タイトル未定2025/11/19 07:34
会議が終わり、水田グループ営業部の社員数名は、会議室から出てきた。
来年のバレンタインの打ち合わせを、していたのだった。
「毎年のことだから、いいかげんネタもつきるわよね!」
小柄で、金色に近い茶髪をした友光 (ともみつ)ちはるが、自分の机のイスにどかっと座るなり大きな声で言った。
「友光~去年も、それ言っていたよなぁ!」
ちはるより年上で、顔はこの際おいといて名前の通り身体の大きな馬場 (ばば)が、ちはるをからかう。
「だって~本当のことだもん!」
「来年こそ、本命にあげるヤローは、いないのか?」
「うるさいよっ!」
「いないのか~しょうがないなぁ~。よし、俺がもらってやるぞ」
「ちょっと~なんで、そうなるのよ!赤井 (あかい)!お茶!」
「ちはるさん、お茶です!」
赤井と呼ばれた男は、手回しよくちはるにお茶を差し出した。
小柄で癖がかかった髪の毛をした赤井は、何処となくとっつあん坊やの顔立ちをしていた。
二十代中盤で、ちはると馬場の部下。
「さすが赤井!サンキュー」
「お~い。俺のは?」
「もちろん、馬場さんのも入れましたよ」
言いながら赤井は、馬場にもお茶を差し出した。
「赤井~お前ほんと、良い奥さんになるぞ!」
「やめてくださいよ~馬場さん!」
「いや~ほんとだよ!友光……ちっとは、赤井を見習え!」
「あ~?馬場ぁ!うるさいよ!」
そんなふたりの会話を、にこにこしながら、赤井は聞いていた。
お茶を飲み終えた馬場は、伸びをしながら言った。
「昼飯食ったら、企画部の連中と合同会議かぁ。たり~なぁ」
秘書室には、社長の水田と秘書の亮の二人だけだった。
「社長、昨夜はごちそうさまでした」
「遅くまで付き合わせて悪かったね。しかし昨日は、いい店を見つけたな」
「落ち着いた店でしたわ」
「マスターも、良い男だった」
亮は、水田の言葉を聞き流していた。
そんなことにお構いなしに水田は言った。
「次行くときは、娘を連れて行こう。マスターに会わせたいんだ。その時は、北神君も一緒に」
「私もですか?」
「北神君も一緒なら、娘もマスターに会いやすいだろう」
亮の返事を聞かずに、水田は立ち上がった。
水田を見送った後、亮は秘書室に戻った。
秘書室には誰もいなく、静まり返っていた。
水田が言った言葉を真に受けていない亮は、机の上の電話に手を伸ばし、自分の携帯に電話をかけた。
電話は、コールが鳴るだけだった。
諦めて、電話を切ろうとしたときだった。電話に出る気配を亮は感じ、慌てて声を上げた。
「あの私、北神と申します……」




