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第15話 快適スローライフ! 束の間の休息!

「!!」


 エマと目が合った。


 湯船のふちに腰を掛けて、半身浴のように足だけ湯につけている。

 お風呂でほんのりと紅潮した肌と、女の子らしい滑らかな胸のふくらみが露わになっていた。


 エマも驚いたように、こっちを見て固まっている。


 時が止まったかのように、数秒。


 エマは慌てて湯船にザブンと体を沈めると、裸を隠すように後ろを向いた。


「……見た?」


 エマの声が震えていた。


「え? いや、その……」


(……見たも何も、すんごいスタイル良かった……じゃなくて! 隅から隅までバッチリ脳裏に焼き付いちゃった……)


「こ……の……、フェルの変態っ!」


 エマの怒声が浴室に響き渡る。


「ご……、ごめんなさーい!!」


 心臓を爆発させながら、僕は顔を真っ赤にして全力で浴室から逃走した。



 数十分後――。


 僕は、小屋の床で正座をしていた。

 いや、させられていた。


「ノックもしないで入ってくるとか、信じられない!」


 エマがプンプンと怒りながら、腕組みをして僕を見下ろしている。 

 湯上がりで少し顔が赤いのは、怒っているからだけじゃないかもしれない。


「本当にごめん……! また倒れたのかと思って、焦っちゃって……」


「……」


 沈黙。 

 僕はビクビクしながら、エマの顔色をうかがう。


「でも……心配してくれたんだよね?」


「うん、本気で焦ったよ」


「……わかった。今回だけは許してあげる!」


「本当に!?」


 僕はパッと顔を上げた。


「でも、タダじゃないからね!」


「えっ……?」


「罰として、またあの巨大な牛さんを倒してもらうから!」


 エマの目が、キラリと欲望に輝いた。


「ええっ!? またあんなヤバいやつと戦うの!?」


「あのお肉、最高においしかったんだもん! ん〜っ、想像しただけでお腹すいてきちゃった!」


 エマがペロッと舌を出し、もう焼肉のことで頭がいっぱいになっているみたいだった。


(……女の子の食欲って、魔物より恐ろしいかもしれない)


 僕はため息をつきながら、ガクッと肩を落とした。



 ◆◆◆


 鉄鉱脈を発見し、金属製の道具を手に入れてからというもの、僕たちのサバイバル生活は劇的に変化した。


 専用の牛刀で魔物のお肉を綺麗に捌き、鉄鍋を使って野菜と一緒にコトコト煮込む。

 塩味だけの質素な食事から、栄養満点の美味しいスープへとグレードアップしたのだ。


「ん〜っ! 今日のスープも最高に美味しい!」


「だろ? 新しいキノコを入れてみたのが正解だったな」


 ベッドのある快適な小屋で眠り、美味しいご飯を食べ、鉄の装備で安全に魔物を狩ってレベルアップする。

 そんな夢のような『スローライフ』を、僕たちはこの地下三階の森で、半年……いや、一年近く過ごしたかもしれない。

 カレンダーがないから正確な日付はわからないけれど、僕たちの体には確かな変化があった。


「ねえフェル。また背が伸びたんじゃない?」


 食後にコップの水を飲みながら、エマがふと言った。


「え? そうかな。 エマが縮んだんじゃないの?」


「もうっ、失礼だなあ!」


 エマがぷくっと頬を膨らませて、僕を軽くポカポカと叩く。

 そんなエマを見つめて、僕は少しだけドキッとしてしまった。


(……前よりもずっと、綺麗だ)


 出会った頃は肩くらいまでしかなかった彼女の黒い髪は、今では背中の中ほどまで伸びている。

 毎日美味しいご飯を食べているせいか、体つきも少しふっくらとして、なんだかすっかり大人の女の人みたいになっていた。

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