第9話:「静かな午後の、交換ノート」** (火曜日)
リンコと未来の“女子ランチ時間”がメインの回。社内の窓際で、ふたりだけが共有するやわらかくてちょっと甘い会話が物語を紡ぎます。天然な未来さんだからこそ言える、無意識の核心…どうぞじっくりご覧ください
昼休み、社内の窓際テーブル。
やわらかな陽射しとサンドイッチの香りが、ふたりの間に静かに流れていた。
経理部の佐々木未来は、手作りのチキンサンドを袋から取り出しながら言った。
「今日のは、ちょっと甘めにしたよ。がんばる日って、味が優しいと元気出る気がするから」
氷川リンコは微笑んで、コンビニの玉子サンドを差し出した。
「そしたら交換しましょ。わたしも、“優しさ成分”欲しかったとこ」
ふたりでひと口ずつかじり、少しだけ静かな時間が流れる。
未来が、ふと切り出す。
「リンリンって…最近、表情変わってきたよね。たぶん、誰かとの距離感がいい感じに揺れてるって思うんだけど」
「う、いきなり心理分析すな。…あれですか、あの人のこと?」
「うん。メガネ先輩。最近声のトーンが変わった日から、リンリンの“語尾”ちょっとやわらかくなってた」
リンコは思わず手元を見つめた。
「…そんなに分かりやすかった?」
未来は頷いて、チキンサンドの端をきれいに整えながら答えた。
「気づくよ。“誰かの優しさに、ちゃんと反応してる顔”って、見ててじんわりするもん」
窓の外では風に揺れる木々が、午後の静けさを映していた。
スマホの通知音も鳴らず、ふたりだけの交換時間は、なぜか“手紙みたい”だった。
リンコは残ったパンの角をちぎって言った。
「…たぶん、期待してるのかも。明日も、また何か話せたらいいなって」
未来は笑って言った。
「それ、すっごく素敵。“何か話したくなる誰か”がいるってさ、めっちゃ贅沢だよ」
午後のチャイムが鳴る。
優しい風味のサンドイッチと、心のやわらかさだけが静かに残った火曜日だった。
どうでしたか?天然だけど鋭い未来さんの一言に揺らぐリンコの気持ちが、じんわりと描けた回でした