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第2話 脱出不可能!? 絶望のビーチと「むにゅん」なハプニング

 井戸の横にちょうどコップが二つあったので、綺麗に洗って、お互いに喉を潤した。


 エマが飲んだ水が、少し口からこぼれて喉を伝う。

 ごくんと喉が鳴る。


 女の子とあまり接する機会がなかった僕は、なんだか、照れ臭くなって目を逸らした。


「まずは、ここがどこなのか確かめよう」


「さんせー!」


 エマと二人で、丘の先にある山を目指すことにした。

 山は深い森に覆われていて、何やら不気味な雰囲気を醸し出している。


(ま、魔物とか出ないよね?)


 森の入り口で少しだけ。

 そう、ほんの少しだけ尻込みしたぼくは、勇気を振り絞って森に足を踏み入れた。


 エマの前で、カッコ悪いところは見せられない。

 精一杯の強がりを見せて、前へと進んだ。


 キョロキョロと周囲を見回しながら、どれくらい歩いただろう。


 カサッ――草むらで急に音がした。


(で、出たああああ!!)


 驚いたぼくは、思わず「うわぁっ!」とエマに抱きついてしまった。

 手に、むにゅんと柔らかい感触が伝わる。


(……むにゅん?)


 その感触の意味に気づくまで、数秒。


「ご……、ごごごご、ごめん!!」


 慌ててエマから離れ、二、三歩後ろに下がって尻餅をつく。

 でも。手の感触が強烈すぎて、お尻の痛みはこれっぽっちも感じなかった。


「……フェルってさ、ひょっとして――ビビリなの?」


 エマが、少し意地悪そうにそっと手を伸ばす。


「ちょ、ちょっと、びっくりしただけだよ!」


 ぼくは、差し出された手を取って、ムクっと起き上がった。


 柔らかい手。

 さっきの感触を思い出してしまい、思わず顔が熱くなる。

 それを誤魔化すかのように、ぼくは念入りにパンパンとお尻の汚れをはたいた。


 それから僕たちは、山頂付近まで黙々と歩いた。


(……結構、体力あるなぁ)


 はぁはぁと息が乱れるぼくの横を、エマは鼻歌まじりで進んでいく。


「そういや、フェルって何歳なの?」


 下からひょいっと、顔を覗き込まれる。


「十六歳だけど?」


「十六!?」


 エマが驚いたような声をあげた。


「なーんだ。あたしのほうが年上のお姉さんじゃん! そっかそっか」


 バンバンと背中を叩かれて、ゴホゴホと咳き込む


「痛いって! そういうエマは何歳なの?」


「十七歳だよ。 今後はエマさんと呼ぶように!」


 エマはそう言って、歯を見せて笑った。


(……可愛い)


 思わずドキッとして、しばらくその笑顔に釘付けになっていた。


 つぶらな瞳、長いまつ毛。

 胸の鼓動が早くなる。


「年上って言っても、一つだろ?」


 エマは、「うい奴め」と、ぼくの髪の毛をわしゃわしゃっとかき乱した。


 ぼくは、ドキドキを誤魔化すように「やめろよ」とその手を払いのけ、速度を上げて一人で先へ進む。

 そして――すぐに足を止めた。


「どうしたの?」


 後ろから不思議そうに尋ねるエマに、震える指で前を指さす


「海だ……」


「え?」


 エマが走ってきて、ぼくの横で呆然と立ち尽くす。

 目の前には、広大な水平線が広がっていた。


 それから、ぼくらは無言で歩き続けた。

 嫌な予感を払拭したかった。


 でも――。

 その予感は最悪の形で的中した。


 右を進んでも、左を進んでも海。

 どう回っても、元の場所に帰ってきてしまうのだ。


「無人島……」


 無意識に呟いていた。


 その言葉は、絶対に言ってはいけない。

 そんな空気を、つい破ってしまったのだ。


「そんな……」


 エマが膝から崩れ落ちる。

 当初のワクワクは完全に消え去り、絶望だけが残っていた。


(……どうする?)


 頭をフル回転させる。


 (無人島に女の子と二人ぼっち。 ぼくがしっかりしないでどうする。 男だろ!?)


 本当は、ぼくも泣きたかった。

 この絶望的な状況を、すんなり受け入れるなんてできない。

 でも――。


「とりあえず、二人で生き抜こう。 船が近くを通るかもしれないし、それまで何としても生き残るんだ!」


 ぼくは叫んだ。

 精一杯、力強く。

 自分に言い聞かせるように。


 エマがゆっくり顔を上げる。

 その目には涙が浮かんでいた。


「た、頼りないかもしれないけど――ぼくが君を守るから!」


 そう言って、右手を差し出す。


 沈黙。


(あれ? なんか恥ずかしいこと言っちゃったかな?)


 なんだか、気まずくなって手を引っ込めようとした時――。


「……何言ってんのよ、年下のくせに。 でも……。ありがと!」


 エマはぼくの手を取って立ち上がり――そのまま力強く引っ張った。


「ちょ……うわあ!」


 バランスを崩し、砂浜に顔面から突っ込む。

 しょっぱい砂の味がした。


 涙を拭ったエマは、腰に手を当てて胸を張った。


「そうと決まれば、まずは食糧の確保ね!」


(ぼくが、そのセリフ言いたかったのに……)


 ゆっくりと立ち上がり、砂を払う。

 砂の味と、ほんのり残るエマの手の感触。


 こうして、僕たちの二人ぼっちの無人島生活が始まった。

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