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光と闇の境界線  作者: えみり


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11/13

潜入(裏側)

昼休み。


教室は相変わらず騒がしい。


原因は分かりきってる。



「紅葉ちゃん、それでさ!」


「前の学校ってどんな感じだったの?」


「部活とかやってた?」


天城紅葉。


転校してきたばかり


それなのに、もう中心にいる。


「すげーな、あれ」


後ろで相沢が呟く。


「男子の視線、全部持ってってんじゃん」


「お前はそこしか見てないのか」


「いや事実だろ」


確かに目立ってる。


美人ってのもある。


でも、それだけじゃない気がする。


(……なんか、引っかかる)


紅葉は笑ってる。


会話も自然。


どこにも違和感はない


(……気のせいか)


そう思いながら、席を立つ。


「どこ行くんだよ」


相沢が聞く。


「屋上」


「またかよ」


適当に流して、教室を出る。


(静かなとこがいい)


廊下を歩きながら、さっきの違和感を思い出す。


(……なんだったんだろうな)


うまく言えない。


でも——


(普通じゃない気がする)


根拠はない。


だから、考えるのをやめる。


屋上の扉を開ける。


風が吹く。


静かだ。


(……落ち着く)


フェンスにもたれて、空を見る。


しばらくそのまま。


——ガチャ。


扉の音。


(……誰か来たか)


振り向く。


そこにいたのは——



天城紅葉。


「……誰だ」


反射的に出た言葉。


「同じクラスでしょ」


少し笑いながら言う。


「天城紅葉」


「ああ……」


思い出す。


「黒瀬ユウだ」


「知ってる」


それだけの会話。


沈黙。


紅葉はゆっくり近づいてくる。


一定の距離で止まる。


(……近すぎない)


絶妙な距離感。


「ここ、よく来るの?」


紅葉が言う。


「まあな」


「静かでいいよね」


「そうだな」


また沈黙。


(……なんだ)


さっき教室で感じた違和感。


今は、もっとはっきりしてる。


(こいつ)


何かがおかしい。


でも、それが何か分からない。


紅葉は空を見る。


横目で、こっちを見てる。


(観察されてる……?)


そんな感覚。


気のせいかもしれない。


でも。


「ねえ」


紅葉が言う。


「裏で何してるか分かんない人ってさ」


少し間を置く。


「どう思う?」


(……は?)


意味が分からない質問。


「別にどうも思わない」


「へえ」


「人なんてそんなもんだろ」


紅葉の目が、わずかに動く。


(……なんだ今の)


一瞬だけ。


何かを測られた感じがした。


「……変わってるね」


「よく言われる」


また沈黙。


風の音だけがする。


(なんなんだ、こいつ)


普通に会話してるはずなのに。


落ち着かない。


(距離感がおかしい)


近すぎない。


でも遠すぎない。


ちょうどいい距離。


なのに——


(踏み込まれてる感じがする)


「ありがと」


紅葉が言う。


「……何がだ」


「なんでもない」


軽く笑う。


そして、そのまま歩き出す。


「またね、黒瀬くん」


扉に手をかける。


その直前。


ほんの一瞬だけ、


表情が消えた気がした。


——気のせいかもしれない。


扉が閉まる。


静寂。


(……なんだったんだ)


しばらくそのまま立ち尽くす。


(変なやつ)


それが一番しっくりくる。


でも——


(それだけじゃない)


何か、もっと別の。


(……まあいい)


考えても分からない。


フェンスにもたれ直す。


空を見る。


いつもと同じ景色。


なのに。


(……なんか、違うな)


ほんの少しだけ。



日常がズレた気がした。

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