第76話: 「届くということ」 (金曜日)
イベント当日。広報部と企画部の展示が公開され、ふたりの文章が“隣に並ぶ”ことで、言葉にならないものが誰かに届く一日。
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展示の始まり
金曜日の朝。 社内イベント「言葉の外側」が始まった。 広報部と企画部の文章が交互に並ぶ展示は、静かな注目を集めていた。
未来が展示を見ながらつぶやく。
「…これ、言葉だけじゃなくて“気配”が並んでる感じしてるね」 遥がうなずく。
「文章って、書いた人の空気が残るんだなって思う。 先輩とリンコちゃんの文章、並べると…何かが見えたりしないかな」
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誰かが気づく
午後。 社員たちが展示を見て回る中、ひよりが陸に耳打ちする。
「ねえ、これって…ふたりの文章、ちょっと似てない?」 陸が笑いながら答える。
「似てるっていうか、響き合ってる感じ。 …たぶん、同じ時間を過ごした人の文章なんだと思う」
未来がふたりの会話を聞きながら、そっとつぶやく。
「気づく人は、気づくんですね。 でも、それを言葉にしないまま残してくれるのが、広報部らしい」
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ふたりの会話
夕方。 展示の片付けが始まる頃、章太が広報部に立ち寄る。 リンコは、パネルをひとつずつ丁寧に外していた。
「…ありがとう。 隣に並べてもらえて、嬉しかったよ」 章太がそう言う。
リンコは、少しだけ笑って答える。
「私もですよ。 でも、“並べる”って、思ったより静かなことでしたね」
章太はうなずく。
「静かだけど、ちゃんと届いてたよ。氷川、日曜日映画行かない?ちょっと気になってるのがあってさ 」
「いいですよ~。じゃ今度はファクトリーにしません?」
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広報部の余韻
夜。 リンコは、社内報の冒頭文に一行だけ加えた。
「誰かに届いたとき、はじめて言葉が生きる。」
遥がそれを見て、ふとつぶやく。
「…展示って、ふたりの関係性そのものだったのかも」 未来がうなずく。
「でも、それを“関係性”って言わないまま進んでいくのが、広報部らしい」
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次回は第77話、土曜日編。 イベントの余韻が残る週末。 ふたりがそれぞれの時間を過ごす中で、“届いたもの”がどう残っていくか。




