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第1話 ボーイミーツガール!目覚めたら無人島!?

挿絵(By みてみん)

 冷たい金属の扉の前に、僕たちは立っていた。


 見上げるほど巨大で、真っ白な壁。 


 木や石でできたなダンジョンの奥深くに現れたのは、明らかにこの世界にはそぐわない、無機質なドアだった。


「……開けるよ、エマ」


「うん……。 この先に、あたしたちが探してた『この島の真実』があるんだよね……?」


 エマの小さな手が、ぼくの右手をぎゅっと強く握りしめる。

 少し震えているその柔らかい手を、僕は力強く握り返した。


 この扉を開ければ、僕たちが過ごしてきた楽しくて「都合の良すぎる」無人島生活のすべてが、ひっくり返ってしまうかもしれない。


 心臓がバクバクと爆発しそうに鳴っている。


 それでも、僕たちは進まなきゃいけないんだ。


 プシュゥゥゥッ……!


 排気音のような音とともに、重い扉がゆっくりと開いていく。


 目に飛び込んできた光景に、僕たちは言葉を失った。


「……嘘だろ?」


「これって……」


 僕たちが目にした、この島の真実――。

 それは、僕たちがこの島で目覚めた時から始まっていた。



 ◇◇◇



『――起きなさい』


 その声で意識が戻った。


「えっと……。 ここは……どこだ?」


 目を開けると、青い空が広がっていた。

 雲一つない青空。


 上体を起こしてみる。


 手のひらにくっつく細かい砂。

 耳に届く波の音。


「……浜辺?」


 ゆっくりと深呼吸して考えてみる。

 でも、いくら考えても、なぜ自分がここにいるのか、全く思い出せなかった。


 名前は思い出せる。

 空とか波とか砂とか、当たり前の知識も残っている。

 だけど。きれいなまでに、これまでの記憶だけが抜け落ちていた。


「……記憶喪失? ひょっとして、ここに漂流したのか?」


 色々な可能性を考えてみるが、これといった正解に辿り着くことはなかった。


 海の方を見ると、見渡す限り水平線が広がっている。

 近くに島などの陸地はなさそうだ。

 反対側を見てみると、目の前になだらかな丘があり、その先は木々の生い茂る山が見えた。


(ここでじっとしていても仕方ないか)


 ぼくは、ヨイショと立ち上がり砂を払った。


「まずは人を探そう」


 海のそばであれば、近くに漁師町や港町があるかもしれない。

 そう思い、まず目の前の丘に登ってみた。


 しかし。

 半島のような地形になっているのか、後ろの海と、目の前の山しか確認することができなかった。


「うーん。 この山を越えないといけないのかぁ……」


 がっくりとうなだれ、膝に手をつく。

 それと同時に、急に喉の渇きを覚えた。


(あれ?)


 とっさに身体中を触り、確認する。


 そういえば、持ち物が何もない。

 カバンも、身分を証明するものも、お金も。

 飲み物ひとつすら持っていない。


(これ……、ひょっとしてやばくないか)


 その時、頭の中で声が聞こえた。


『――この近くに井戸があります』


「!! 誰?!」


 呼びかけても返事はなかった。

 でもなんだか、聞き覚えのあるような、懐かしい声。


 でも、今は細かい事を気にしても仕方ない。

 とりあえず、声を信じて井戸を探すことにした。


 しばらく周辺を探検していると、小さな小屋の様なものが見えてきた。

 どうやら、屋根付きの井戸だ。


「水だ!」


 カラカラの喉を潤したい一心で、歩く速度は自然と早くなる。

 井戸に近づこうとした、その時――


「あ……」


 井戸の横にいる女の子と目が合った。


 短めの黒い髪が、海風になびいている。

 つぶらな瞳が興味深そうに、ぼくをじっと見つめていた。


「あ、あの……。 こ……、この辺の人ですか? 実は漂流しちゃったみたいで、記憶も持ち物もなくて……」


 とっさのことで、しどろもどろになりながら話しかける。


(あんまり、女の子と話すの得意じゃないんだよな……)


 沈黙。


(あれ? 言葉が通じてないのかな?)


 不安になったぼくは、少し大きめの声を出した。


「すいません! 聞こえてますか? ぼくの言葉通じてますか?」


「あ、はい! 聞こえています!」


 女の子は、急に我に返ったように、びくんと驚いてみせた。


 そして、また沈黙――。


「実は、なんと言ったらいいのか。 私も、全く同じ状況で……」


 女の子は、聞き取れないくらいの小さな声で、バツが悪そうにうつむいた。


「え? じゃあ……」


 せっかく、第一村人発見かと思ったら、まさか同じ境遇。

 助けてもらえるかと思ったのに、またふり出しだ。


「実は、私もどうしようか困ってたんだよね――あのさ、良かったら、一緒に行動しない? 私はエマ」


 エマが笑顔で、右手を差し出す。


(エマ。 素敵な名前だ……)


 少し舞い上がって、声が上ずりそうになるのを抑える。


「よ、よろこんで!ぼくはフェリクス。フェルって呼んで」


 そう言って、照れ臭くエマの右手を握りしめた。


 暖かい。

 なんだか、久しぶりに人肌に触れた気がする。

 でも、それと同時に、「女の子と握手してる」と思うと、なんだか恥ずかしかった。


「見て見て!」


 エマはそういうと指先を上に向ける。

 ぼくがじっと見ていると、指先に突然ボッと炎が現れた。


「ま、魔法?」


「私、魔法が使えるの! きっと役に立つよ!」

 エマはそう言って、片目でウインクしてみせた。


 これから始まる、可愛い女の子と二人きりでの探検。

 記憶喪失のことなんか忘れちゃうくらい、ぼくの鼓動はドキドキしていた。

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