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第10章 永遠の灯火

季節は巡り、春が訪れていた。楓のアパートは、以前より少し賑やかになっていた。

窓辺に小さな花瓶が置かれ、色とりどりの花が咲いている。

デスクの上には、完成したイラストのプリントが並ぶ。



どれも、赤い瞳の青年と、笑顔の自分が描かれている。楓は25歳から26歳になった。

今は、依頼だけでなく、自分の絵をSNSに上げるようになった。



コメントが届くたび、胸が温かくなる。左手首の紋章は、まだかすかに赤く光っている。

触れると、いつも――あの声が聞こえる。「楓」楓は微笑んで、紋章に指を当てた。


「焔……おはよう」


部屋に、誰もいないはずなのに、優しい風が吹く。

銀髪の幻影が、ふわりと現れては消える。


赤い瞳が、静かに楓を見守っている。外へ出ると、桜の花びらが舞っていた。

楓は公園のベンチに座り、スケッチブックを開いた。


描くのは、いつも同じ景色。

朱の鳥居の下で、九尾の狐と寄り添う自分。描きながら、楓は小さく呟く。


「今日も、きれいな色がたくさん見つかったよ。


桜のピンク、空の青……焔が教えてくれた温もりで、全部感じられる」風がページをめくり、花びらが一枚、絵の上に落ちた。

楓はそれを優しく拾い、胸に押し当てた。


「……ありがとう。

もう、空っぽじゃない。

悲しい日も、嬉しい日も、全部抱きしめられるようになった」


夕陽が沈む頃、楓はアパートに戻った。

部屋に入ると、窓辺に小さな赤い光が灯っていた。

紋章と同じ、柔らかな赤。楓は光に手を伸ばし、そっと触れた。


「焔……今日も、一緒にいてくれてありがとう」


光が優しく脈打ち、部屋全体を温かく包む。

九尾の尾が、幻のように広がり、楓を優しく抱きしめる。


「俺も……大好きだ、楓」


声は、もう聞こえなくても、心に響く。

赤い瞳の温もりは、永遠に消えない。楓はスケッチブックを閉じ、窓の外を見た。

夜空に、星が瞬いている。空白だった心は、今は色とりどりの灯火で満ちていた。


そして、その灯火の中心には、いつも――赤い瞳の焔がいた。これからも、静かな日々は続く。

二人の絆は、決して途切れない。



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