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光と闇の境界線  作者: えみり


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6/13

彼女の視点

春。


新しい教室の扉を開けた時、最初に感じたのは——


静かな緊張だった。


視線が集まる。


珍しいわけじゃない。


転校生なんて、どこでもそういうものだ。


「白坂ゆいです。よろしくお願いします」


簡単に名乗る。


それ以上は必要ない。


余計な印象は残さない方がいい。



席に座る。


教室を一度だけ見渡す。


人の配置、距離、空気の流れ。


誰が中心で、誰が周囲にいるか。


自然と分かる。


(……問題なさそう)


そう判断して、前を見る。



数日。


少しずつ、クラスの空気に馴染んでいく。


無理に話しかける必要はない。


話しかけられたら、ちゃんと返す。


それだけで十分だった。



「ねえねえ、前の学校どんな感じだったの?」


最初に声をかけてきたのは、明るい女の子。


佐倉みさき。


表情が豊かで、距離の詰め方が上手い。


「普通かな」


そう答えると、すぐに会話が広がる。


周りの子たちも加わる。


自然と輪ができる。


(……この人が中心)


すぐに分かる。


場の流れを作る側の人間。



そして、その隣にいるもう一人。


橘ひなの。


みさきほど前に出るタイプではない。


でも、会話を止めない。


自然に繋ぐ。


空気を整える。


(……バランス型)


少しだけ印象に残る。



昼休み。


一人で弁当を食べていると、二人が来た。


「白坂さん!」


ひなのと、みさき。


「一緒に食べない?」


断る理由はない。


「……いいの?」


「もちろん!」


明るく笑う。


その空気に乗る形で、席を移動する。



会話は自然に進んだ。


質問が来て、答える。


無理に話を広げる必要はない。


みさきが広げて、ひなのが繋ぐ。


(……やりやすい)


そう感じた。



その時、少しだけ視線を感じた。


横を見る。


黒瀬ユウ。


窓際の席で、別の男子と話している。


相沢。


活発で、分かりやすいタイプ。


教室の中でも、動きが大きい。


対して——


黒瀬ユウは静かだった。


無駄がない。


話してはいるが、必要以上に感情を出さない。


(……)


少しだけ、印象に残る。



数日後。


放課後、教室に戻る。


忘れ物。


誰もいないと思っていたが——


いた。


橘ひなのと、黒瀬ユウ。


二人が話している。


少しだけ、足を止める。


邪魔するつもりはなかった。


だが、気づかれる。


「白坂さん」


ひなのが声をかける。


逃げる理由もない。


そのまま入る。



軽い会話。


そして——


「この人、黒瀬ユウ」


紹介される。


(……やっぱり)


心の中でだけ思う。


印象に残っていた名前。


「白坂ゆいです」


改めて名乗る。


彼は短く返す。


「……黒瀬だ」


それだけ。


無駄がない。



少しだけ会話をする。


多くはない。


でも、不自然でもない。


「……静かな人」


そう感じる。


でも——


完全に閉じているわけではない。


必要な分だけ、ちゃんと開いている。


(……変わってる)


悪い意味じゃない。


ただ、少しだけ珍しい。



「……黒瀬くんって、あまり話さないよね」


聞いてみる。


「そう見えるだけだ」


返答は短い。


だが、会話は成立している。


(……なるほど)


少しだけ理解する。



教室を出る。


廊下を歩きながら、思う。


このクラスは、悪くない。


うるさすぎず、静かすぎず。


距離感も、ちょうどいい。


そして——


黒瀬ユウ。


橘ひなの。


佐倉みさき。


それぞれ違うが、バランスが取れている。


(……もう少し様子を見る)


それでいい。


今はまだ。



夕方の光の中、歩きながらふと思う。


ここでの“日常”。


それが、どこまで続くのか。


まだ分からない。


でも——


少なくとも今は。


悪くないと思えた。


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