表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

第2話:ゲルマン魂


「ん?今は何時だ?」

愛用のシーマスターに目をやる。

「8時か、良い感じに寝れたな。」

隣で寝ているお嬢を起こさないように、ベッドから抜けて、着替えた。

MP5とM3913を分解して、中を見る。

(このMP5は純正のセレクティブモデルじゃないか、おっ金持ちー)

と、内心冗談を飛ばしてみたものの、コルベットから放たれたアサルトライフルも含めて

相当ヤバい連中なのはわかっている。

(煙草・・・無いな)

仕方なく煙草を買いに外に出たら。

「おい、俺のディアブロに何してるんだよ。」

スーツ姿のいかにも伊達男といった風貌の男がたっていた。

「これは君のランボルギーニかな?」

「あぁ、俺のディアブロだ。」

「う〜ん、良い車だな。V型12気筒5.7リッター、500馬力以上を叩き出す。まぁ私のチューンドテスタロッサの敵では無いがな。」

得意気に話している。

「いや、6リッターにボアアップして600馬力にチューンしてある」

一瞬、悔しそうな顔をしながら。

「車なんてどうでも良い、すぐに君の物じゃ無くなる。」

「まぁ、何を言いたいのかはわかってるよ。」

「ほーう、じゃあ早くお嬢様を出してきてくれないかな。」

腰に差してあるのは、ブレンテンか。

(良いな、賞品として貰おう)

「いや、お嬢はまだ寝てる、持って行きたかったら、俺を殺してからでも遅くは無いだろ?」

既に左手はM3913を後ろ手に持っている。

(多分、ブレンテン自慢を始めるだろうな)

「ふっ、君を倒すのなんてわけないさ、見たまえ、私のブレンテンを、世界一のコンバットオートでもあり、世界初の10mmオートだ。」

案の定、自慢を始めた。

「10mmオートの初速は357マグナムのホットロードにも匹敵する、どうだ?凄いだろ?」

「俺の9mm弾と交換だな。」

「は?」

パンパンパン!

聞き慣れた9mmパラの銃声。

「お疲れさん、あの世でパパと仲良くやってくれ。」

「ぐ、話の途中で・・・卑怯者、それに親父は死んで・・・」

そこで伊達男の息は途絶えた。

「じゃ、賞品のブレンテンとマガズィンは貰って行くよ。」

バン!

俺が借りた部屋のドアが勢い良く開いた。

ラッキーストライクを吸いながら俺は

「よう、良い目覚めか?」

「んな訳無いでしょ!あ〜ぁ、死んじゃってるよ。」

つまらなさそうに言っている。

「ま、スペック自慢も程々が一番だな、よし飯を食いに行こう。」


「うん、サンドイッチ食べたいな。」

「死体を見たのに落ち着いてるな。」

「人はいずれ死ぬでしょ?」

微笑みながら言ってくる。

「確かにそうだな、気にする必要は無い。」

ほんの少しだが、寂しくなって来たが、泣いてる暇も無いようだ。

「やっべ、マッポだ、逃げようぜ。」

「うん!」

さっきの哀しげな微笑みとは違う、いつもの笑顔で答える。

「じゃあ、今日はディアブロの初フラットアウト記念日だ!!」

俺とお嬢は大笑いしながらディアブロをぶっ飛ばした。



「ごちそうさま。」

「なぁ、一回、俺の家に帰るぞ。」

「え?」

「地元に知り合いがいるから、そこで車を交換する。」

「でも、あなたの家はバレてると思うよ。」

「いや、家には冷蔵庫とプレイボーイに付いてきたポスターしかないから良いんだ。」

「ていうことは・・・」

「そう、俺にはディアブロとM3913が全てだ、4日前まではな。」

「4日前まで?」

「今はお前がいるぜ。」

「!!」

顔が真っ赤になって行く。

「も、もう、馬鹿・・・」

顔を真っ赤にしながらうつ向いている。

俺は笑いながら

「んじゃ、また80マイルでぶっ飛ばすぞ。」

「安全運転してよね。」

まだ顔が赤い。


ラジオを聴いていると、昨日のコルベット事件と今朝の伊達男のニュースで持ちきりのようだ。

「大丈夫かな?」

「流石にやり過ぎたな、しかも、ディアブロなんて車は希少で目立つから。」

そう言いながら頭を掻く。

100マイル程走らせて、地元に着いた。

どうやら気鬱で終わったようだ。

『ラッキー』

声を合わせて顔を見合わせる。

「ここが俺の・・・あ、無くなってやがる」

「ていうか、粉々だね。」

「的確な表現だな。」

3ブロック先にある車屋に入った。

「よう、悪魔がやって来たぞ〜。」

そう声を掛けたら。

「やかましいぞ、タコ。」

そう叫びながら怖面の親父が出てくる。

「元気そうだな、で、車は用意出来てるか?」

「あぁ、ここにあるぞ。」

そうGSを指差した。

「ちょっと待てよ。GSじゃ駄目だ、高級車じゃなくて、速くてトルクがあるAWDの車だ。それにディアブロと交換だぞ?」

「冗談だよ、このGS400は俺の車だからな、ほれ、そこのシャッターを開けてみろ。」

早速開けてみた。

そこにはスポコン丸出しのランサーエヴォリューションが止まっている。

「死ね、馬鹿親父!!四文字熟語に登録するぞ!」

「あ、すまん、そっちは甥っ子に頼まれたやつだった。本命はこっちだぞ。」

「スポコン仕様だったら、この店潰すぞ?」

シャッターを開けると

「お、良いじゃないか、要求通りだな。」

目の前には、真っ白なアウディS6クワトロがある。

「お前の要求なら応えないわけには行かないからな。」

「恩に着るぜ。」

キーを受け取り、ガレージから出した。

「おい、待てよ。」

親父が呼び止めてくる。

「お前のディアブロは下取って事にしてやる、ほら、差額だ。」

互いに笑いながら、言った。

「お〜い、お嬢、こっちのセダンに乗れよ。」

「うん!」

元気良く、スライドウィングドアを跳ね上げて走ってくる。

(なんだよ、余裕で開けられるじゃん)

「やっぱりこういう車が一番良いな。」

「狭い車に押し込んでて悪かったな。」

ちょっと怒ったように言うと。

「あ、いや、別にあのスポーツカーは嫌いじゃないよ、速いし格好良いし。」

慌てたように言う。

「冗談だ、とりあえず出よう。」

そう言って、路上に出た。

「次はライフルを手に入れるぞ。」

1マイル程走らせて、店内に入る。お嬢も一緒だ。

適当に店内を見回す。

「なぁ、兄ちゃん、あそこにあるM&P15を見せてくれないか?」

ムスッとした兄ちゃんから最新のM&P15を受け取る。

(やっぱりコルトよりもS&Wの方が良いな)

マグキャッチを押したり、ストックをいじりふと、見上げると知り合いの親父が立っていた。

「元気か坊主?そこに立ってる女の子は誰だい?」

威勢良く喋り掛けてくる。

「五月蝿いぞ、なぁ、そこにあるFNCはセレクティブか?」

「お前が手に取ってる新製品も3ショットバーストが出来るぞ。」

「良いのかよ?」

と言いつつも財布を出している。

「弾は何発いる?」

「200発は欲しいな、それとマガズィンを5本欲しい。」

「何か良い物は持ってないか?物によっては半額以下にしてやるよ。」

「ちょっと待ってな。」

外に出て、S6からMP5を出して、店内に戻る。

「セレクティブファイアモデルの純正品だ。ついでにこのブレンテンも。」

親父は目を輝かせている。

「おい、このM&P15と弾は持っていけよ、ついでにフェデラルの9mmも100発付けてやるからな!」

相変わらずだった。

「ん?お前さんの車変わってないか?」

「あぁ、あの車はうちのお嬢が狭い狭いうるさくてな。」

そう言いながらお嬢を見た。

退屈そうに、ショーケースを見ている。

「何はともあれ、無茶はするなよ。」

「あぁ、穴開きチーズギリギリで止めるさ。」

互いに手を上げて店を出る。今日は良い買い物の連続だな。


店から出て、ふと対向車線を見ると。

(またかよ)

エアロから見てあのAMGチューンのEクラスと、もう一台はM5のようだ。

「糞野郎が、お嬢、そこのマスタングに隠れろ!」

同時に俺もマスタングの陰に隠れた。

ヴァーーーン

9mmパラを毎秒20発でバラまく音が聞こえてきた。

お嬢を守りながら。

「大丈夫か!!」

「うん、私は大丈夫!!」

「じゃあ、しばらく隠れてな、敵を叩いてくる。」

「あ〜、畜生めが、俺の店が滅茶苦茶じゃねえか!!」

ガンショップの親父が叫んでいる。

「黙れ、俺の家なんか、とうの昔に無くなってたんだ!!」

「関係の無い俺を巻き込むな!」

「知るか!あそこで乱射してるM5野郎に言いやがれ!!」

不毛な言い争いをしてる間に200発は撃ち込んでくる。

バババッバババッ

M&P15の3ショットバーストで撃ち返す。

親父も親父で早速MP5をフルに合わせて撃っている。

「中々撃ち易いガンじゃないか、MP5は!」

「黙りやがれ、こっちのガンは当たらないぞ!!」

「それはお前が悪いな!!」

言い切って、30発一気に撃ち込む。

バババッバババッバババッ

(流石5.56mmだな、Eクラスも紙みたいだ。)

壮大な銃撃戦を繰り広げていたが、それも10分経たない内に終わった。

「なんだ、もう終りか。」

親父が心底残念そうに言う。

俺はM&Pを構えながらM5に駆け寄った。

全滅か。

お嬢は無事か?

「お〜い、お嬢大丈夫か〜?」

「大丈夫じゃない!大丈夫じゃない!」

叫びながら頭を上げる。

「何だ、いつも通りじゃないか。」

マスタングの陰に戻り頭を撫でてやる。

ガスッ

「ウギャ!」

腹を手刀で突かれた。

「まったく、また無茶をするんだから。」

言いながら、ガラスが刺さった右腕に布を巻いてくれる。

「済まない。」

親父は親父で呑気に煙草を吹かしている。

「悪いな親父、警察が来たら、適当に言い繕っておいてくれや。」

「あぁ、お前もそこのお嬢様を大事にしろよ。」

(言われなくたって)

そう思いながら、S6を見に行く。

奇跡的に無傷だった。

「よし、傷すら付いてないな。」

「信じられ無いよ。」

「俺だってそうだよ、あれだけ派手にやってこれだ。」

ドアを開け閉めしてるとサイレンが聞こえてきた。

(相変わらず対応が遅い警察だな、この国は)

日本にいた頃は、こんな事あったら、光より速くすっ飛んで来たのに。

そんな事を考えながらS6を出した。

「腕、大丈夫?」

心配そうな顔をしながら聞いてきた。

「大丈夫さ、2時間もあれば痛みも引く。」

しばらくS6を走らせていて思い浮かんだ。

(服を買ってやらないと)

そうして大きなデパートに滑り込ませた。

「何?何か買うの?」

「お嬢の服を買ってやろうと思ってな。」

「そんな、これで良いよ。」

「いや、洗濯もロクに出来ないんだ、せめて新しい靴下位は買おう。」

「う、うん。ありがとう。」

「昨日言った事を忘れたか?礼は言いっこ無し、俺はお前が娘だと思ってるからな。」

「フフ、随分と若いパパだね。」

「よくある複雑な家庭だな。」

笑いながら服を見に行く。

「このスカートはどうかな?」

「もうちょい短い方が似合ってるぞ」

「じゃあ、こっち。」

「うん、中々似合ってるな。」

周りから見たら、従姉妹に服を買ってやってるように見えるだろう。多分。

「そこにあるニーソックスと組み合わせたらもっと似合うと思うぜ。」

「ひょっとして、ロリコン?」

「この場に置いて、俺は帰っても良いんだぜ?」

「家はもう無いよ?」

「確かに、とりあえずロリコン疑惑は外してくれよ、な?」

笑いながら言う。

「フフ、冗談だよ。」

向こうも笑いながらレジに服を持って行く。

(女の買い物はこうも長いのか・・・)

身を持って体感した。

飲み物も買い、S6に戻る。

「金も服も入った事だし、ちょいと上質なホテルに泊まるか?」

「私はモーテルでも良いよ。」

あなたと一緒なら、と付け加えて。

途中でファミレスに寄って飯を食う事にした。

「今日は疲れたね。」

フライドチキンをかじりながら言う。

「あぁ、ディアブロも手放しちまったし。」

ラッキーストライクを吸いながら言った。

「明日はどうする?」

「やっぱりお前の親父に会いに行くよ、納得いかない所だらけだからな。」

「わかった。もう、あなたにずっと付いて行く。」

「じゃあ決まりだな、色々あるだろうけど、頼むぜ。」

「うん、任せて。」

「食い終わったな、宿を探しに行こうや。」

ラッキーストライクを吸いながら、S6のキーを探る。

ふと、違和感が涌き出る。

(何かがおかしい)

「なぁ、ちょいとここに居てくれ、財布を車に忘れたみたいだ。」

「もう、私まで無銭飲食に巻き込まないでよ。」

入り口から軽くみて駐車場に出た。

駐車場をゆっくりと周りながら、S6に近づく。

(いたいた、待ち伏せか。)

いかにも怪しい7シリーズが俺のS6から10m位の所で止まっている。

(さて、どう驚かせてやろうかな)

ポケットには例の親父からくすねて来たフラッシュバングが入ってる。

そうっと、後ろから回り込み

コンコン

ウィーン、パワーウィンドが開いた。

「ちょっと火を貸してくれよ。」

「!!、お前は!」

驚愕に顔を歪ませた男は懐から銃を抜こうとする。

「焦るなよ、これやるから。」

満面の笑みを見せながら、セーフティピンを抜いたフラッシュバングを膝に乗せる。

「ギャ!!」

「大丈夫だ、セーフティレバーが外れない限りは爆発しない。」

そう言うと、安心したような顔をした。

「いや、これじゃ俺が面白くない、悪いね。」

軽く笑いながら、フラッシュバングを膝から転がす。

「ひっ!!」

俺は耳を塞いで、口を開けて、ドアに隠れた。

バン!!

一瞬、強烈な光と音が出た。

M3913を構えて、ちょっとフラフラしながら中を見る。

(流石にあれをモロに食らったら動けないか)

ピクッピクッと軽く痙攣を起こしてはいるが、3人共ぐっすりだ。

周りを見た。

びっくりしたような顔をして見てくるカップルとおじさんがいた。

「あれれ〜、ライターが爆発しちゃったよ、ハハハ。」

俺がぎこちなく笑うとカップル達は足早に店内に入って行った。

(まずいな、ナショナルガードが出てきそうだ、出るか)

そうして店内に戻ると騒然としている。

お嬢が走ってきて

「早く逃げようよ。」

「あぁ、ちょいとやかましい物を使っちまったようだ。」


走りながらS6に駆け込む。

「お嬢、ちょっと待ってろ。」

敵の7シリーズに走り寄って、起きそうになってるやつに左フック。

「ギャハ!」

「良い子は寝る時間だぜ。」

そう言って、キーを抜き取り、タイヤをバーストさせた。


「待たせたな、最近しつこいファンが多いみたいだ。」

「う〜ん、今日になって、妙に増えたね。」

「そうだな、これからもっとヤバくなりそうだ。」

お嬢はCDチェンジャーをいじって3枚目に合わせた。

「大丈夫だよ、二人なら大丈夫。」

笑いながら言ってくる。

「そうだな。」

俺も笑いながら言う。

スピーカーから軽快なラブソングが聴こえてくる。

「この人誰?日本語みたいだけど。」

「ん、日本にいた頃に好きだった声優だよ。前に送ってもらったんだ。」

「ふ〜ん、何言ってるかはわからないけど、綺麗な声だね。」

「あぁ、日本で唯一認めた声優だったからな。」

「今流れてる曲名は?」

「これはLovelyMagicだな。」

「恋の魔法、か。良い歌だね。」

「あぁ、こっちに来てからはずっと聴いてたよ。」

ちょっと寂しそうに言った。

「日本で好きな人とかいたの?」

気を使うようにして聞いてくる。

「あぁ、居たよ、でも俺が駄目な男だったせいでな・・・」

「何かあったの?」

「事故って死んじまった、あれは俺が仕事の帰りだったな、傘を持って迎えに来てくれるはずだった。」

「それで?」

「日本人だったんだよ俺も、仕事の事ばかり考えて、すっかり忘れてた。」

「う、うん。」

お嬢の頭を撫でながら話を続ける。

「あぁ、それで8時に待ち合わせをしてたんだけど、会社を出たら10時になってた、寒かったろうに、思い出して迎えに走った、ずっと待っていてくれた、丁度横断歩道は青だった。」

「・・・・」

黙ってしまった。

「それで嬉しそうな顔をして走って来た時だった、信号無視して走ってきたトラックに・・・な」

「ごめん、でも、聞くよ、どんな人だった?」

今までに無い位、真剣に聞いてくる。

「とても魅力的だった、スタイルも良くて、可愛くて優しくて、料理も出来た。」

そう言って、ティプトロに切り替え、4速から5速に上げた。

「良い嫁になるはずだったんだ、それで頭を冷やす為に合衆国に来たわけだ。」

「ある意味良かったね。」

「ん、確かに、きっとお前はあいつと俺の間に出来る娘だったんだろうな。」

二人でニヒルに笑って言った、端からみたら、本当に親子に見える筈だ。

「お仕事は何をしていたの?」

「俺か?」

「ううん、お嫁さん。」

気を使ってくれているのだろうか。

「いや、それがとても言い難い仕事だったから・・・」

「え〜良いじゃん、教えてよ〜。」

「あぁ、後ろから来るお客さんの相手をしてからな。」

後ろから、あれはランサーだろうか、少なくとも外車には無い挙動だ。

「えぇ!?また〜?」

「いや、あのランサーは見覚えがある、サービスエリアに入ろう。」

そうして、S6と白いボディに

「ご奉仕命」

と日本語で入っているランサーはサービスエリアに滑り込んだ。


「ハァ〜イ、元気?あなたがヤバい事に巻き込まれてるって聞いて駆け付けたわよ。」

相変わらず、恥ずかしい格好だ。

「あぁ、今までの仕事がまるで子供の玩具の取り合いみたいだ。」

「ふ〜ん、で、あそこに居る女の子は?まさか新しい愛人?」

お嬢はS6の中から様子を窺っている。

「いっぺん、人身売買を体験してみるか?あの子は今回のターゲットだ。ちょいと事情は複雑だがな。」

「中々面白そうじゃない。中で話しましょう。」

「お〜い、お嬢出てこいよ。」

「そうよ〜、取って食べたりしないから〜。」

「お前が言っても説得力無いな、まだ幼稚園の先生の言う事を聞きそうだ。」

「フフ、じゃあ先に席を取っておきますわ、ご主人様。」

茶化すように言っている。

「なんであの人はメイドさんの格好しているの?」

「話せば長くは無いが、一言じゃ難しいな、とりあえず、茶でも飲もうや。」


「でな、今必要な物は宿なわけだ、この辺で良い所知らない?」

「う〜ん、最近はモーテルなんか使わないからな〜。」

メイド服を着て煙草を吹かす仕草が物凄いミスマッチで周りの視線が痛い。

「ていうか、あのランサーはなんだよ、日本人の俺からしたら、ジャパニメーションに影響された只の馬鹿だぞ?」

「あら、あなたの奥さんもメイドじゃなくって?それに私も日本人よ?」

お嬢が俺を見てくる。

「いや、違う、何もかも、根本的に違う、お嬢この女の話を聞くな!」

どうも調子を狂わされる。

「う、うんうん。」

「で、相変わらずの性能か?」

「足を洗って以来、デチューンして400馬力よ、ナイトロも外してある。」

「どこをデチューンして400馬力だ?」

「あら、心外、ターボ圧を下げて、ナイトロ外して、その他諸々よ。」

そうこう車の話で盛り上がっている時に

「ねぇ、そろそろ眠くなってきたよ。」

あくびをしながら服を引っ張ってくる。

「あぁ、済まないな、じゃあ、そろそろ出るぞ。」

「あぁ、ちょっと待って、良い所あるから。」

「じゃあ、後ろから着いて行くから先行してくれ。」

「任せて下さいませ、ご主人様。」

「黙れ、会計は俺が済ませておくから。」


そうして、S6よりも遥かに目立つランサーを先行させながら走っている。

「あの人、誰?」

「あぁ、こっちに来て、初めて世話になったんだよ。」

「それよりお嫁さんがメイドって?」

「あれは違う、明日にでも教えてやるよ。宿に着くまで寝てな。」

「うん。」

30分程ハイウェイを走らせて、10分下を走って、着いた。

「ここだけど、どう?」

「あぁ、良い所じゃないか、ありがとう。」

「あら、ご主人様の幸せは私の幸せですわ。」

軽くスルーしながら

「お前はどうする?一緒に泊まるか?」

「あら、誘ってるの?」

「東南アジアは暑くて辛いぞ。」

「冗談よ、今日の所はランサーを走らせてくるわ。」

「あぁ、俺はお嬢を連れて来る。」

「じゃあ、チェックインしてくるわ。」

S6の助手席で寝てるお嬢を抱き上げながら連れてくる。

「あぁ〜ん、良いな〜。」

お嬢を見た瞬間にこれだ。

「何号室だい?」

「403よ、一番良い部屋だから。」

「あぁ、いつも悪いな。」

「いえ、ご主人様の」

「やかましい、黙れ。」

「もう、冗談も通じ無いの?」

ちょっと残念そうに言ってくる。

「前も冗談じゃ済まない事をしただろ?」

「あの時は本当に激しかった〜」

「まぁ、今日の所はお別れだな。」

「何か助けが必要だったら、すぐに言って。力になるから。」

真面目な顔で答える。

「あぁ、じゃまたな。」

暫くして、ランサーのターボ音が遠のいていく。

あぁ今日は人生で2番目に疲れた日だ。

403号室に行く。

(またベッドは一つか)

結局、二人で寝る事に変わりは無いようだ。

お嬢をベッドに寝かせ、M3913とS6のキーを出す。

(最近、ビールを飲んで無いな、これが終わったらお嬢とあいつと派手にやるか)

相変わらず、早くも寝付いて、夢すら見れない闇へと落ちて行った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ