第74話: 「気配が重なる場所」 (水曜日)
誰かの何気ない言葉が、ふたりの間に静かな波紋を起こすような構成にしました。
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広報部の準備
水曜日の朝。
広報部では、イベント用の文章がほぼ整い、展示レイアウトの確認が進んでいた。
未来がモニターを見ながらつぶやく。
「“言葉の外側”ってテーマ、広報部らしくていいよね。
でも、文章の“間”が昨日より深くなってる気がするなぁ」
遥がうなずく。
「リンコちゃん、調子いいんじゃない?」
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企画部との交差点
午後。
企画部から陸とひよりが広報部にやってくる。
展示の並び順やキャプションの調整を進める中、ひよりがふとつぶやく。
「章太は、最近ちょっと柔らかいんだよね。
…誰かと過ごす時間が、言葉に出るタイプなんだと思うな。結構分かりやすいヤツなんだよ」
陸が笑いながら言う。
「それ、リンコさんにも言えそう」
未来が小さくうなずく。
「ふたりとも、“言葉にしないまま残るもの”を持ってる感じがします」
リンコは、資料を見つめながら答える。
「…それが、展示になるって不思議ですね。
仕事の中に、誰かの気配が残るなんて」
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ふたりのすれ違い
夕方。
章太が広報部に資料を届けに来る。
打ち合わせの合間、リンコとすれ違う瞬間があった。
「展示、楽しみですね。先輩」
「…そうだな、最近仕事も前より楽しいしな」
ふたりは、それ以上言葉を交わさなかった。
けれど、その“間”には、何かが確かに残っていた。
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次回は第75話、木曜日編。
イベント前日。展示が完成し、広報部と企画部の空気がひとつになる日。




