら眠れなかった。
中学生かよってな。
学校が終わって下校中、幸也に会った。
なんか暗い顔をしてる。
「どーしたの?お前がそんな顔するなんて珍しいな」
元気良く話しかけた。
「ふられた、、、」
え?
幸也はふることはあってもふられることはない男だからとんでもなく驚いた。
「え?誰に??お前が?」
「葉月ちゃん、一昨日俺から告白して、、、ふられた、、、」
ん?
俺は思った。
葉月ちゃんが俺にLINEしてきたのは昨日。つまりその前日には幸也は告ってふられている。その次の日に俺に遊びのお誘いをしてきたってことはもしかして。
確信を得たくて次の質問をした。
「なんて言われてふられたの?」
「好きな人がいるんだって。片思いだけど絶対成就させたいって、、」
これって確信していいかな、、
でも幸也には言えない。
なんでも話せる親友だけどこれは言えなかった。きっとここで言っていれば運命とやらは変わっていたのかも。
「そっか、、次がんばろうよ!俺もがんばるからさ!」
「お前はあてあるの?」
「ないよ、、、」
すごく罪悪感があった。
そして一度家に帰り、約束の場所に向かった。
「あ、やまけんさん!」
「葉月ちゃん久しぶり!てかやまけんか健でいいよ!」
「じゃあこれから健って呼ぶね!」
内心幸也への罪悪感はあったけど時間と共になくなっていった。それほど楽しい時間だった。
色々なところを二人でまわって、カフェやおしゃれなお店やら服屋やらに行った。前とは違って俺と楽しそうに会話してくれてる。俺はまるで幸せってものを味わってる気分だった。さてそろそろ夜も更けたし解散かって時だった。
暗い帰り道、二人で歩いていると、「こっちにきて!」
葉月ちゃんに手を引かれた。
あの時のブスとは違ってきれいな白い柔らかい手で手を握られた。
そして、人気のない橋の下に連れてこられた。
これってまさか!ってドキドキした。
「あのね、私健が好きなの」
「え?でも前は幸也と楽しそうに話してたじゃん?だからてっきり幸也のことが好きなのかと思ってた」
「違うの。あの時は花恋が健に一目惚れしたって言ってたから、、、私花恋に彼氏いないの知ってたし。応援してあげようと思って、、本当は私も健が好きだったの」
なぜだかここで幸也に対して罪悪感が爆発しそうだった。
でも俺もこの子といて楽しかったし、本当の自分の気持ちは葉月ちゃんを好いている。
自分に嘘つきたくない!
これで親友じゃなくなったらそれまでの友情だったってこと。
でも幸也に限ってそれはない。
いつも俺の背中を押してくれる。
そんな幸也が俺に失望なんかしない。
そう思いたかった。
だから、
「俺も葉月ちゃんが好き、会った時からずっと」
葉月ちゃん泣いてる。
「どうしたの?ごめんなんか俺悪いこと言った?」
「ううん、ありがとう!」
涙をためながら笑って見せたその笑顔は日が沈んだ空も照らしてしまうんじゃないかってぐらい輝いて見えた。
こうして俺は葉月と付き合うことになった。
え?もう呼び捨てでドヤ顔すんなって?
そりゃ無理って話しっすよ!
だってほぼ週3で会ってるし、すごく幸せなんだよね!
そしてついに1ヶ月記念日がやってきた!
俺は身支度を整えて約束の場所にむかった!
この日のためにお金貯めたんだ!
お揃いのペアリング!
喜んでくれるかな?
「葉月ー、おまたせー!」
「もう遅いよー!」
2分遅刻してしまった!
俺の彼女は時間に結構うるさい。
まぁそんなところも含めて好きなんだけどね!
そして普通の学生は行かないような高級レストランにむかった。
二人で話しながら歩いているこの道も空もまるで俺たちを歓迎してくれているように思った。
「やっぱり土曜だから人多いね」
「夕方だもんね!でもまさか健があのレストランで食べられるほどのお金を貯められるとはね!」
「そりゃ俺だって本気を出せば余裕よー!」
「今回は認めてあげるね!」
他愛ない話しをしながら歩いた。
そしてレストランについた!
さすがに緊張した。
学生だから浮くんじゃないかってこともだけど、1ヶ月記念日だからってこともあった。
ドアを開けて予約しておいた窓側の席についた。
言ってなかったけどここビルの15階だから夜景が素晴らしい!
葉月も緊張してるみたい!
動きがぎこちない!
その仕草もかわいいなぁ!
お高い料理も頼んで素晴らしい時間を満喫した後、結婚のプロポーズみたいな感じでペアリングを渡した。
「きれい!ありがとう健!大好きだよ!」
きっと俺顔の中にマグマでも入ってんじゃないかってくらい顔が赤くなった。
「俺もだよ!」
これしか言えなかった。
これ以上なにも浮かばないくらい嬉しくて。
会計も済ませて、帰り道二人で歩いた。
そして俺は彼女の手を引いてあの時来た橋の下に連れてきた。
ベタかな。
ここで初めてキスをした。
きっと葉月顔真っ赤だよ!
だって抱きしめたその体からすごくドキドキしてるのがわかるから。
俺もドキドキしてるし。
俺も真っ赤だよ!
とても濃くて充実した1日だった。
そして1ヶ月記念日から三ヶ月過ぎた頃からなぜか幸也の態度が変わった。
俺のことを無視している。
俺は幸せの絶頂で幸也と葉月との間に何があったのかさえ忘れていた。
さすがの俺も腹が立ってきた。
「なんで俺のことを無視すんだよ!!」
昼休みに幸也が屋上で寝てたから怒鳴って聞いた。
そしたら、胸ぐらを掴み殴ってくる勢いで
「てめーが嘘をついたからだろ!!
俺知ってんだよおめーと葉月ちゃんが付き合ってること!なんで言ってくれなかったんだよ!俺がふられたからか?それとも優越感に浸りたかったからか?」
「ちげーよ!お前がふられてショック受けてたからとても言い出せなかったんだよ!!俺だって告られた時お前に罪悪感あったよ。でも俺は自分に嘘つきたくなかったんだよ!!」
「おめーのそういうところがムカつくんだよ!健!お前に言っておく!もうお前とは友達じゃねえ」
ここで謝ることなんてできなかった。
「そうだな。この程度だったんだな俺らの友情はさ」
幸也は睨みつけるように俺を見て去っていった。
次の日から俺はあらぬうわさを学校中で流された。だれが流したかは検討はつく。
噂の内容は、俺が女を脅迫して無理やり付き合わせてるとか、色んな女に手を出してヤクザに追われてるとか、そんなくだらない内容だった。
でも、信じたやつは多かった。俺から離れていったやつが多かったからだ。
学校が終わって葉月にLINEした。
「今日会えない?」
噂を気にしないようにしてたけどやはりイライラはするもので、癒しが欲しかったのかもしれない。
「いいよ!今から?」
「うん!今から!」
いつもの公園で待ち合わせた。
葉月が来た!
でもなんかいつもと様子が違う。
なんか少し警戒しているようなLINEではわからなかったけどそんな感じがした。
「健、浮気なんかしてないよね?」
突然の質問に驚いた。
「するわけないじゃん!誰がそんなこと言ってたの?」
「幸也くんが、、昨日幸也くんが健が知らない女の子と楽しそうにしてるところを見たって、、、」
「あの野郎!葉月、俺のことを信用して!俺、葉月だけだから!」
「うん、、」
なんかあまり納得していないような感じだった。
それと同時に幸也を憎んだ。
ふられたからって俺にやつあたりか?
むかつくやつだったんだな。
それから三日たった。
彼女が泣いて電話してきた。
「どういうこと?なんで知らない女の子とデートしてたの?私だけって言ってたじゃない!!」
なんのことな全くわからない。
「は?俺女の子と遊んでないよ?」
「嘘だ!!だって写真あるんだよ!嘘つかないで!」
「嘘なんかついてねーよ!その写真見せて!」
そして電話切ってすぐに写真がLINEで送られてきた。確かに俺が知らない女の子と遊んでる。ただし顔だけ俺の合成写真だった。
浮気してるって噂を聞いて疑心暗鬼になってた彼女はこれを見たら信じ込むに違いない。
すぐにLINEで
「これ俺じゃないよ。この日付の日俺ずっと家にいてギター弾いてたし。」
「本当?」
「もちろん!」
「ごめんなさい、、私疑心暗鬼になってた、、、そうだよね、健が浮気するわけないもんね!」
「幸也ともう連絡取らないで!あいつ、俺たちを引き裂こうとしてるんだよ!心配かけたくなかったから言わなかったけど、あいつ学校で俺のデマを流しまくってる」
「最低」
「だからもう幸也と連絡取らないでな!」
「うん!わかった!でも大丈夫?そんな噂流されて辛くない?」
なんだか泣きそうになった。
「大丈夫大丈夫!すぐこんな噂なくなるさ!」
それからなぜかピタッと幸也からの嫌がらせが無くなった。
なんでだろうって思ったけど終わるに越したことはないから気にしなかった。
それから数ヶ月たって幸也は学校で見かけなくなった。
幸也のクラスのやつの話によると退学したらしい。
自主退学ではなく、無意味に担任を殴ったらしい。
動機は曖昧でむしゃくしゃしたから。
この時はバカだなぁくらいにしか思っていなかった。
変な噂が立つまでは。
幸也に関する噂はいいものではなかった。元親友が噂されてるってこともあるしね。
例え喧嘩していても親友だった頃を忘れたわけじゃないから。
学校をやめてヤクザの下っ端になったって噂が一番有力らしい。
気が引けるけど幸也に連絡してみた。
応答がない。
幸也の家にも電話したけど幸也は学校をやめてから家に帰ってきてないらしい。
幸也のお母さんとても心配してるみたいだったけど、またいつもみたいに友達の家に泊まりに行ってるんだろうと言ってた。
でもなんだか嫌な予感がするような気がした。
屋上で俺を睨むあいつの目はとても闇を潜めてる感じであったから。
それから俺はね、まるで勝ち組だったよ。
彼女に勉強教えてもらいながらギターも必死で練習した!
高校卒業するまでは成績を下から五番目から上から七番目にまでのし上がった。
そして、なんとなんと!!
市役所に就職できた!
そして、お金のほうが安定したら結婚しようと約束した!
でも予想的中、嫌な予感ほど当たるもんだよな。
これほどまでに幸也を殺したいと思ったのは初めてだし、幸也を殺しても当然だと思えた。
俺の彼女、葉月が幸也にレイプされた。
彼女はレイプされたショックから廃人のようになってしまった。話しかけてもなにをしても虚空を見つめている。でも彼女に触れようとすると、おそらく襲われた記憶がフラッシュバックするのか暴れて泣きわめく。今彼女は精神科の病院にいる。
毎日会いに行くけど、なにも反応はない。
でもまた笑顔を見たくて涙でぐしゃぐしゃの顔でたくさん話しかけた。
頷くこともなく、声を発することもない。
幸也のせいだ。
あいつを許さねえ。
そして俺はあいつを探偵に見つけさせた。
今あいつは隣の県のアパートで一人暮らしをしていた。
俺は朝早く起きてその県にむかった。
バッグにナイフを忍ばせて。
ついにこの時が来た。
自然と緊張も戻りたいって気持ちもなかった。
あいつのアパートの前まで来た。
そしてあいつの部屋のインターホンを押した。
「はい?」
と言いながらすっかり荒れた様子の幸也がなに食わぬ顔で出てきた。
俺は胸ぐらを掴んで部屋に押し倒した。
「何すんだコラぁ!」
あいつは怒鳴りちらした。
でももう俺には何も聞こえない。
バッグからナイフを取り出した。
「そのナイフでどうすんだよ?俺を殺すのか?殺すよなぁ大事な女を犯した男が目の前にいるんだもんなぁ!!」
この開き直った態度がさらに俺の怒りをかりたてた。
「殺す」
この一言だけ言った。
するとあいつは俺が本気なことに気付いて急に怯えだした。
「すまなかった許してくれ。あの時は怒りでどうにでもなれって思っちまった。反省してる。頼む許してくれ!」
あいつが涙を流した。
その涙を見てすこし躊躇してしまった。
その一瞬をあいつは見逃さなかった。
俺からナイフを奪い、俺の腹に突き刺した。
「お前がわりーんだよ!お前は俺の彼女になるはずだった女を奪いやがったんだ!死ね」
そこから何があったのか全く覚えていない。
目を覚ましたら病院にいたからだ。
警察やら親やら彼女の親やらがお見舞いに来てくれた。
あいつは、幸也は捕まったらしい。
なんでも俺を刺した後、街に出てナイフを振り回し俺が殺したんだと叫んでいたらしい。危ない薬にも手を出していたようで。
当の犯人の親は軽い謝罪だけですませた。
もう頭の中が真っ白でそんなことも気にならなかった。
親父はブチ切れてたけど。
病院の病室の天井をボーッと眺めていると彼女の笑顔が頭の中を埋め尽くす。
会いたいけど、まだ退院できない。
今思えば、あいつを殺さないで良かったのかもしれない。もし殺していれば二度と彼女と会うことが許されないから。
そんなことを思い出しながら今の彼女を想うと涙が止まらなかった。
一時間泣いては、泣きやみ、また思い出しては泣いての繰り返しだった。
そんなこんなで傷は治り軽傷ですんだため退院の日が来た。
病院を出てすぐに彼女がいる病院にむかった。
はやく顔が見たかった。反応しなくてもいい!彼女のそばにいたい。自然と走っていた。
彼女のいる病院につき、彼女がいる病室を開けた。
いない。
なんで?
近くにいた看護婦に、
「中島葉月さんは今どこの病室ですか?」
と尋ねた。
「中島葉月さんならちょうど一週間前に退院なされましたよ。」
え?
だって一週間前って言ったら彼女の両親が最後に俺の病室に見舞いに来た日だよ。
退院したなんて一言も言ってなかった。
俺は病院を出て彼女の家に向かって走った。
彼女の家はマンションの三階。
この部屋だ。
インターホンを鳴らした。
誰も出ない。
それどころか人が生活している気配すらない。
周りの部屋には表札があるのにこの部屋だけない。
殺伐と303と号室番号が書かれているだけだった。
俺は混乱した。
もしかして葉月は俺が妄想の中で生み出した彼女だったのか?
あの楽しかった時間は俺が妄想しすぎて妄想と現実の区別がつかなくなってたの?
そんな、、、
目から止めどない涙があふれる。
その部屋の前でうなだれていると、買い物から帰ってきた隣の部屋のおばさんが
「なにをしてるの?」
と話しかけてきた。
「なんでもないです。」
とそっけなく返した。
でも、泣いてる俺を見て思うことがあったのか、この部屋の家族は引っ越したことを教えてくれた。
どこに引っ越したのはわからないとのことだった。
安心した。
彼女が自分の妄想じゃなかったことが嬉しくてまた涙があふれた。
でもどうして引っ越したの?
どこに?
そして俺は新たな決意をした。
笑われるなもしれない、叶わないかもしれない。
でもやらなきゃ始まらない。
絶対にやる!
それからというもの俺は市役所役員を辞めバンドの練習をしまくった。
全てを練習に費やした。
ライブハウスにたくさん出て、少しでも大きい舞台に立てるように。
5年の月日が流れた。
時間の流れと現実は俺の心を少しずつ削っていった。
なんの成果もなく名前が売れることはなかった。
ただ小さいライブハウスで少ない時間で自分の音楽を最大に最高に演奏した。
それの繰り返しだった。
評価もなく、メンバーにも不穏な空気だ。このまま健についていってもなにも残らない。
そう言ってメンバーは一人一人抜けていった。
ついに一人だけになってしまった。
思えば、俺は最初に親友を失い、彼女を失い、メンバーも失い夢も失った。
もうすさみきった心に思い出だけの彼女は輝くことはなくなっていった。
「もう全てを終わらせよう。」
でもその前に彼女への手紙を書いておこう、、、
そして次の日の夕方俺は今、とある橋の下にいる。
ギターを担ぎアンプを持って。
俺はそこで一人で路上ライブをした。
人通り少ない橋の下でギターを弾いてる俺を見て白い目で見る人や写真を撮ってバカにしている声が聞こえる。
でも俺には関係ない。もう失うものはないから。
日も沈み、人通りが消えた橋の下からはギターの音が虚しく響いている。
ライブハウスでやった曲を全て演奏した後、最後に昨日書いた彼女への手紙から作った曲を演奏しようとした時人影が見えた。
それは髪が長く彼女と同じ背格好、まさかと思った。
その人影はゆっくりと近づき俺の目の前に座って聞いていた。
でももう俺は知っていた。
その子が彼女ではないことを。
その曲も演奏が終わり、その子を返したあと後片付けをした。
やりきった。
そんな気分だった。
これならスッキリしてあっちに行けそうだ。
そう思いながらロープで輪を作って橋の下のあまり人目につかないような場所に移動してブランコを作った。
これでやっと終われる。
輪を首にかけようとしたら、暗がりから
「なにしてるの?」
と聞かれた。
「別の世界に行くんだよ。もう遅いし家に帰りなさい。」
と優しく返した。
「ここで彼氏が戻ってくるのを待ってるの」
「そりゃ悪かったね別の場所にしてくれ」
どうやらその暗がりの人影は俺のギターを見つけたらしく、質問してきた。
「ギターを弾くの?」
「あぁ」
「好きなアーティストって誰?」
「なんでそんなこと聞くの?」
「好きなアーティストやギタリストがいたからギターを始めたんでしょ?」
「俺はデルドのギタリストに憧れてギターを始めたんだよ。さぁもう帰りなさい。」
「へぇ、デルドのことはわからないけど私の彼氏もデルドが好きなんだよ」
「珍しいな、デルド好きな人がいるなんて」
デルドって名前で自分の心が少しだけ戻ってきたような気がした。
「ねえ、彼氏が戻ってくるまでギターを弾いて!」
仕方ない。
「彼氏が戻ってきたら俺をひとりにしてくれ」
そして俺はまたギターを担いでアンプにつなげて弾き始めた。
曲目はさっきと同じ。
ライブハウスでやった曲、そして彼女のために書いた手紙から作った曲。
彼女のために作った曲を弾いている時だった。
彼女の笑顔や彼女と歩いた道、空いろいろな思い出が音と共に俺の頭の中にまるで映画館で映画を見ているように映し出された。
それはすさんでた心に光が集まり、自分が、心が自分に戻ってきている、そんな気分だった。
涙で声がくしゃくしゃだった。
きっと顔もくしゃくしゃなんだろうな。
彼女のための曲も弾き終わった時、無意識に口から
「葉月」
と出た。
そのまま感情があふれでた。
涙と共に。
「葉月に会いたい」
よく聞くとその彼氏を待っている子も泣いているようだった。
周りからみたら奇妙な光景なんだろうな。
暗がりで一人はギターを持って、一人は座って泣いている。
「なんだかスッキリした!やっぱり俺は彼女が好きだ!世界で一番!絶対にまた会える!そんな気がする!」
「うん!」
「それで、君の彼氏は戻ってきたかい?」
「うん!戻ってきたよ!ずっとずっと待ってた!やっと戻ってきてくれた!そして初めて、しかも特等席で彼氏の、ううん!健のライブを見れた!」
え?
「もしかして、、、」
俺が言い終わる前にその子は橋から離れた明るいところに行く。俺もついていき、その愛おしい姿を見た。
「葉月、、」
心が高ぶって言葉が出ない。
そんな俺の手を引いてまた橋の下に来た。
そこで二人の本当のキスをした。
お互い涙で顔が濡れている。
でもその涙が温かかった。
二人で近くの野原に寝転んだ。
二人で星を眺め、たくさんの話をした。
どうやら引っ越した理由は彼女の両親が俺のことを心配してのことだった。
人形のようになってしまった彼女のために付きっきりでどんどんやせ細っていく俺を見ていられなくなったようだ。
彼女は涙ながらに話してくれた。
「私が戻ってこれたのはね、夢の中で男の人が私を何度も呼んだの。その夢を毎日見るようになってね。それでその夢の男の人の姿がどんどん見えるようになっていった。でも、はっきり顔がわかったけど、思い出せなかった。知っているような知らないような。ある日ね、お母さんがリングを持ってきてくれた。そのリングにはKENって書かれててそれを見たとき全てを思い出せた!」
俺はずっと話を聞きながら泣いてた。
その日の日の出はとても美しかった。
太陽に照らされた二人の顔は泣いた跡ですごく面白い顔だったから二人してお腹を抱えて笑った。
そして俺は、いつもバッグに入れていたお守りの箱を
出した。
彼女の前で開けた。
そう!
それは結婚指輪。
日の出の美しい日差しに反射する指輪はどんな宝石より輝いていた。
「葉月、俺と結婚してください!」
すると葉月は涙を流しながら笑顔で
「はい!」
と言った。
その笑顔は今でも忘れられない。
この時のことは人生で二本指に入るくらい幸せな時間だった。
「これがパパとママの大切な思い出だよ!」
まぁレイプの話は端折ったけどね。
「さっきパパはその時のことを人生で二本指に入る幸せって言ってたけど、もう一本はなんなの?」
それはね、麗華が産まれてきてくれたことだよ!
最後まで読んで頂いてありがとうございます!
みなさんにも幸せがありますように!