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光と闇の境界線  作者: えみり


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4/13

それぞれの距離

昼休み。


教室は一気に騒がしくなる。


机を寄せる音、笑い声、弁当の匂い。


どこにでもある、普通の光景。


俺は席で弁当を開ける。


「よ、黒瀬」


声をかけてきたのは相沢。


サッカー部で、クラスでもよく目立つタイプのやつだ。


明るくて、考えるより先に動くタイプ。


悪いやつじゃないが、少し強引なところもある。


「ここいいか?」


「勝手にしろ」


そう言うと、相沢は笑って向かいの席に座る。


「相変わらず淡白だな」


「お前が勝手に来てるだけだ」


「まあな」


軽く笑いながら弁当を広げる。


こうして話しかけてくる数少ない相手の一人だ。


距離感は近すぎず、遠すぎず。


ちょうどいい。



「そういえばさ」


相沢が箸を動かしながら言う。


「転校生、結構人気だよな」


視線を向ける。


白坂ゆい。


教室の少し離れた場所で、一人で弁当を食べている。


まだ輪の中心にいるわけじゃない。


だが、完全に孤立しているわけでもない。


そんな位置。


(……)


その時だった。


「白坂さん!」


明るい声が響く。


橘ひなのと、もう一人。


佐倉みさき。


二人がゆいの方へ歩いていく。



佐倉みさき。


クラスの中心にいるタイプの女子だ。


明るくて、人懐っこくて、誰とでもすぐに打ち解ける。


場の空気を自然に回すことができる、いわゆる“ムードメーカー”。


ひなのとも仲が良く、よく一緒にいるのを見かける。


タイプは違うが、どこか似ている部分もある。



「やっぱ行ったな」


相沢が小さく笑う。


「誰かしら行くだろうと思ったけど」


「まあ、あの二人だよな」


俺も同意する。


あの距離感に踏み込めるのは、ああいうタイプだ。



「ね、白坂さん一人?」


ひなのが自然に声をかける。


「よかったら一緒に食べない?」


みさきも続ける。


「うんうん、こっち来なよ!」


強すぎない誘い方。


だが断りにくくもない、ちょうどいい距離。


ゆいは少しだけ驚いたような表情を見せてから——


「……いいの?」


「もちろん!」


「全然いいよ〜」


二人が笑う。


その空気に押されるように、ゆいは小さく頷いた。


「じゃあ……お邪魔します」



三人が席を寄せる。


会話が始まる。


「前どこにいたの?」


「引っ越し大変じゃなかった?」


「部活どうする予定?」


質問が飛ぶ。


だが、みさきがうまく間を調整している。


一方的にならないように、自然に流れを作る。


ひなのはその横で、柔らかく話を繋いでいる。


(……上手いな)


そう思う。


二人とも、こういう場の作り方に慣れている。


ゆいも、それに合わせて答えている。


無理に盛り上げることはないが、会話を切らない。


ちょうどいい受け方だ。



「やっぱ可愛いよな」


相沢がぼそっと言う。


「まあな」


「お前興味なさそうだけど」


「特別はない」


「もったいねえな」


軽く笑う。


相沢はそういうタイプだ。


分かりやすくて、隠さない。



視線を戻す。


三人の会話は続いている。


笑い声も、少しずつ混ざってきている。


教室の中で、少しだけ輪が広がった。


(……馴染むのは早いな)


それが率直な感想だった。



「黒瀬、お前ほんとクールだよな」


相沢が言う。


「そう見えるだけだ」


「いや絶対違うだろ」


即否定。


「まあいいや。放課後来いよ、部活」


「またそれか」


「いいだろ別に」


「考えとく」


「絶対来ないやつじゃん」


笑いながら弁当をかき込む。


こういうやり取りも、悪くない。



昼休みの終わりが近づく。


三人は軽く話を締め、それぞれの席へ戻っていく。


白坂ゆいも、元の位置へ。


ただ——


さっきより少しだけ、教室の中での位置が変わっていた。


孤立ではない。


かといって中心でもない。


だが、確実に“繋がり”ができている。



チャイムが鳴る。


いつもの授業が始まる。


黒板に視線を向けながら、思う。


転校生、白坂ゆい。


まだ、ただのクラスメイト。


それ以上でも、それ以下でもない。


——今はまだ。


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