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全部読んでやる。

ハードボイルド・セブン

エピソード6.福世

第44話




「……何だろう? 朝から気分悪い。」

「はじめ、あんたはそれが朝起きてすぐに言うことなの。」

「放っといて。 僕が見るに、思春期が今になって来たのだ。体にタトゥーを見て。あれ本当に何?」

「明、あんたもお姉ちゃんに優しく話しなさい。」

「良いよ、母さん、あの子実はタトゥーがめちゃくちゃカッコいいと思ってるんだから。自分がやる勇気はないから、羨ましくてそうしてるんだ。」

「ああ、また嘘をついてる。本当に違うよ、母さん。」


はじめは、今日に限っては気分が良くなかった。 いつもの悪いとは違って、今のように特別に悪い予感がする日は、必ず悪いことが起こる。おそらく、自分が生まれてから持っている超能力、読心術とにたような予知能力だと、はじめは昔から結論づけていた。


予知能力も読心術も、聞くだけならそれっぽいけど、特に良いことではなかった。ただ気になることになって、他の人たちとのコミュニケーションの妨げになるだけだ。母や明ははじめを何か天気予報や詐欺師の検証手段のように扱うのに慣れたようだが、これはそんな軽々しく背負えるような運命ではない。まあ、実際はじめも半分はそんな用途でよく使っているのだが。


その意味で、今日は何か起こるかな。先走って心配しても無駄だ。起こることは起こるものだ。昔起こってしまった父の交通事故を、自分が防げなかったように。食卓の前に座って朝食を食べながら暗い顔をしているはじめを見て、悦子はわざと明るい声で雰囲気を和らげた。


「別に何もないはずよ?ちょうどはじめも明も休みの日だし。一日中お母さんと3人で家にいれば大丈夫だろう。はじめ、これ、サバの煮付けもっと食べて。」

「うん、食べてる。」

「あっ、僕、外に出ようと思ってたのに。」

「ダメだよ、お姉ちゃんが悪い気分だと言ったから。今日は家にいなくちゃ。でも、珍しいね。休む時はいつも家で読書して休んでいた子なのに。どこに行くの?」

「え、それは。その、だから、だから……。」

「またなんかのオタク活動みたいなことだろう。室内のオタク活動が屋外のオタク活動に変わっただけじゃん。」

「お前、家族相手に読心術するなと言ったじゃないか!」

「使ってないけど?私はただ友達も別にいないお前が、休日にたまたま外出するたびにオタクみたいなものをたくさん持ち込むのを隠そうとする姿がかわいそうでね。」

「この魔女!」

「キモオタ。」

「明!お姉さんに優しく話しなさいと言ったよね!でも、はじめ、キモオタとはどういう意味なの?」


はじめの勝利だった。はじめはキモヲタが何か知りたい悦子をほっといたまま、明にVサインを送った。しかし明が中指を立てることで応じ、はじめのVサインもすぐに中指を立てる動作に変わった。悦子がため息をついた。


「本当にこんなことする?兄弟はあなたたち二人だけなのに、少しは仲良くできないの?後で私がいなくなったら、あなたたち二人で力を合わせて生きていかなければならないのに、こうやって喧嘩ばかりしていたらどうするの?」

「すいません。」

「申し訳ありませんでした。」


いつものように悦子の『後にはお母さんもいなければ’』という範囲攻撃により、福世家の小さな喧嘩は兄弟間の平和な休戦宣言で収まった。


朝食を終え、はじめがデザートにカフェラテを飲みながら少し休んでいた時だった。不快な感覚そのものがはじめに近づいてきていた。速度はまさに成人男性の一般的な歩行速度と似ていた。はじめは手に持っていたガラスカップを食卓の上に慎重に置き、110番にメッセージで緊急通報した。男一人か。もしかしたら何人かいるかもしれない。朝から感じていた不快感は、何らかの強盗事件みたいなことを予見していたのだろうか。そうなら、家族全員が今日休みでない方が良かったのに。いずれにせよ、もう遅い。はじめは、この不快感の根源が既に玄関のすぐ前まで迫っているという確信を持てた。


台所とつながったリビングのソファに座って本を読んでいるお母さんと、自分の部屋でだらだらしている弟は、完全に一般人だった。お母さんはパス。守るべき存在だ。明は若い男という点ではある程度戦力になるかもしれないが、奴の弱々しい体と絶望的な身体能力を考えると、単にここにも男がいるよと見せかけるアピールできるちょうどそのくらいだ。


はじめは違った。はじめは自分が小さい頃に亡くなった元警察官で探偵だったお父さんに憧れて、自分の天賦の才である予知能力と読心術をさらによく活用するため、肉体的に鍛えてきた。実戦の護身術と結びついた読心術は、健康な成人男性でもそう簡単にはかなわない。倒せるものではなかった。そりゃ、急所を狙って一方的に攻撃し、一方的にこっちだけ殴って、そっちだけ殴られるから勝つが当たり前だ。しかし、それも相手が一般的な体格と運動神経を持ち、特別な武器も持っていない状態の一人という仮定からだ。


はじめは悦子が読書に夢中になっている隙に、食卓の上にあった包丁を手に取り、手を後ろに隠したまま玄関の前に立った。心臓がどんどんと鳴り、手が震えた。だから、私が学校の下宿で暮らしている間中、ずっとこの家にドアチェーンを付けろとそんなに言ったのに。扉の向こうに立っている不快感は、今や正体不明の男のシルエットに変わり、その息遣いまで感じられるようだった。はじめは扉に付いた覗き穴に近づき、その中を覗き込んだ。はじめの自宅でも使っているエアコン会社のロゴが刺繍されたキャップを被り、紺色のジャンパーの中に作業着を着た男が二人が、扉の前に立って何かを囁き合っていた。


なぜ二人だろう?いずれにせよ、不快な原因は右側の男に違いない。背が高く、芸能人のようなカッコいい若い男だった。使用感の感じられる古いユニフォームとは対照的に、丁寧に整えられた短い前髪が不調和を成していた。変装だ。一方、その隣の左側の男はよく分からない感じだった。この男からは不快感が感じられなかった。普通の身長で細身の体格。白いマスクを被っているので顔は見えなかったが、管理されてない伸びた髪。特別なことはないように見えても、とにかくこの側も変装したのに違いない。エアコンの修理や掃除のような仕事をするには、爪や手の形が滑らかで細かった。


何だ?一行だから不快感が感じられるなら、二人ともから感じられるはずではないか?はじめが少し混乱している間に、背の高い男が扉に近づいてきた。外からは見えないはずなのに、男はわざわざ覗き穴に目を押し付けた。


チャンスだ。この距離なら間にレンズがあっても読心術は可能だ。全部読んでやる。はじめの目が、自分の髪の色のように真っ赤くなった。

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