タイトル未定2025/11/19 07:56
翌日、出社したちはるは社内で亮を見かけ挨拶をした。
「おはよう」
「おはよう、友光さん」
課こそ違うがお互い同期入社で、顔と名前くらいは知っている。
しかし亮が秘書と言うせいか、必要以上に親しく話をしたことはない。
ちはるは亮の側に行くと、さっそく昨夜のことを切り出した。
「ぱっつんって、独りでbarに行くのね。さすが~」
亮は思わず、ちはるをみつめた。
「barから出てきたぱっつんを、見ちゃったのよ。素敵なお店ね」
亮は、何も言わず黙っていた。
「ねぇ、アタシをあのbarに連れて行ってよ」
「えっ?」
「今日、仕事が終わったらさぁ。いいででしょ」
「きょ……今日は、ちょっと用事が」
亮はとっさに、でまかせを言った。
「じゃあ、いつならいいの?」
「いつと言われても……都合のいい日ができたら、お知らせします」
「ありがとう。楽しみにしてるわ」
ちはるは、亮に背を向け歩きだした。
「おっは~友光!」
「わっ!も~びっくりしたぁ~」
突然背後から馬場に声をかけられ、ちはるは飛び上がらんばかりに驚く。
「オーバーだな。北神ちゃんと、話をしていたじゃないか。珍しい」
「まぁね」
「珍しいな。何を、話していたんだ?」
「それは……女同士の話よ。馬場には、関係ないわ!それより、仕事仕事!」
言いながらちはるは、急ぎ足で職場に向かった。
亮が秘書室に入ろうとすると、社長の水田がやってきて亮に声をかけた。
「おはよう」
「おはようございます」
亮は深く頭を下げた。
「早速だが、北神君に頼みたい。ちょっと来てくれ」
水田に言われるままついていくと、亮は社長室に通された。
社長室には大きな机の上に、デスクトップのパソコンが置いてあり、来賓用のソファーとテーブルが置かれていていた。
水田は、大きな机の回転イスに座った。
机を挟んだ水田の前に、亮は立った。
「社長、頼みたいこととは?」
「北神君と一緒に行ったbarに、娘と一緒に行ってほしい」
頼みたいこととは、多分そのことだろうと、亮は察していた。
「私は、社長のお嬢様とお会いになったことはありません。初対面のお嬢様と店に行くなんて、荷が重すぎます」
「もちろん、私も一緒に行く。全て私に、任せてくれ。これは、業務命令だ」
……業務命令。
この言葉を言えば、社長は私が動くと思っている……。
「わかりました。いつ、行けばいいでしょうか」
「早い方が、良いだろう。娘には、既に話をしてある」
授業の間の休み時間。
若菜は、窓側の自分の席に座っていた。
流花は、若菜の席の窓際で、腕を組んで立っていた。
流花は、若菜から聞かされた話に声を上げた。
「本当に、barのマスターと会うの?」
「パパが、どうしても会わせたいって。パパとパパの秘書と三人で、barに行くの」
「そうなんだ。マスターって、どんな人だろ。お父さんから、聞いていない?」
「パパは、いい男だとしか言わない」
「じゃあ、どんな人かわからないのね」
「ねぇ!シロちゃんも、一緒に来てよ!」
「ちょっと!冗談じゃないわよ!」
流花が声を上げたところで、次の授業の始りを告げる予鈴がなったのだった。




