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光と闇の境界線  作者: えみり


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16/20

データの違和感

放課後。


教室にはまだ数人残っている。


その中で——橘ひなのは、いつも通り笑っていた。


「えー!それ絶対嘘でしょ!」


「ほんとだって!」


クラスメイトとの他愛ない会話。


明るくて、少し抜けていて。


どこにでもいる普通の女子高生。


「ひなの、また騙されてるよ」


「え、うそ!?」


笑いが起きる。


ひなのも笑う。


自然に。


何も違和感のない顔で。


(……ふーん)


内心は、まったく別だった。


(なるほどね)


視線は一瞬だけ、窓の外へ向く。


(やっぱりおかしい)


昨夜の任務。


佐伯隆一。


(あれは“作られてる”)


会話を続けながら、思考は止まらない。


「ねえねえ、それでさ!」


適当に相槌を打つ。


(ログが雑すぎる)


隠す気がない。


(むしろ見せてる)


“ここを見ろ”と言わんばかりの痕跡。


(誰に?)


ひなのの思考は一段深く潜る。


(ノクス内部)


自分たちに向けて。


(……試されてる?)


違和感が形になり始める。


「ひなのー?」


「あ、ごめんごめん!」


笑って誤魔化す。


「ちょっとボーッとしてた!」


「またー?」


「疲れてるのかも〜」


軽く流す。


(でも、それだけじゃない)


ひなのは席を立つ。


「ごめん、ちょっと用事!」


「えー帰るの?」


「うん、また明日!」


手を振る。


そのまま教室を出る。


廊下。


誰もいない。


笑顔が消える。


「……さて」


スマホを取り出す。


画面には、昨夜のデータ。


佐伯隆一。


(もう一回見る)


歩きながら操作する。


アクセスログ。


通信履歴。


(やっぱり変)


「こんな雑な偽装、普通しないでしょ……」


小さく呟く。


(目的がある)


“バレる前提”の偽装。


(誰かに気づかせるため)


足が止まる。


階段の前。


(誰に?)


答えは一つしかない。


「……ノクス」


内部に向けてのメッセージ。


(じゃあ、誰が?)


ここからが問題。


ひなのの指が止まる。


(内部犯)


ノクスの中にいる。


情報を操作できるレベルの人間。


(幹部クラス……?)


そこまで考えて、ひなのは小さく笑う。


「……やば」


(当たりだったら笑えないんだけど)


軽く頭をかく。


だが、目は笑っていない。


(でも)


もう一つ、引っかかる。


(ホワイト)


任務を断った。


しかも、理由もなく。


(いや、違うか)


“理由はあった”


ただ、それを言わなかっただけ。


「気づいてたんだね」


小さく呟く。


(あの子、やっぱり優秀だ)


初めての接触。


短い会話。


それでも分かる。


(思考が速い)


(判断が正確)


「ちょっと安心したかも」


誰にも聞こえない声。


だが同時に——


(ブラックは……)


一瞬、考える。


(気づいてる?)


昨夜の違和感。


あの一言。


“こいつ、本当にやってんのか?”


ひなのは少しだけ目を細める。


「……気づきかけてるかもね」


それなら——


(時間の問題)


全員が同じ違和感に辿り着く。


「その前に動くべきかな」


静かに呟く。


スマホを操作する。


新しいファイルを作成。


タイトルを打ち込む。


【内部調査ログ】


(さて)


「誰が黒か、探しますか」


軽い口調。


でもその目は、完全に“仕事モード”。


そして。


ひなのは、ゆっくりと歩き出す。


夕焼けの廊下。


長く伸びる影。


その中で——


橘ひなのは、静かに笑った。


「面白くなってきた」

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