第87話: 「選ばれる予感」 (火曜日)
部長からの軽いジャブのような言葉が、章太さんに“異動”を意識させるきっかけとなり、広報部との関わりが改めて浮き彫りになるような構成にしました。
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仕事の終わり
火曜日の夕方。 章太は、企画部の資料整理を終え、デスクの片づけをしていた。 そこへ部長がふらりと現れる。
「章太、今日ちょっと帰りいいか?」 章太は少し驚きながらも、笑ってうなずいた。
「…はい。ちょうど手が空いたところです」
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にぎやかな飲み屋にて
夜。 ふたりは駅近くの居酒屋にいた。 カウンター席で並びながら、軽く乾杯する。
部長が、焼き魚をつつきながら言う。
「最近、広報部とよく絡んでるな」 章太は、少しだけ笑って答える。
「…はい。コラボ企画の流れで、自然と関わるようになって」
部長がうなずく。
「いろんな視点を “伝える”より、“残す”って感じになってきた」
章太は、少しだけ黙ってから答える。
「…広報部の空気に触れると、言葉の使い方が変わる気がします」
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会話の余白
部長は、グラスを傾けながら言う。
「10月の異動、まだ確定じゃないけどな。 …でも、“今いる場所”だけが居場所じゃないってことは、覚えておいて損はない。特に人との関わりを考えると円滑に仕事をこなせる人材は貴重なんだ」
章太は、言葉を選びながら答える。
「…誰かの隣にいることで、仕事の意味が変わることもあるんですね」
部長は笑う。
「それ、広報部に言われたのか?」 章太も笑う。
「…いえ、自分で気づきました」
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帰り道の余韻
帰り道。 章太は、駅までの道をひとりで歩いていた。 部長の言葉が、静かに胸に残っていた。
“今いる場所だけが居場所じゃない”
その言葉が、広報部の空気と重なっていた。
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ふたりの会話はあくまで穏やかで、でもその中に“選ばれる予感”が静かに潜んでいます。




