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死ぬ前に最後の遊びに来たって?

ハードボイルド・セブン

エピソード2. 大洗

第10話




時間が早すぎたため、海岸に並ぶ店はどこも営業を開始していなかった。赤見はその点を指摘し、気絶した黒崎をとりあえず車の中に移すのはどうだと提案した。たとえ適切な室内ではない自動車の内部であっても海風が強く吹く外よりはましだろうという話だった。しかし意外にも日光は赤見の意見に賛成しなかった。


「何の姫様を扱うわけでもないし、なぜそこまでするんですか。こいつはメンタルが弱くて、時々こんな衝撃を受けて倒れるんですよ。すぐに意識を取り戻すから、目が覚めたら先輩が催眠術をかけて下さい。」


冷酷に聞こえる無感情な言葉に、赤見は少し戸惑った。


「友達……じゃないのか?結構親しそうに見えるけど。」

「はい?」


ひまわりの隣にしゃがみ込んでいた日光が首を横に傾けて赤見を見上げ、突然笑い出した。


「さっき車の中で何を聞きましたか? 俺、そんなことないって。親しいふりをしても、結局は互いの利益のために一緒に働いているだけなんですよ。多分こいつもそう思ってます。先輩、馬鹿にされる前に、この子にそんなこと言わないでください。わかりました?」


赤見は目を細めた。後ろで盗み聞きした会話と二人の間から漂う雰囲気は、単なる仕事仲間程度の乾いた感じではなかったのに。勘違いだったのか?まあ、赤見に何がわかるのか。友達と呼べるような関係はないのは赤見も同じだった。


「でも、催眠術をかけるって?」

「はい。東京に戻します。今の状況を説明するのもなんなんでしょう。何て言えばいいですか?死ぬ前に最後の遊びに来たって?理解してくれると思います?こいつは疑い深く、自分の頭で全て納得しないと気が済まないタイプですよ。今会ったら一番面倒な奴です。」

「ふむ。」


赤見はズボンのポケットに突っ込んでいた手を動かしながら太ももを軽く叩いた。もしも今日が本当に日光の最後の日なら…… 初対面と違いない自分と過ごすより、知り合いと過ごした方がましじゃないか?日光は今催眠術にかかっているから、判断力を失った状態と変わらない。通常の状態の日光であれば自分よりも当然この気絶した女性を選ぶはずだ。


……赤見としては群がるのが不便だが。


「断る。私はこいつに催眠をかけない。」

「えっ?!ではどうするおつもりですか?」

「今日は一日、三人で過ごす。もちろん適切なタイミングが来れば、こいつを返す。おそらく夕方には。あ、ちょうど店が開いたようだな。明かりがついた。」


日光の眉間が潰したポテトチップスの袋のようにサクサクとして飛び起きた。


「俺は先輩と二人で一日を過ごしたかったんですよ!不請客は嫌です!これは約束と違うじゃないですか!」

「最初から約束なんてない。お前の頼みを私がある程度許しただけだ。」

「何そんな……!ふざけないで。勝手なこともほどがあります、先輩。」


歯を食いしばって唸る日光を、赤見は無表情に見上げた。頭が高い。


「正座しろ。」


日光は間もなく続きそうな自動的な動きに一瞬緊張したが、赤見の命令からは何の強制的な催眠術も感じられなかった。


「正座しろって言っただろう。」


やがて赤見の意図を理解した日光は湿った砂の地面に自ら膝をついて座った。赤見を見上げる日光の目は、恨みと不満で満ちていた。


「表情も緩めろ。」


日光の顔はさらに不機嫌になった。


「自分の立場を理解したか?もう少し教育してやりたいが、そろそろ観光客が集まり始めている。お前のようなヤクザ顔がこんな状態だと、確実に注目を浴びるだろう。起きろ。」


『起きろ』という最後の言葉には強制力が含まれていた。瞬時に足を伸ばしまっすぐに立った日光は、うまくバランスをとって膝に付いた砂の粒と砕けた貝殻を払いながら不平を漏らした。


「先輩、本当にずるいですね。」

「あえて私に無礼を這い上がったお前が悪いんだ。」


赤見はにっこりと笑いながら日光の額に指を弾いた。両手で額を覆いながら一歩後ずさった日光は一瞬呆然としたが、すぐにニヤリと笑って赤見に寄り添った。


「ねえ、それ知ってます?先輩が笑うとちょっと俺の好みなんだよ?」


今度は赤見の眉間がサクサクになった。

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