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第四章:文化祭の輝きと告白

1. 楽屋での彩花との対峙

文化祭当日、神奈川県の海沿いの高校は色とりどりの装飾で賑わっている。楽屋では、ユキが白雪姫のふわっとした白いドレスを身にまとい、鏡の前で最後の準備。玲の施したメイク—パール入りのアイシャドウ、ふんわりチーク、ピンクのグロス—で、ユキはまるで本物の姫のようだ。

「うう…ボク、こんなキラキラでいいの!? キスシーン、ほんとムリなのに…!」

ユキが鏡に向かってブツブツ呟いていると、ノックの音。ドアを開けると、彩花が笑顔で立っている。

「ユキちゃん、舞台がんばってね!」

彩花の明るい声に、ユキは「ありがとう、彩花ちゃん!」と返すが、内心では思う。

(彩花、最近なんか機嫌悪そうだったけど…今日、妙にニコニコしてるな…? なんか、怖いよ…!)

彩花がふいにポツリと呟く。

「そうそう、小学校の時の担任の山田先生、最近結婚したらしいよ。」

ユキは無意識に、「へぇー、あの奥手でモテなかった山田先生がね~。相手は同僚の先生かな?」と軽く返す。だが、瞬間、彩花の笑顔が消え、目が鋭くなる。

「なんでユキちゃんが、私と悠斗の小学校の時の担任の先生のこと知ってるの?」

彩花の声に、ユキはハッとする。

「うっ! あ、いや…ゆ、悠斗くんから聞いたの! 担任だった山田先生の話!」

ユキは慌ててごまかすが、彩花は一歩近づき、ユキの顔をジッと覗き込む。

「へぇー! 悠斗にねぇ…。ところで、ユキちゃんの瞳、誰かに似てると思ってたけど…悠斗にそっくりなんだよね~。」

彩花の声は甘いのに、どこか迫るような圧。ユキは「ひ、人違いだよ~! やだなー!」と手を振って誤魔化すが、心臓はバクバク。

「う、うわ、開演近い! じゃ、じゃあ私、行かなくちゃ!」

ユキは逃げるように楽屋を飛び出し、彩花は一人残された部屋で呟く。

「…あの反応、やっぱりユキは悠斗…!?」

彩花は机に手を置き、考え込む。幼少期の悠斗との約束—「彩花と結婚する」—が頭をよぎり、胸が締め付けられる。



2. 舞台での輝きとキスシーン

体育館のステージは満員の観客で熱気に包まれている。『海辺の白雪姫』の幕が上がり、ユキは白雪姫役として登場。玲のプロデュースしたドレスとメイクで、ユキはまるで絵本から飛び出したような輝きを放つ。観客は「可愛い!」「めっちゃ姫!」とざわめく。

ユキは内心、(ボク、こんな大勢の前で…! でも、玲のメイク、ほんとすごい…!)とドキドキしながら、台詞を懸命に演じる。亮太の王子役は堂々として、観客を魅了。彩花と玲は舞台裏で小道具とメイクのフォローに入るが、彩花の目はユキに釘付けだ。

(ユキ…悠斗の気弱な雰囲気、そっくりなのに…こんなキラキラしてるなんて…。)

玲は隣で「ふふ、ユキちゃん、めっちゃ輝いてるじゃな~い? 私のプロデュース、完璧!」とニヤリ。彩花はチラッと玲を見て、(玲、ユキとやたら仲良いよね…)とモヤモヤ。

クライマックスのキスシーン。ユキ演じる白雪姫が毒リンゴで眠り、横たわる。亮太の王子がゆっくり近づき、観客は息を呑む。亮太がユキに囁く。

「ユキ…きれいだよ。」

ユキは顔が真っ赤になり、「い、いきなり何…?」と言いかけるが、亮太がそっと唇を重ねる。軽いキスだが、ユキは「ん…!」と小さな声を漏らし、心臓が爆発しそう。観客は「キャー!」と大盛り上がり。

舞台裏の彩花は、凍りついたように立ち尽くす。「悠斗…」と呟き、ユキの正体を確信。涙がこぼれそうになるが、グッと堪える。玲は他の女子生徒と「キャー! 亮太くん、かっこよすぎ!」「ユキちゃん、めっちゃ可愛い!」と盛り上がるが、彩花の異変には気づかない。

舞台は大成功に終わり、ユキは拍手喝采の中、楽屋に戻る。だが、鏡の前に置かれたメモを見つける。「放課後、校舎裏で待ってて 彩花」

ユキは「彩花…もしかして…」と呟き、胸が締め付けられる。



3. 校舎裏の告白と彩花の涙

放課後、校舎裏の静かな庭。夕陽がオレンジ色に染める中、彩花が一人で待っている。ユキがドキドキしながら現れると、彩花は静かに口を開く。

「来てくれてありがとう。ユキちゃん、ステージでの姿、輝いてたけど…私には、悠斗の姿が重なって見えた…。」

ユキはハッとして黙る。彩花のまっすぐな目に、逃げられないと感じる。

「でも、悠斗じゃないんだよね…? ユキちゃん…!」

彩花の声は震え、涙を堪えている。ユキは「もう…限界かな…」と独白し、意を決する。

「ずっと黙っててごめん…。実は…ボク、悠斗なんだ。鏡の試練で、ユキって姿になっちゃって…。」

ユキは双魂の鏡の魔法、澄子の助言、セリカの警告を説明。彩花は黙って聞き、目を潤ませる。

「やっぱり悠斗だったんだ…。」

彩花の声は小さく、だが確信に満ちている。

「亮太くんとユキちゃんがキスしてるの見て、私、すごくショックだった。やっぱり私、悠斗のことがずっと好きだったんだなって…。」

ユキは「え?」と目を丸くする。彩花は続ける。

「覚えてる? 幼稚園の頃、悠斗が約束してくれたの…。大きくなってカッコいいお兄さんになったら、私と結婚してくれるって…。私、あれから悠斗のこと、ずっと…!」

彩花は俯き、言葉が止まる。涙がポロリと落ち、慌てて手で拭う。

「ううん、何でもないの。ごめんね、変なことばかり言っちゃって…。」

彩花は走ってその場を去る。ユキは「彩花!」と手を伸ばすが、彩花の背中は遠ざかる。ユキは立ち尽くし、(彩花…ボクのこと、そんな風に…? ボク、今はユキなのに…どうすればいいの…!)と混乱する。



4. 亮太の告白の兆し

ユキが呆然としながら校門に向かうと、亮太が「よっ!」と声をかけてくる。ユキはキスシーンを思い出し、顔を真っ赤にして「な、何!?」と後ずさる。亮太はニヤリと笑い、呟く。

「舞台の上のユキ、めっちゃキレイだったぜ。俺、キスした時に本当の俺の気持ちに気づいたんだ。」

ユキは「え!?」と声を上げ、亮太は続ける。

「俺、ユキのこと…前から…。」

だが、ユキは「ちょ、ちょっと! 急にそんなこと…!」とパニックになり、「じゃ、じゃあまた明日!」と走り去る。亮太は「ユキ!」と呼びかけるが、ユキの後ろ姿を見ながら呟く。

「俺の気持ち、絶対ユキに伝える…!」

ユキは走りながら、(彩花と亮太…二人とも一体どうしちゃったの!? ボク…どうすれば…!)と独白。彩花の涙と亮太の言葉が頭をぐるぐるし、鏡の試練のプレッシャーが重くのしかかる。文化祭を経て、ユキ、彩花、亮太の関係はより複雑に絡み合う。(つづく)

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