メンヘラ会長と隠れて飲む、禁じられた給食後のブラックコーヒー
給食後のブラックコーヒー、校則上、禁じられた行為。
「私を捨てないよね?」
「(なんかいつもより湿気が!?)」
おかしい。まだ4月で、暖かいはずなのに。
なぜだ、いつもよりも会長が湿っぽい。
いつも通り、挨拶をしたら、ジト目で返された。
そして、それは、給食まで、ずっと変わらず。
スマホ、ゲーム、そして、コーヒー。
そういうものは、校則で持ってきたらいけないから、メールのやりとりなんかはないんだけど。
会って、話をしようとしても、無言でジト目。一応、会長は、この中学校の生徒会長なんだけど、なあ…。
本当に、僕は何かしたんだろうか?
まあ、『関係』が終わるなら、それはそれでいいんだけど…。
そして、給食。
「手を合わせ」「頂きます」
2人の当番による声からはじまる、給食。
当番は毎週変わる。それは、1年生だったり、2年生だったり、3年生だったり。
「ミ、ミルクコーヒー」
思わず僕は呟いてしまう。
「あれ? もしかして、それ、もらっていい系?」
隣の女子に聞かれる。
「いや、好きだよ。コーヒー、ミルメーキ。甘くていいよね」
「ねー」
のんきな顔をしている女子に、僕は笑顔で返す。
瓶の牛乳に、粉を入れる。
甘い、甘い粉を。
それは、それで、いいんだけど。
はあ。
甘いし。
冷や汗ダラダラなんだが。
「甘いの苦手なんだよなあ…」
呟き、僕は苦笑する。
いつも通り、生徒会室。
給食後、僕は必ず生徒会に来る。
モチロン、カギは閉めて。あの人以外は入れない。
僕は、新入生。入ってから1ヶ月も経っていない。
だから、本当なら、この生徒会室とは縁がないはず。
「やっぱブラックだよな、うん」
指定のスポーツバッグから、ペットボトルを取り出す。
小さい、280mlの、ペットボトル。
この学校に持ってきたらいけない、ペットボトル。
それは、ブラックコーヒーのペットボトル。
給食食べたら眠くなる。
だから、コーヒー。そして、僕はブラックのが大好き。
甘いのは、効き目がなさそうで、あんまり。
まあ、美味しいんだけど、さ。
少し前の春休みで知ってしまった、ブラックコーヒーの素晴らしさ。
黒い悪魔、本当にそう。
壁の時計に目をやる。
そろそろ、か。
今日は、来てくれないかもしれないけど。
ガチャリ、カギで開けられる。
そして、生徒が1人、入ってくる。
その生徒は、すぐにカギを閉める。
再び、密室に。
「はあ、はあ」
やっぱ、湿っぽいよなー。息荒いし。今日は一段と、湿気が。
その生徒である、生徒会長は、変態的な笑顔で、
「よかった。
やっぱり、キミは私の彼氏クンだね」
そして、会長も指定のスポーツバッグから、ペットボトルのブラックコーヒーを取り出す。
お揃いである。
「どうしたんですか? 会長」
「? 何が?」
勇気を出して聞いてみる。
が、キョトンとした顔で返される。
「なんか今日、しめ、冷たいような」
「…」
むすっ、とされる。
あれ、本当に、僕、何かした?
…何したんだろう。
わかんない。
「今日、ミルメーキが出たから」
ボソッ、と返される。
「だって、給食でコーヒー出たら、その後の毎日のお楽しみタイム、要らないって思うかもしれないじゃん。
だから、今日はないんだって」
なんだ…。
「そんなことですか」
苦笑い。
「そんなこと?」
「僕は、大好きなんで」
「私がっ!?」
「ブ、ブラックコーヒーが」
つい、ひきつってしまう。食い付きが凄すぎる、ジンベエザメが食いついたような。死ねる。
「給食の後に、ブラックを飲む。これは、絶対に変えません」
「…よかった。よかったー」
涙ぐまれる。
そんな?
そして、少し間があり、
笑顔で、
「まあ、変えようとしても、私が先生に言えばいいだけだもんね。中学校にペットボトルを持ってくるなんて、ばれたら激怒だよ?」
し、湿気が…。
『ペットボトル…』
『い、いや、これは』
『じゃあ、私とコーヒー仲間になろ!?』
『…は?』
『その代わり、私の彼氏になって!』
『何が代わり?』
あの日を、思い出す。
生徒会役員はカギを使える。それに、僕は気づけなかった。
だけど、まあ、湿気は凄いけど、この子でよかった。
僕は恋愛感情がないから、そういうのはわかんないけど。
「ずっと、私と一緒だよ」
笑顔で言われる。
抱きつかれてもおかしくない、そんな雰囲気。
後。
「ミルメーキが出たとき、冷や汗が出たんですけど、ばれたとかないですよね?」
「ないと思うよ」
あっさり、会長に返される。
冷や汗出たんだけどなー、まあ、よかったよかった。
ありがとうございました!




