第92話: 「言葉にならないまま残るもの」 (日曜日)
異動を終えた最初の週末。仕事から少し離れた時間の中で、ふたりの関係性が“言葉にならないまま”深まっていたことに、章太さん自身が気づいていくような構成にしました。
—
静かな部屋
日曜日の午前。 章太は、自宅の机に向かってノートを開いていた。 広報部に異動してから初めての週末。 資料も仕事もない時間の中で、ふとリンコのことを思い出す。
「…隣にいるって、仕事の配置だけじゃないんだな」
そうつぶやきながら、ノートの端に小さく線を引く。 それは、言葉にならない気持ちの輪郭のようだった。
—
街の気配
午後。 章太は、何気なく街を歩いていた。 カフェの前を通りかかったとき、以前リンコと待ち合わせた日のことがよみがえる。
彼女が少し早めに来ていたこと。 窓際の席で、静かにチケットをポーチにしまっていたこと。
その“静けさ”が、章太の中でずっと残っていた。
—
気づきの時間
夕方。 章太は、広報部の資料を整理していたときに見つけたリンコのメモを思い出す。
「誰かと並んで過ごす時間が、言葉よりも深く残ることがある。」
その一文が、章太の中で静かに響いていた。 彼女の文章は、いつも“言葉の外側”に何かを残してくる。
「…それって、気配を信じてるってことかもしれない」
「言葉にならないまま残るものが、誰かの存在を輪郭づけることがある。」
—
次回は第93話、月曜日編。 広報部で先輩の異動に伴う懇親会が開かれる一日。




