第9話 地下三階はぽかぽかの森!? 最高すぎる第二の拠点!
暗くてジメジメしたダンジョンを想像していたのに。
そこにあったのは、抜けるような青空と、緑が生い茂る広大な森だった。
「ここ、本当に地下なの……?」
「わからない……でも、風も吹いてるし、すごく暖かい」
ぽかぽかとした陽気が、緊張で冷え切っていた体を包み込む。
足元にはフカフカの草が生えていて、どこからか小鳥の鳴き声のようなものまで聞こえてきた。
(魔法の力で、地上のようになっているのか……?)
無人島の地下にこんな空間があるなんて、信じられない。
でも、実際に太陽みたいな眩しい光が上から降り注いでいる。
張り詰めていた空気が緩み、エマがパァッと明るい笑顔を見せた。
「フェル、見て! あそこ!」
エマが弾んだ声で指をさした。
駆け寄ってみると、そこには見慣れた赤い実がたくさんなっていた。
「地上の森にあったのと同じ果物だ!」
「こっちには、野菜みたいなのも生えてるよ!」
エマが土から引っこ抜いたのは、丸々としたキャベツのような野菜だった。
その隣には、真っ赤に熟したトマトのような実もなっている。
エマが服の袖でキュッキュとトマトを拭き、ガブリとかじりついた。
「ん〜っ! 甘くてすっごく美味しい!」
「ちょっとエマ、毒見もせずに……! ……って、僕にもちょうだい」
手渡されたトマトをかじると、口いっぱいに甘酸っぱい果汁が広がった。
(これなら、当分食料には困らなさそうだ!)
僕たちは夢中になって、果物や野菜を収穫した。
スライムや狼に怯えながら進んでいたのが嘘みたいに、平和な時間が流れる。
さらに進むと、綺麗な水が流れる小川まで見つけた。
「冷たくて気持ちいいーっ!」
エマが小川でバシャバシャと顔を洗っている。
飲み水も確保できる完璧な環境だ。
しばらく川沿いを歩いていると、木々の隙間から小さな建物が見えてきた。
「……小屋?」
「誰か、住んでるのかな……」
エマが僕の背中に隠れるようにして、服の裾をぎゅっと掴んだ。
僕はゴクリと唾を飲み込み、剣を構えながら慎重に近づく。
こぢんまりとした、丸太作りの木造の小屋だ。
そっと窓から中を覗き込む。
「……誰も、いないみたいだ」
ドアノブに手をかけ、ゆっくりと開ける。
ギィ、という錆びた音がして、扉が開いた。
「わあ……っ!」
エマが歓声を上げる。
小屋の中は予想以上に綺麗だった。
ホコリもほとんど積もっていない。
部屋の隅には、ふかふかのお布団が敷かれた木製のベッドが置かれている。
「フェル! ここ、すごくいいよ! 魔物の気配もないし!」
「ああ、扉も頑丈だし、しっかり鍵もかかるみたいだ。小屋の裏には井戸もある」
(地下一階のベッドルームより、ずっと快適そうだな)
緊張の糸が切れて、僕はふうっと大きく息を吐いた。
これなら、安心してぐっすり眠れそうだ。
「よし、今日からここを第二の拠点にしよう」
「大賛成! あたし、もうベッドで寝転がりたい!」
エマが早速ベッドにダイブして、むにゅんとほっぺたをシーツに擦り付けている。
僕は部屋の中をぐるりと見渡した。
小さな机と、木製の椅子がふたつ。
そして、机の上には木で作られたシンプルなコップがふたつ、ポツンと置かれていた。
(なんで地下にこんな小屋が……。 今ダンジョンは一体なんなんだ?)
「どうしたの、フェル? 難しい顔して」
ベッドから身を乗り出したエマが、不思議そうに首を傾げる。
「いや……机の上にコップがふたつあるなって思って。 無人島なのに、なんだか都合が良すぎる気がしてさ」
「本当だ! ラッキー! ちょうどあたし達の分だね!」
エマは無邪気に笑って、コップを手に取った。
確かに、便利だしありがたい。
でも、心のどこかにチクリとした違和感が残る。
(……まあ、今は考えても仕方ないか)
「ねえフェル、お腹すいちゃった。 さっき取った野菜、食べようよ!」
「そうだね。 外に安全そうなスペースがあったから、そこで焚き火を作ろうか」
コップのことは頭の隅に追いやって、僕はエマと一緒に小屋の外へ出た。
エマの魔法で火を起こし、収穫したばかりの野菜をクラフトした串に刺して焼いていく。
ジュウウッという音とともに、香ばしい匂いが漂ってきた。
「あっつ! でも、おいひぃ!」
「本当だ。焼いただけなのに、すごく甘い!」
二人で焚き火を囲みながら、熱々の野菜を頬張る。
地下にいることを忘れてしまうくらい、穏やかで幸せな時間だった。
「明日は、この森の奥をもう少し探索してみようか」
「うんっ! お肉になりそうな魔物がいるといいなー!」
エマがペロッと舌を出して笑った。
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