動かぬひまつぶし
「……」
すぐその先には男達の死骸。
ご近所さんでとりあえず肩を回してみる、欠伸をしてみる、背伸びしてみる。
円周率を呟いてみる……寿限無寿限無後光のすり切れ……
どれも今いるポジションから動けずにやっている事ばかり。
え、何か暇?暇だよ!
倒れてしまった男達の様子を伺いたいのに動けない。とりあえず天国らしい所に行きたいのに動けない。
足が動かないんだ、何故か。
それでも疲れはしないのは、疲れと言う概念が無い天国ならではの事なんだろう。死んだ魂が疲れたなんて言うはずがない。
とは言え持っている物が何もないだけにやる事が無くて、誰か引っ張ってくれないかなーと思う。でも近くにあるのは動かぬ男達の勇士……立派だったぞ。
俺が鼻先タッチで倒せるなら参加してやればよかった……全ての魔物は鼻先チョンで解決するのだな。それは誰も知らない俺だけの……俺だけの!
俺どの位此処に居ればいいんだーーーーっ!
「うおおおおおおっ!」
ダンダンと地面を叩く。
何回一人「What?」をした事かーーーっ!
暇だぞ、暇過ぎるんだぞ。これって拷問ですか!
ああ……神様が笑ってる気がする。と思って頭上を見た。
「NPC:What」
……
……What?
俺がワッツワッツと言ってたからとうとう目の錯覚か
「NPC:What」と言う言葉が出てきた。
おお……天国って何でも起こるんだな。魔物との戦闘があったりワッツだったり……頭上に知らない言葉が出たりしても俺には多分それは関係ない。
「と思ってる場合じゃないんだよな……」
この状況をどう打破するか。
それだけを考えなくてはいけない。
幸いにもまだお腹は空いていない。いや天国で腹減りがあるのかどうかは知らないが、暇以外に不自由はしてない。
どうしたもんかねーと思っていたら、さっき男達を見捨てて逃げて行ったちっさい子が帰ってきた。
今時来たって彼らは死んでしまっている様だよ!このサノヴァ「ピー」め!
「……」
ちびっ子はこっちを見ている。
何だろうこの差痴感。
俺は見下されているのかただ見るプレイをされているのか。身体がむず痒くなってきて思わずまた話しかけた。
「な、何か言いたいことがあるなら言えよ!」
「……!?」
あれ?また驚かれた……
何か変態な事言ったかな……
するとちびっ子は目深にかぶったフードを外し、自分の正体を明らかにした。
そして……
「……何でアンタ、自由に話せるの?」