タイトル未定2025/11/19 08:42
大晦日の夜、外は凍てついて今にも雪が降りそうだった。
両親が海外旅行に行ったので、若菜は流花を家に呼んだ。
流花は、泊まり道具一式を持って、若菜の家にやってきた。
昼間からおでんを仕込み、大人がいない家で、若菜と流花は楽しく話をしながら晩ご飯のおでんを食べた。
「シロちゃんは、なんでもできるね」
おでんを作ったのも、ほとんど流花一人で作ったようなものだ。
「スイは、手先が器用じゃない。ピアノが弾けるし。私、ピアノなんて弾けないよ」
「それは、小さい頃から弾いていたから。シロちゃんだって、ピアノ習えば絶対弾けるって」
「そうかなぁ?スイは、四月から短大生だよね。将来は、保母さん?」
「うん。小さい頃から、保母さんになりたかったんだ。シロちゃんは、大学生だよね」
「うん」
「推薦で行くから、やっぱシロちゃんは凄いなぁ」
「運が良かっただけだよ。奨学金で行くから、しっかり勉強しないと」
「四月になったら、シロちゃんとこんな風にのんびりできないのかな?」
「どんなに忙しくても、お互い連絡し合って会おうね」
「もちろん。ねっ、食べちゃったら、神社に行かない?」
「そうだね」
小さい神社のせいか、神社には数人の参拝客しかいなかった。
小銭を賽銭箱に投げてお参りした後、除夜の鐘を鳴らして、境内で振る舞っていた甘酒をもらった。
甘酒を飲んでいると、少しずつ体が温まっていく。
甘酒を飲みながら、流花は若菜に聞いた。
「あれから、マスターとはどうなったの?」
「どうって……どうもしないよ。あれ以来、お店に行っていないし」
「未成年だから、行けないよね」
「覚えてる?ちはるさん」
「うん」
「マスターと、何かあったかな?良いなぁ社会人は!アタシも早く社会人に、なりたい」
「えっと……ちはるさん以外に、もうひとり女の人がいたよね。メガネをかけた」
「パパの秘書ね。北神さんが、どうしたの?」
「北神さんって、言うんだ。心配するのは、ちはるさんより、北神さんの方じゃないの?」
「どうして?」
「北神さんも、マスターのこと好きみたいだし」
「そっ、そうかなぁ?」
「なんとなく、そんな感じがする」
「やだぁ、ライバル多い!!」
「背が高くてかっこいいし、やさしく接してくれるもんね。職業柄だろうけど」
甘酒をゆっくり飲みながら、流花の言葉を聞いていた若菜は、じっと流花をみつめて言った。
「……もしかして、シロちゃんも、マスターのことが好きなの?」
「えっ?」
「シロちゃんが、男の人のことをかっこいいって言うの初めてだから。ねっ、マスターのこと、好きなの?アタシに遠慮して、ごまかしたりしないで。好きなら、正直に言って」
「マスターが好きとか……そんなことわからない。男の人に、興味なんてないよ」
「でも、マスターのことかっこいいって言ったじゃない」
「それは、そう思ったから言っただけ」
「シロちゃん……何かあったの?」
「何もないよ。それより、今年も後少しで終わりだね。年内に進路が決まって良かった」
「うん。後は単位を落とさないで、卒業を待つばかりだね」
「寒いね。そろそろ帰ろうか」
若菜と流花は、手にしていた甘酒が入っていた紙コップをゴミ箱に捨てると、寒さをしのぐよう寄り添うように、歩き出した。




