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光と闇の境界線  作者: えみり


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3/13

ノクス

夜。


街の光が落ち着き、表の人間が家に帰る時間。


その裏側で、俺たちは動く。


ビルの屋上。


風を受けながら、イヤホンを装着する。


「——ブラック、回線接続確認」


聞こえてくるのは、落ち着いた声。


任務中の“データ”だ。


「問題ない」


「了解。任務データ送信する」


端末に情報が表示される。


顔写真、経歴、現在位置。


一瞬で頭に入れる。



ノクス(NOX)。


俺たちの所属する組織。


表には存在しない非公式機関。


扱うのは、表では処理できない案件。


裏社会の人間、違法取引、国家に関わる不都合な存在——


そういったものを“処理”する。


記録にも残らない。


ニュースにもならない。


だが確実に必要とされている仕事だ。


俺はその実行役。


コードネーム“ブラック”。


そして通信の向こうにいるのが——


「対象、男性一名。裏ルートの武器仲介業者」


コードネーム“データ”。


橘ひなの。


ノクスにおける情報管制担当。


現場には出ないが、戦場そのものを支配する役割だ。


監視カメラの掌握、通信の制御、位置情報の追跡、状況解析。


すべてを同時に処理し、最適な行動を提示する。


俺が動けるのは、データが“視界”を作っているからだ。


「対象は現在、取引後に単独移動中」


「警戒レベルは」


「中程度。武装あり、訓練経験あり」


「了解」


いつも通りだ。



現場付近。


人気の少ない裏路地。


「ブラック、対象まで距離50。右前方」


「確認」


視界の先に、男の背中。


歩き方に無駄がない。


完全な素人ではない。


「周囲は」


「一般人なし。カメラは抑えてる」


「いいな」


「でしょ?」


わずかに軽い声。


だが任務中のデータは、一切ミスをしない。



距離を詰める。


足音は消す。


視線の外から入る。


「ブラック、対象が周囲確認。警戒してる」


「問題ない」


この程度の警戒は想定内だ。


男が立ち止まる。


振り返る。


——遅い。


その瞬間には、すでに背後を取っている。


「なっ——」


声を出す前に、動きを封じる。


関節を極め、地面に押さえつける。


最小限の力。


最短の手順。


「……っ!」


抵抗。


だが読める。


無駄が多い。


「ブラック、クリア?」


「問題ない」


一瞬の隙。


正確に急所を打つ。


力が抜ける。


沈黙。



「……終了」


短く告げる。


「任務完了確認」


間を置かず、データの声。


「周囲に異常なし。回収も不要」


「了解。離脱する」


「ルート誘導するね」


視界に帰路が表示される。


迷う必要はない。



路地を抜け、夜の街に戻る。


何事もなかったように。


「ブラック」


データの声が少しだけ柔らかくなる。


「今日も完璧」


「いつも通りだ」


「それが一番すごいんだけどね」


軽く笑う声。


だがすぐに続ける。


「このレベルの任務なら、もう作業だね」


「否定はしない」


実際、その通りだ。


判断、接近、制圧、終了。


流れは完全に体に入っている。


「でもさ」


データが少しだけ間を置く。


「こういう“普通の任務”が続く方がいいよね」


「……ああ」


それは同意する。


イレギュラーは、余計なリスクを生む。


「じゃあ、今日はこれで終わり」


「了解」


通信が切れる。



夜風が通り抜ける。


静かな街。


何も変わらない景色。


だがその裏で、一つの“処理”が終わった。


誰も知らない。


誰にも影響しない。


それでいい。


それが——


ノクスの仕事だ。


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― 新着の感想 ―
なんかペルソナ5みたいな感じかな? めっちゃ設定ちゃんとしてそう 早く続き読みたいです!
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