天国に着いた俺
サァアア……
心地よい風が、頬をくすぐる。
何だか別世界に来たみたいだ。
田舎の空気も悪くないが、今感じるのは澄み切った空気。
ああ……俺もしかして天国とかに来てないかな……
―
―天国?
「What!?」
俺はガバッと起き上り、周囲を見た。
その光景は目を疑う程であり、あり得ない。
真面目に勉強してきて就職活動してきて、それで末路が天国か?と思ったら本当に天国みたいな所に来てしまった。
見渡す限りの草原に、俺ぽつんと一人。
天国に行ったら裸になるのかな。と思って自分の着衣を確認したらとりあえずシャツにジーパン姿である事には間違いなかった。パンツも穿いている。
確か駄菓子屋に行って潰れている事を確認して、稼働してなかったゲーム台にうつ伏せになって……そのまま寝たんだっけ。
もしかしてそこで自然死したとか。いやいや、もしそうだとしたら俺親に何にもしてやれなかったな……生きてても何にも出来なかったと思うけど。
ニートで迷惑になる位なら……と予想する位なら、この環境は望まれるべきか。
とりあえず立ち上がって背伸びして、何処に行くべかな……と考える事にした。
「……?」
向こう側の方から何やら騒がしい声が聞こえてくる。
それと同時に数人の人物も走ってくる。
おお、割と天国ってアグレッシブなのか。と思ってぼーっと見てたら様子が違う事に気づいた。
「ん、ん?んんんん~?」
走っている男達(少なくとも男達)の姿はどこか違って、何か俺には興味ないゲームの装備をしているような、ファンタジー風な感じの奴らばかりだった。
天国ならそう言う事もあるかもしれない。色んな方々が此処に居られる……のは疑わないとしてその表情に焦燥感が漂っている。何故なら彼らの後ろからもう1人…じゃなくて、1匹。どでかい牛のような奴が彼らを追いかけているからだ。
「牛も天国入り!?」
じゃない、どう考えたって天国に入っちゃいけないタイプ。
俺良く分かんねーけどこういうのってゲーム上の「モンスター」と言うのではないだろうか?モンスターと言うのはだね……言い換えれば魔物と言ってその原点はクトゥルフとかと言った伝承上の生き物から抜粋しゲーム上に置き換えられたもの等……
「に・げ・な・い・と!」
俺はごたくを並べる前に逃げないとと思った。
天国にようやく辿り着いたのに、巨大な牛が迫っている。
男達もそれから逃げているのだから悪意があるに違いない。決して案内人とかそう言うんじゃないない!
まずい、このまま此処に居たら……と思って足を動かそうとした。
「……へ?」
グッ
グッグッ
「なんと!?」
グッグッグッグッ
「足が……」
動かない!?