番外編:世界が変わった日
1.鏡の魔法と身体の変化
平凡な男子高校生、内田悠斗が祖母の澄子の家で、鏡の魔法によって女子高生ユキへと変身してしまった、その日の出来事。澄子の家から自宅へと自転車で帰ろうとするが、鏡の魔法のせいでセーラー服にミニスカート姿になっている。ユキは自転車のサドルに跨り、ペダルを漕ぎ始める。
「なんか脚の辺りがスースーして心もとない…。女の子って、こんな服でいつも過ごしてるのか…」と独白。
澄子の家から自宅までの間は、緩やかな上り坂のある住宅街を通る。ユキはペダルを踏む足が、いつもより重く感じることに気づく。
「この坂…いつもなら一気に登れるはずなのにキツい…。もしかして、筋力も落ちてる…?」と内心で呟く。
何度か休憩を挟みながら、ユキはなんとか自宅の玄関前まで辿り着く。玄関のドアを開けようとするが、ふと自分の格好を見て、不安に駆られる。
「母さんや父さん、姉ちゃんになんて説明すれば…。おばあちゃんは『親しい人はユキに対する違和感があるかも』って言ってたけど…」
恐る恐るドアを開け、「ただいまー…」と遠慮がちに呟きながら玄関に入るユキ。
2.家族の反応と受け入れ
リビングから、悠斗の母、陽子が「おかえりー」と声をかけ、玄関の方を覗く。玄関に立つセーラー服にミニスカート姿のユキを見て、目を丸くし「え!?どちら様?」と驚く。
ユキは「か…母さん!これには深い訳が…。いや、ボクにもよく分からなくて…」としどろもどろになりながら説明しようとする。
陽子は警戒しつつも、ユキの顔をまじまじと見て、「もしかして…悠斗?」と呟く。
「え!?母さん、ボクのこと分かるの?疑わないの?」と驚くユキ。
陽子は「やっぱり悠斗?目の辺りが悠斗の面影があると思ったけど…。いきなり女の子になっちゃって、どうしたの?」と問う。ユキが澄子の家での鏡の魔法の出来事を手身近に話すが、陽子は「へぇ…鏡の魔法ねぇ…。何だか分からないけど、私にとっては悠斗が女の子になっても、お腹を痛めて産んだ子には変わりないわよ!」と微笑む。
ユキが感極まって「母さん…!」と涙ぐんでいると、2階からドタドタと悠斗の姉、花音が降りてくる。「悠斗おかえりー…って、誰!?」と驚く花音。
陽子が「なんだか鏡の魔法で女の子になっちゃったんだって!」と笑うと、花音は「へー、そうなんだ〜」と納得。ユキは「姉ちゃん、反応薄っ!」とツッコむが、花音がユキをジロジロと見て「っていうか悠斗、めっちゃ可愛くなってない!?ヤバくない?」と興奮ぎみにユキに駆け寄る。
陽子と花音がユキの変貌ぶりにワイワイ盛り上がる中、ユキは内心で「とりあえず家から追い出されるとかでなくて良かった〜…」と安堵。
3.部屋での回想と葛藤
ユキが自分(悠斗)の部屋に入り、「はーっ…」とため息をつきながらベッドの上に座り込む。「いきなり女の子になっちゃって、これからボク、どうなるんだろ…」と内心で呟くユキ。部屋を見渡すと、シンプルで整頓されたインテリアの中で、かわいいマスコットキャラクターのぬいぐるみが目を引く。ぬいぐるみの存在が、悠斗の過去の傷を思い出させる。
(回想:幼稚園の頃)
悠斗は幼少の頃、内気で内向的な性格のためか友達も少なく、幼なじみの彩花が一番の親友だったが、彩花と仲良くなる前はマスコットキャラクターのぬいぐるみが唯一の心の支えだった。寝る時も遊ぶ時も一緒だったぬいぐるみをある日、幼稚園に持って行くと、数人の女の子が悠斗に近寄ってくる。
「ゆうとくん、男の子なのにぬいぐるみ持ってるの?わたしのパパは、かわいいものは女の子のものだって言ってたよ?」
悠斗はぬいぐるみを抱きしめながら、泣きそうになる。「なんで…男の子はかわいいもの持ってちゃダメなの…?」と内心で呟く悠斗。
そこに、彩花が割って入り「みんな、やめなよ!男の子がかわいいもの持ってたって、女の子がカッコいいもの好きだったって、別にいいじゃん!」と叫ぶ。
女の子たちがキョトンとしつつ、仕方なく去っていくと、悠斗が「あ、ありがとう…」と彩花に話しかける。
彩花は「別にいいよ!わたし、あやか!あなた、名前は?」と微笑み、「ぼく…、ゆうと…」と返す。彩花と悠斗が握手をして、悠斗の顔に笑みが戻る。
その日以来、悠斗と彩花は親友になり、悠斗のピンチにはいつも彩花が駆けつけた。悠斗も彩花と過ごす中で、少しずつではあるが自分に自信を持てるようになった。
しかし、中学生になる頃には男子と女子の間に壁ができ始め、悠斗と彩花も以前のようには話さなくなった。高校に入って同じクラスになってからは、登下校の際に顔を合わせたり一緒に途中まで帰ることもあるものの、どこか二人の間にはすれ違いが生まれていた。
自分の部屋でベッドの上に横になって天井を眺めていたユキは、「彩花とも最近あまり話してないなぁ…。こんな姿になったことを知ったら、どう思うんだろ…」と独白する。
「とにかく、来週からは学校だし、なんとかユキとして暮らしていかないと…」と内心で呟く。そこに、部屋の外から「ご飯よー!」という陽子の声が聞こえて、ユキはリビングへと向かう。
4.家族の団らんと新たな一歩
リビングのテーブルには、仕事から帰宅した悠斗の父、和樹が座っている。和樹は缶ビールを飲みながら、ユキを見て「おっ、悠斗…いや、ユキちゃんだっけか。父さん、母さんから話聞いて驚いたけど、お前のやりたいようにすればいいよ。俺、応援してるからな」と微笑む。
ユキが「父さん…ありがとう」と呟くと、花音とユキを見ながら「いやー!それにしてもかわいい娘たちに囲まれて、父さん困っちゃうなー!」と豪快に笑う和樹。
陽子が「お父さん!飲み過ぎよ!」と嗜める中、花音は「それより、これから服どうするの?私の高校の時の服使う?」とユキに問いかける。
ユキが「うーん…どうしよう…」と呟くと、和樹が「じゃあ、父さんがお小遣いあげるから、明日お姉ちゃんと一緒に買ってきなよ!」と提案。花音も「やったー!パパありがとう〜」と乗り気で、ユキは内心で「姉ちゃんと一緒に!?ボク、女物の服買いに行くの!?」と驚愕する。
5.姉妹?のショッピング
内田家の玄関で花音が「準備できた?」とユキに声をかける。ユキはまだ悠斗の服を流用したオーバーサイズの上着にズボン姿で、ボーイッシュな雰囲気。ユキが頷くと、花音が「じゃあ、行こっか!」とユキの手を引いて、玄関を出ていく。
花音とユキがショッピングモールの下着売り場で、陳列されている商品を見ている。ユキが内心で「うぅ…すごく場違いな雰囲気…」と呟きながら赤面していると、花音が女物の下着を見ながら、商品を手に取りユキに話しかける。
「これなんかどう?バルコネットブラでデコルテ強調してくれるし、シームレスだからアウターに響かないよ?」と言いながら、花音がユキを見つめる。ユキがキョトンとして「え?姉ちゃん、バルコ…シーム…何?」と返すと、花音が笑いながら「あー、ごめ〜ん。いつも友達と話してる感覚で話しかけちゃった!」と説明。
ユキが赤面しながら知ってる知識を総動員して「あ〜、ボクも知ってるよ!フロントホックって前で着けられて便利なんでしょ!ワイヤーの入ってるブラもあるとか…」と、なんとか絞り出す。花音は「あはは!やっぱり見た目は女の子でも中身は悠斗だね〜」と笑う。
ユキは「だってボク、男だし…」と呟き、花音に引っ張られながら下着や服を購入していく。
6.ナンパ男の波乱と救世主
買い物を済ませ、花音が「私、ちょっとATMで記帳したり用事あるから、ここで待ってて!」と言って、ユキを残して歩いていく。ユキはショッピング通りの壁沿いでスマホを見ながら時間をつぶしていると、通行人のチャラい男が近寄ってきて、「お、君カワイイね!いま1人?」と話しかける。
ユキは「あの…。わ、私、用があるんで…」と立ち去ろうとするが、男が「よかったらメシでもいかない?俺、車停めてるから」とナンパし、男がユキの腕を無理やり掴み「ほら、行こうぜ!」と連れて行こうとする。
ユキが「離して…!」と手を振り解こうとするが力が入らず、「誰か…」と内心で叫ぶと、高校生くらいの男子が「オイ!その子、嫌がってるだろ!」と叫ぶ。
ナンパ男が「あ?」と男子高校生の方を向くと、鋭い目で男を威嚇する男子高校生。男は怯み、「ふ…フン!」と言い残し去っていく。
ユキが男子高校生に「あの…ありがとうございます…」と言いかけるが、「あー、気にするなって!」と笑いながら歩いていく。
もう1人の男子が駆け寄ってきて、「オイ、亮太!あのカワイイ子、誰!?」と亮太に話しかけるが、亮太は「え?知らない子だけど?」と言いながら、向こうの方へ去っていく。
ユキが呆然としていると、花音が戻ってきて「お待たせー!ん?どうかした?」と話しかける。ユキは「なんでもない!」と返しつつ、内心で「かわいい女の子っていうのも、変な人が寄ってきたり大変なんだな…。それにしても、あの男子、どこかで見たような…」と呟く。
7.ユキとしての決意
自宅に帰ったユキは、自分の部屋で明日の登校の準備をしながら、「この姿になって色々あったけど、学校に行ったらもっと大変なことになりそうだなぁ…」と独白。
部屋の姿見に映る自分を見つめながら「いきなり女の子になったのは災難だったけど、せっかくだし、もっと楽しんでみた方がいいのかなぁ」と内心で呟く。
ユキになった直後に、澄子が言った「自分を見つける良い機会よ」という言葉が脳裏に浮かび、ユキの顔に少し笑みが浮かぶ。
「よし!明日からもがんばるぞ!」と呟き、窓の外の星空を見つめる。ユキとしての悠斗のドタバタな日々は、ここから始まっていく。(第一章につづく)