第71話: 「楽しみになるという変化」 (日曜日)
前日の土曜日にふたりが過ごした時間と“来週のイベント”という約束が静かに残る中、それぞれが別々の場所で過ごす日曜日。 直接会うことはないけれど、互いの存在がふとした瞬間に思い浮かぶような、静かな余韻の一話に仕立てました。
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静かな部屋の中で
日曜日の朝。 リンコは、ゆっくりと目を覚ました。 窓の外は曇り空。けれど、空気はやわらかく、昨日の秋の匂いがまだ残っている気がした。
湯を沸かしながら、机に向かう。 社内報の下書きを開くが、今日は文章を整える気分ではなかった。 言葉にする前の“余白”を、もう少しだけ味わっていたかった。
昨日、先輩と過ごした時間。 「“言葉の外側”で、また会いましょう」 その約束が、今日の静けさを少しだけ温かくしていた。
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仕事が近づいてくる
午後。 リンコは、部屋の片隅に置いてある広報部の資料を手に取った。 来週のイベント案。未来が送ってくれたメモには、こう書かれていた。
「“余白”をどう見せるかは、広報部らしさの見せどころです」 その言葉に、少しだけ笑みがこぼれる。
遥の声もふと浮かぶ。
「リンコちゃんの文章って、誰かの気配が残ってるんですよね」 その“誰か”が誰なのかは、もう分かっている。
資料を読みながら、リンコは思う。 “仕事”って、誰かと共有することで、少しずつ楽しくなっていくのかもしれない。
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月曜日が待ち遠しくなる
夕方。 リンコは、メールマガジンの冒頭文を整え始めた。 言葉はまだ曖昧だけれど、書き出しだけは決まっていた。
「誰かと過ごした時間が、仕事の温度を変えていく。」
その一文を打ち終えたとき、彼女は少しだけ息を吐いた。 月曜日が、少しだけ待ち遠しくなっていた。
先輩に会えること。 広報部の空気に戻れること。 未来や遥と、また言葉を整えていけること。
それら全部が、“楽しみ”という感情に変わっていた。仕事が楽しいと思えるのはいいことだ。
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第72話、月曜日編。 イベントに向けて広報部と企画部が動き出す一日。




