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勇者・魔王「…え?」  作者: しの
第一章
9/35

その9

魔王「大丈夫か勇者」


勇者「お、おう…」ウッ


魔王「船酔いとは情けない」


勇者「しかたないだろ…こればっかしは」


魔王「もう陸が見えている、あと少し耐えろ」


勇者「おう…」


僧侶「懐かしいですね」


側近「そうですね、あの酒場で出会ったお二人とあんな形で再会するとは」


僧侶「びっくりしましたよ、もしかしてとは思いましたが」


側近「なにが起きるかわかりませんね」


魔王「ほら着いたぞ、しっかりしろ」


勇者「ウッ…」


僧侶「とりあえずそこで休憩しましょう勇者様」


勇者「わ、わるぃ…」


側近「魔王様…お水を」


魔王「すまない」


側近「いえ、さすがでございます」


魔王「私は魔王だからな、情けない姿は見せれん…さて少し用事がある先にいっていろ」


側近「わかりました、これどうぞ後に噛めばスッキリしますので」


魔王「助かる」ウッ…スタスタ




勇者「ここか、やっぱデカイな」


僧侶「そうですね」


側近「さぁ、参りましょう」


衛兵「何者だ」


勇者「えっと、王の使いで」


衛兵「あぁ、失礼しましたどうぞ」


魔王「なかなかのものだな」


側近「はい、綺麗ですね」


勇者「てか豪華、うちの城が安っぽくみえる」


衛兵「こちらの扉です、では」


魔王「ここに…」


勇者「あぁ…」ゴクッ


女王「よく来られました、勇者、それに魔王」


魔王「おぉ…」


勇者「そうきたか…」


女王「さて…お話は伺っておりますどうぞこちらへ」


魔王「いいな」


勇者「あぁ、良い匂いしそうだわ」


側近「これは」


僧侶「黒い宝玉?」


女王「はい、白い宝玉と対になる宝玉で…あの魅惑の魔女を唯一消滅させる事ができる物です」


勇者「おぉ!いきなりそんな物を!」


魔王「なんだ、簡単に対処方が見つかったではないか」


女王「ただ…」


側近「この宝玉の使用条件は?」


女王「強大な相手を消滅させる物です、代償として使用者も同じく」


僧侶「そんな…」


女王「それに、使用するものも魔女の力に対抗できる者でなければ…」


魔王「女王よ、かつて白い宝玉によって封印に成功した者も同じように消滅したのか?」


女王「いえ、白い宝玉は封印…ですので使用した者たちの全魔力を封印したといわれています」


勇者「者たち?てことは」


女王「二人です、かつて女神と大魔王を封印したとされる、魔王と勇者…この二人は魔女の力に生まれつき抵抗がありました」


女王「魔王はその後、女神を封印した罪で人界で…勇者は魔界で処刑されたと伝えられています」


魔王「そうだったのか…」


女王「それ以来、魔界では銀の髪を人界では黒の髪を呪う伝承が作られたそうです」


勇者「僧侶…」


僧侶「大丈夫です、なぜそうなったのか知れて逆にすっきりしました」


女王「きっと、魔女にとって都合が良かったのでしょう」


側近「封印を解くために、そうしておけば対象が見つかりやすいですしね」


魔王「味方もいなければ、捕らえる時には好都合と」


勇者「でも魔女は封印されてたんだろ?どうやって」


女王「あらかじめ用意していたのでしょう…彼女には予知の力もあるそうです」


勇者「え?それ反則だろ」


側近「あの魔力に魅了の力、さらには予知能力…」


魔王「女王、やけに詳しいな」


女王「それもそのはずです…彼女はこの国の…王族でしたから」


僧侶「えぇ!」


勇者「なるほど遺伝か」


魔王「あぁ、納得した」


側近「どこに納得されたのですか」


女王「…1000年以上前の話です、詳しい時期は私にもわかりませんが…彼女の誕生は予言されていたそうです」


勇者「その時期は予言者もいたのか…」


魔王「そこか貴様」


女王「ただ…その予言は彼女を呪いました、中立国の存亡に関わると…呪われた子は母親と共に永久追放され、その後すぐこの国の過去の英霊達の力を借りて彼女の力を遮る障壁を張り、この国を護り続けています」


魔王「そこまでするぐらいなら…」


女王「殺せなかったのです、剣も魔法も赤子だった彼女に傷一つ付ける事が出来ませんでした」


女王「それからは予言通りに、白と黒の宝玉を作り、魔女となる彼女に対抗し得る存在を数百年以上待ったと」


勇者「一度目は1000年前、そして今回か」


女王「えぇ…ただ予言は1000年前までのものしかなく、その先はわかりません」


魔王「そうか、とりあえずその宝玉…我々が預かっても?」


女王「構いませんが…その宝玉は」


側近「魔王様…」


魔王「案ずるなまだ日はある、それに使うつもりは無い…だが魔女の手に渡す訳にもいかない」


女王「そうですね…あなたならお渡ししても大丈夫でしょう、残念ながら障壁は魔女にしか効果はありませんので、彼女が本気で軍を作り攻めこんでくれば…ここの防衛力では対処仕切れないでしょうから」


勇者「そうか…俺たちが持っていれば場所も特定しにくい分、大軍で来るのも難しいだろうな」


魔王「あぁ、なにかとメリットがある」


僧侶「ですがこの国を離れてしまっては魔女自ら攻めてくる場合も」


魔王「一年は…手を出してこないだろう」


勇者「そういう約束だしな、でもあいつの気分次第だろう?」


魔王「まあな…だが奴は余興を楽しむ奴だと私は思う、根拠は無いがまずそこは大丈夫だろう」


女王「わかりました…他に方法があるかはわかりませんが、この国の書物をよろしければご覧ください」


魔王「助かる、側近先に調べておいてくれないか」


側近「わかりました、魔王様は?」


魔王「少し用事があってな、すぐ戻る」


勇者「じゃあ俺たちは調べものと」


魔王「勇者、お前もこい」


勇者「え」


魔王「いいからこい」


僧侶「どうぞ、こちらで調べておきますので」




勇者「たくっ、どうしたんだよ急に」


魔王「さっき船乗りから、噂を聞いてな…」


勇者「噂?」


魔王「あぁ…魔界の西と北の街が兵を集めているそうだ」


勇者「それって…」


魔王「間違いないだろう、血の気の多い奴らだったがまた戦争を起こす気などなかったはずだ」


勇者「魔女がもう動いてるっていうのか…」


魔王「まあ噂だ、今から情報を集める」


勇者「てことは酒場か」




店主「いらっしゃい」


魔王「店主、聞きたい事があるんだが」


店主「構わんが…」


魔王「わかっている、私とこいつに一番高いのを一杯くれ」


店主「あいよ、でなんだい?」


魔王「魔界の事なのだが」


店主「あぁ…それか…」


勇者「西と北が兵士を集めてるってほんとか?」


店主「そうだ、もうかなりの数になってるだろうよ…昨日聞いた話だと東にも動きがあるそうだ」


魔王「すでに3つも…」


店主「武装も本格的で、正直穏やかじゃねえな」


勇者「人界はどうなってるんだ?」


店主「壁の街に兵を集めて対応しているそうだ、だが数はそれほど集まっていない…3つの街の兵が攻めてくれば一晩もたんだろう」


魔王「魔界の南の街はどうなっているんだ?」


店主「それぞれの国から逃げてきた奴が集まっているらしいが、話によると兵に志願したやつらは正気じゃない雰囲気だったそうだよ」


魔王「はぁ…そうかわかった、時間をとらしてすまない、釣りはいい」


店主「あんがとよ」




勇者「参ったな」


魔王「あぁ」


勇者「どうするんだ?時間に余裕が無くなったとはいえ、俺は僧侶と側近さんを犠牲にする気は無い」


魔王「私もだ」


勇者「じゃあ実力で倒すしかないか」


魔王「いや勇者…覚えているか」


勇者「なにを?」


魔王「我々が奴と初めて対峙した時に、奴は私とお前に術をかけようとしただが」


勇者「そうか…そうだったな」


魔王「そういう事だ」


勇者「だから俺を呼んだのかよ」


魔王「すまない…」


勇者「いや、たぶん俺も同じ事考えて行動してるよ」


魔王「私は船を用意してくる、他に必要なものはまかした」


勇者「任せろ」




側近「遅かったですね」


魔王「すまない、意外に時間がかかった」


僧侶「二人ともお酒の匂いが」


勇者「あ、ばれた?いやぁ魔王がどうしてもっていうからさ…」


魔王「私ではなくお前だろう」


僧侶「私達は二人でマジメに探してたのに…」


勇者「すいませんでした…」


魔王「申し訳なく思う…結果はどうだった」


側近「残念ながらこれといって、ただ私達が…1000年前の勇者と魔王の生まれ変わりという事は、この書物を見る限り確実かと…」


僧侶「私達なら黒い宝玉の発動条件を満たしています、もし」


勇者「僧侶、それは使わない…なぁ魔王」


魔王「あぁ…あの魔女一人にお前達二人は割に合わん」


僧侶「でも…」


勇者「僧侶と側近さんが魔王と勇者の生まれ変わりなら、その力は相当なはずだ」


魔王「あの時側近が見せた力を完全に使える様になれば…勝機はある」


勇者「俺たちも来年までに力を付けて、二人のサポートに回るさ」


側近「魔王様…本当にそうお考えですか?」


魔王「当たり前だ、二人を犠牲にするつもりなど最初から無い」


勇者「まあ今日はもう遅いし、宿にいこう」



・・・



勇者「さて…いくか」


魔王「あぁ、荷物はどうした?」


勇者「東側の森においてきたよ、ちゃんと防護壁も張ってある」


魔王「それぐらいせねば、気付かれかねんからな」


勇者「女って妙に勘が良いからなぁ」


魔王「私は先に船に向かっておく、街から少し離れた北西の海岸にある」


勇者「よく用意できたな?夜明け前なんて何処も船だしてないだろ?」


魔王「昔の知り合いがいてな、少しボロいが充分だ」


勇者「げっ…」


魔王「酔い止めの強力なやつも用意してくれている、少しはマシだろう」


勇者「気が利くな魔王!」


魔王「まあな…本当に良いんだな」


勇者「今更そんなこと聞くなよ、じゃあまた後で落ち合おう」


魔王「わかった、あまり遅くなるなよ」




漁師「お、やっときたか」


魔王「またしたな」


漁師「朝弱いから、こねえかと思ったよ」


魔王「漁があるのに無理いって悪いな」


漁師「戦友の頼みだ気にするな、もういくか?」


魔王「いや、後一人来るもう少し待ってくれ」




勇者「うぅーさみぃ…確かこのへんに」


勇者「あった、僧侶には…悪い事したかなぁ」ピタッ


勇者「ん?魔法陣!?」


勇者「おわっと!」


僧侶「悪いと思っているなら…その荷物を持って宿に戻って頂けますか」


勇者「あー、マジかぁ…」




魔王「遅い…」


漁師「まぁ、もう少し待とう」


魔王(一体何をしている…まさかとは思うが)


漁師「おっ!お連れさんきたみたいだぜ」


魔王「遅いぞ!何をして…い…た」


側近「魔王様こそなにをしているんですか?」


魔王「なぜ…ここが」


側近「僧侶さんも勇者さんの後を追っていきましたよ、帰ってきてからのお二人の様子に気がついていないとでも?」


魔王「側近…騙したりして済まない、だが」


側近「宿に戻ってください、今なら別に怒ったり」


魔王「悪いが断る」


側近「…本気で怒りますよ?」


魔王「側近、今回は私も勇者も本気だ」


側近「わかっています」


魔王「邪魔をするなら…手加減しないぞ?」


側近「手加減?魔王様、何を言ってるんですか」


魔王「私の力は、お前が一番よく知っているはずだ」


側近『地槍』


魔王「この距離では、牽制にしかならんぞ」


側近『魔法転移』


魔王「槍が消え…右か!?」


魔王「くっ!側近お前…なっ」


側近「やるなら本気でどうぞ、次は容赦無く叩き込みます」


魔王「その力…いつの間に」


側近「旅の途中、僧侶さんとですよ…まだ完全ではありませんが」


魔王「しかしこの短期間でよくここまで…」


側近「忘れましたか?私は1000年前の勇者ですよ」


魔王「素質は充分か…魔王対勇者、よくある図式だ…」


側近「致命傷を負わしてでも連れ帰ります」


魔王「ここでやられる訳にはいかんのでな、こい側近…いや過去の勇者よ」


ご覧頂きありがとうございました

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