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ミカミ艦長の航行日誌  作者: 双子亭
第1章
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『宇宙戦艦アイガイオン』第3話

    宇宙戦艦『アイガイオン』、メイン・ブリッジーーーー









 謎の小型飛行物体はアイガイオンをぎりぎりかすめない所を飛び、そのまま湖に突っ込んだ。回避行動を取ったアイガイオンはそのまま湖岸近くに着陸し、アレスは部隊を出し、飛行物体の回収に取り掛かった。



「あの飛行物体は隕石とかではなく、人工のものなのは確かなのか?」

「はい、湖に浮かぶ残骸から見ても間違いないと思われます」



 俺はメイン・ブリッジの巨大モニターに映された、回収現場の様子を見ながら、何気なく呟いた言葉に答えてくれたガイノイドの方を見た。



「あれが人工のものとして、国連航空軍に所属している戦闘機かどうかも分からないか」

「まだ、何とも………」

「そうか」



 再びモニターに視線を戻すと、ちょうど機体らしきものが引き上げられ、湖岸に運ばれている様子だった。そんな時、アイに声を掛けられた。



「どうかしたの、艦長?」

「ん、いや、厄介なものだったらなぁ、と思って」

「そうですが、しかし、もし中に人が乗っていたら救出しないわけにはいかないでしょう」

「まぁ、そうだな」

「艦長、機体の回収完了しました」

「分かった。俺も確認に行こう」









    無人星、湖岸ーーーー









 初めて、宇宙船(ふね)から降りると、俺はミコトと数人の護衛たちを供に、回収した機体のある湖岸に向かって歩いて行った。湖岸にはすでに回収ようの機材が撤去され、機体の周りを囲むように兵士がブラスター・ライフルを構えて待機していた。



 その輪の中にいたアレスは俺の存在に気づくと駆け寄ってきた。



「艦長、いかが致しましたか?」

「いや、俺も確認したくてね……… これが湖に突っ込んだ奴か」

「はい。見たことのない機体ですが、どうやら小型の輸送艇のようです。今から内部に侵入して調査しようと思います」



 左翼のもげた機体の胴体部に熱線で穴を開け、そこから兵士たちが侵入していった。数人の兵士が侵入していった後、アレスに通信が入った。



《ブラボー3からフォース2》

「こちらフォース2」

《コックピットにパイロットらしき生命体を発見。出血が激しく意識不明の重体》

「了解、直ちに運び出せ。救護チーム!」



 アレスが救護チームを呼び寄せ、救護チームの隊員は駆けつけ、侵入口で何かを受け取ると、カプセル状のケースに入れ、そのまま俺の横を通って戦艦に戻っていった。



(生命体? 人間じゃないのか?)



 俺はわずかな疑問を抱いたが、内部調査に入った兵士たちが次々と出てきて、手には取っ手のついたケースだったり、二人がかりで持ち上げるようなコンテナみたいなもの見るとその考えも一度仕舞い込んだ。









    戦艦『アイガイオン』、メイン・ブリッジーーーー









 結局、墜落した機体から得たものは、ほとんどが黒焦げか破壊されている状態のものだったりと判別つかなかったが、その中でも俺らにとって重要な情報を手に入れることができた。



 今、メイン・ブリッジには俺やアイ、アレス、ミコトなどが集まり、中央の円盤状の装置、ホログラム投影装置を囲むように立っていた。



「それではリリィ、お願いね」

「はい」



 アイがそう言うと、情報分析官のリリィはホログラム投影装置を操作して起動した。と、同時に起動したホログラム上に巨大な天体が現れた。



「墜落した機体に残っていたデータを解析・復旧させた所、このようなデータを得ることができました」

「これは、このあたりいったいの星々を表している、いわば"星の地図"みたいなものですね」

「ふむ、それにしてもかなりの数の星があるな。太陽系の倍の星があるぞ。リリィ、我々がいる星の位置は分かるか?」

「ちょっと待ってください……… えっと……… ここですね」

「思いっきし辺境だな。そういえばさっき出た時ちょっと寒かったな………」

「やはりこれだけ離れていると食料を得るのは難しいわね。さてどうしようかしら?」



 皆で頭を悩ませていると、メイン・ブリッジに通信が入った。どうやら件のパイロットが意識を戻したそうだ。早速、俺はミコトやアレスと救護室に向かった。









    宇宙戦艦『アイガイオン』、特別救護室ーーーー









 俺らが向かった先は、救護室ではあったが、少し特殊な救護室だった。アレスが言うには、捕らえた敵の負傷兵を治療・収監を同時にこなす部屋のようで、俺たちはマジックミラーのような窓から中の様子を伺っていた。



「………回収したパイロットってあれか」

「はい、間違いありませんね」

「…………」

「……艦長? いかが致しましたか」

「なぁ、アレスはあれは何に見えると思う?」

「そうですね………」



 今は兵士のアンドロイドとパネルを使った会話をしているようだった。どうやら言語が通じないらしく今は翻訳プログラムの構成を行なってるらしい。そのパイロットが………



「アリクイ、ですね」

「アリクイ、だな」



 そう、ベッドから半身を起こしているだけなので大きさは分からないが、多分地球のアリクイと大きさは同じだった。ただ気になることは目の部分にメタルのサングラスのようなものが埋め込まれていた。



「あの目についてるのは何?」

「え〜」



 そういうと、アレスはオレンジ色の半透明のタブレットを取り出し、指でスライドさせていた。



「どうやら義眼の一種のようで、視覚情報の処理に特化しているみたいですね」

「へぇ〜」



 そんな他愛もない会話をしていると、アリクイと会話していたアンドロイドが部屋から出てきた。



「アレス司令、回収したパイロットが何でもこの艦の艦長か部隊の隊長と話しをさせろと」

「………どうしますか、艦長」

「………分かった、俺が話そう。だがその前にアイに伝えておいて欲しいことがある」

「は、何でしょう」

「………ということだ、可能か?」

「はい、出来ます。グレイ、あれ持って来てくれ」

「了解」



 グレイは部屋を出ると数分しない内に戻ってきた。



「艦長、こちらをどうぞ」



 グレイに渡されたものは小型のイヤホンとチョーカーだった。



「こちらイヤホンは相手の言葉を自動で翻訳します。またチョーカーは艦長の言葉を相手の言葉に変換することが出来ます」

「すごいな」

「艦長、パイロットの身体検査は行なって、武装してないことは確認できてますが、未知の生物です。念のためミコトと一緒に入室してください」

「わかった」



 俺は程よく緊張しながらミコトと一緒に特別救護室に入っていった。









「ほ〜、これは以外だったな」



 部屋に入ってすぐ、椅子に腰掛ける前にアリクイに話しかけられた。少し(しゃが)れた声だが、会話するのに支障はなかった。



「まず、名前を聞いてもいいですか」

「はっ、相手の名を聞くなら自分から名乗るのが礼儀ってもんじゃないか」

「あぁ、失礼。私はクウヤ・ミカミ。この宇宙船(ふね)の艦長をしている」

「俺はゴルテア。しがない運送屋だ。まずは命を助けてもらったことには礼をいう。ところで……」



 俺の方へ向き直るとアリクイ、ゴルテアは言った。



「あんたら一体、何者だい?」

「…………」

「その格好は『カーツ教団』ってわけじゃないな。『星系政府評議会』か『星系警備隊(ガーディアンズ)』か。まさか『通商連合』所属の警備会社の艦船じゃないよな、それだったら俺がこんなバカデカい宇宙船(ふね)把握しないわけがないがな。それとも『ギルド』か………」

「…………どうしてこの宇宙船(ふね)の大きさが分かったんだ?」

「ん、そりゃ、エンジンの音がまったく聞こえないからな。俺は耳がいいんだがこの宇宙船(ふね)のエンジンの音がまったく聞こえない。つまりここから動力機関までの距離がそれだけ遠いか、まぁ、高性能のエンジンだったら消音装置がついてるかもしれないがな……… まぁ、そもそも星系共通言語が通じない時点でおかしな話だがな」

「そうか……… あなたの言った組織のどれにもこの宇宙船(ふね)は所属していない」

「………」

「それに、この太陽系の外から来た者です。もし良かったらいろいろと教えてもらえませんか?」

「それは構わないが………」



 その時、艦内を警報がけたたましく鳴り響いた。



《緊急警報! 5時方向より複数の船影を確認! 現在、当艦に向けて接近中! 戦闘要員は直ちに第1種迎撃配置につけ!》

「艦長、すぐにブリッジに戻りましょう」

「あぁ」



 ミコトに言われ、立ち上がろうとしたら、ゴルテアの様子が可怪しいことに気づいた。体が小刻みに震えており、何かに怯えているようだ。その時、墜落した機体の損傷状態に何かに攻撃を受けた痕があるという話しを聞いてたことから引っかるものがあったが、ゴルテアの様子を見てもしかして、と思った。



「今のは警報でな。複数の宇宙船(ふね)がこっちに向かってるという内容だ」

「!!!」

「あなたの墜落した機体を調べたら、攻撃痕が残ってたのと、今来ている宇宙船(ふね)と関係があるんじゃないですか?」

「…………」

「答えてもらわないと、こちらは動けない」

「………『ギルド』だ」

「えっ?」

「『ギルド』の盗賊『ドルク盗賊団』だ。俺の積荷を奪いに来て、俺は命からがらここまで逃げてきたんだ」

「『ギルド』とは?」

「『ギルド』は暗殺者や犯罪者、盗賊団に情報を提供する組織だが、実質そういった類をまとめている」

「ふむ。で、『ドルク盗賊団』は」

「情けという言葉を知らない盗賊団だ。強力な武装を施した小型船は『星系警備隊(ガーディアンズ)』の宇宙船(ふね)をいくつも落としているぐらい強い」

「なるほど。で、どうして奴らはここが分かったんだ?」

「発信機を付けられてたんだと思う。そうやって追い回すのも奴らの手口だ」

(じゃあ、攻撃される確率は高いな)



 俺はチョーカーの首筋部分にあるボタンを押した。



「アイ、今の話し聞いてたか」

《えぇ、バッチリと。直ちに迎撃システムのセーフティを解除するわ》

「頼む」



 再び立ち上がった俺はそのまま特別救護室を後にした。









    ーーーーこの時、艦長就任から数時間での初の戦闘で、握りこんだ拳が震えてたことに、ブリッジでアイに言われるまで気づかなかった。

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