表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光と闇の境界線  作者: えみり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/18

ホワイト

夜。


街の光が落ち着き、音が薄くなる時間。


その中を、白坂ゆいは歩いていた。


昼間とは違う。


教室で見せる柔らかさは消え、表情は静かに整っている。


イヤホンに触れる。


「——ホワイト、接続」


『回線確認。任務を開始する』


返ってくるのは、無機質なオペレーターの声。


橘ひなの——“データ”ではない。


ノクスには複数の管制がいる。


任務ごとに担当が変わるのが基本だ。


「了解」


短く答える。


それで十分。



ノクス(NOX)。


白坂ゆい——コードネーム“ホワイト”が所属する組織。


表に出ることのない、非公式の実働部隊。


排除、回収、監視。


そのすべてを、静かに終わらせる。


彼女もまた、その実行役の一人。


ただし——


(……私は、私のやり方で)


誰にも聞こえない声で、そう思う。



『対象は一名。違法薬物流通の仲介役』


端末に情報が表示される。


顔、経歴、現在位置。


一度見れば十分。


記憶する。


「確認した」


『現場は倉庫地区。人通り少』


「了解」


無駄な会話はない。


それでいい。



現場。


古びた倉庫の影。


対象は、すでに中にいる。


外から様子を確認する。


足音。


位置。


動き。


(単独……警戒はしてる)


だが、甘い。



裏口から侵入。


音を立てない。


気配も残さない。


暗闇の中でも、視界は問題ない。


「——対象、視認」


『確認』


倉庫の奥。


男が荷物を確認している。


背中が無防備。


(……終わる)


ゆいは一歩踏み出す。



その瞬間。


床がわずかに軋む。


男が振り向く。


「誰だ!」


声。


だが——遅い。


すでに間合いの中。


腕を取る。


体勢を崩す。


最小限の力で、床に押さえつける。


「ぐっ……!」


抵抗。


だが、無駄が多い。


「動かないで」


静かな声。


刃を喉元へ。


完全に制圧。



『ホワイト、状況』


「制圧完了」


『排除許可』


一瞬だけ、間。


男の目を見る。


恐怖と焦り。


だが——


(……情報はもう流れてる)


ここで生かす意味は薄い。


「——実行する」


『了解』



一撃。


無駄はない。


静かに終わる。


音も、痕跡も残さない。



「……終了」


『任務完了確認』


淡々とした声。


それだけで終わる。



外に出る。


夜風が当たる。


何も変わらない街。


誰も知らない。


それでいい。



歩きながら、ふと昼間を思い出す。


教室。


笑い声。


橘ひなの。


佐倉みさき。


そして——


黒瀬ユウ。


「……」


少しだけ、考える。


静かな人。


無駄がない。


(……似てる)


自分と。


そう思った。



だが、それ以上は考えない。


必要がない。


今はまだ。



イヤホンに触れる。


通信はすでに切れている。


完全な静寂。


それが、この仕事の終わり。



白坂ゆい。


コードネーム“ホワイト”。


ノクスの実行者の一人。


そして——


同じ組織に、もう一人。


コードネーム“ブラック”がいることを、


彼女はまだ知らない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ