第89話: 「静かな準備」 (木曜日)
今回は、広報部の席がひとつ空き、章太さんが“今の場所”に静かに別れを告げる準備を始める一日。
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広報部の空席
木曜日の朝。 広報部の一角に、ぽつんと空いた席があった。 異動で他部署へ移ったメンバーの後任はまだ決まっていない。
未来がその席を見ながらつぶやく。
「…誰が来るんでしょうね」 遥が静かに答える。
「でも、空いてるってことは、誰かが“来る”ってことだから。なんだかワクワクするね」
リンコは、何も言わずにその席を見つめていた。 そこに先輩が座る姿を、ふと想像してしまう。
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企画部の整理
午後。 章太は、企画部で資料の整理をしていた。 最近、広報部とのやりとりが増え、デスクに広報部の資料が混ざることも多くなっていた。
陸が声をかける。
「章太、最近広報部にいる時間のほうが長くない?」 章太は笑う。
「…そうだな。 でも、特別扱いしてるわけじゃないよ。仕事の都合だよ」
ひよりがふとつぶやく。
「章太さんが異動したら、陸さんのせいで企画部はちょっとうるさくなるかも」
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部長の気配
夕方。 章太が広報部に資料を届けに行くと、部長がフロアの奥に立っていた。 未来が軽く会釈し、遥が資料を受け取る。
部長が章太に声をかける。
「その席、空いてるんだよ。 …どう思う?」
章太は、少しだけその席を見てから答える。
「…どうしたんです、急に。たとえどこにいても全力で仕事するだけです」
部長は笑う。
「それ、覚えておくよ」
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リンコは、日記に一行だけ加えた。
「空いた席に誰かが座るとき、言葉の並び方が少しだけ変わる。」
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異動の話はまだ正式には出ていないけれど、空気の中に“予感”が濃く漂い始めます。 周囲の人々もそれぞれの立場でその変化を感じ取りながら、静かに受け入れていくような構成にしました。




