第7話:「遠回りでも、君となら」** (日曜日)
休日の余韻と、また始まる日常への淡い期待——ふたりの関係が静かに芽吹くラストデーをご覧ください
日曜日の午後。
街には、週末の最後を惜しむような人々の足音が響いていた。
氷川リンコは、駅前の雑貨屋で買ったばかりのスニーカーを履いて、わざと少し遠回りして歩いていた。
なんだか、急いで帰る気になれない。空も晴れてるし、スマホの通知も静かだ。
そんな時、喫茶店の角を曲がった先で——
「あれ?氷川?」
聞き慣れた声に振り向くと、ネイビーのシャツを着た先輩が、コンビニの袋を片手に立っていた。
「先輩も…散歩中ですか?」
「いや、夕飯買いに。歩くと悩みも減る気がしてさ」
彼はそう言って、袋の中から缶チューハイをちらっと見せた。
リンコは笑って言う。
「わたし、今日“歩く系女子”なんで。一緒に遠回り、してもいいですか?」
ふたりは並んで歩き出す。道端の花壇、青い空、風にそよぐ木々。
なんてことのない風景なのに、横にいる先輩の呼吸が聞こえるだけで、少し特別な気分になる。
「明日からまた月曜ですね」
ぽつりとリンコが言うと、先輩は少しだけ口元をゆるめた。
「…明日も、同じ時間に会えるって思ったら、案外悪くないかもな」
「それ…地味にめっちゃうれしいやつなんですけど!」
ふたりは笑い合う。
日曜の空の下、帰り道は少し遠回り。でもその時間が、週末の締めくくりにはちょうどよかった。
帰り着くころ、街灯が灯る。
明日が来ることに少し戸惑いながらも、“また会える”ことにそっと期待した日曜の終わりだった。
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ふたりの一週間が、ここでやわらかく締まりましたね