第68話: 「言葉にしてみる、ほんの少しだけ」 (木曜日)
第68話(木曜日編)は、先輩とリンコさんの関係性が少しだけ進展するよう、直接的なやりとりを描いていきます。
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広報部の静けさ
木曜日の朝。 広報部のフロアは、いつも通り静かだった。 リンコは、社内報の本文を整えながら、昨日の陸とひよりの言葉を思い出していた。
「リンコさん、最近ちょっとだけ“誰かのこと”考えてる感じします」 その“誰か”が誰なのか、もう自分では分かっている。 でも、それを言葉にするには、まだ少しだけ勇気がいる。
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先輩の訪問
午後。 企画部からの資料確認のため、先輩が広報部に現れた。 未来が軽く手を振り、遥が資料を受け取る。
リンコは、少しだけ迷ってから声をかける。
「先輩、少しだけ…いいですか?」
ふたりは、窓際の打ち合わせスペースに移動する。 外は曇り空。けれど、光は柔らかかった。
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言葉になる瞬間
リンコは、資料を手にしながら言う。
「…オータムフェスト、ありがとうございました。 あの時間、すごく静かで、でも…残ってます」
章太は、少しだけ驚いたように笑う。
「…俺もだよ。 “また”って言葉、送ったあと、ちょっとだけ怖かったけど。でもいつになくしおらしいな」
リンコは、目を伏せてから、静かに言う。
「“また”って、言葉の中にいろんな気持ちが入ってて。 でも、私は…“また”が嬉しかったから」
章太は、何かを言いかけて、でも言葉にはしなかった。 その沈黙が、ふたりの間に静かに残った。
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夕方の広報部
夕方。 リンコは、社内報の本文に一行だけ加えた。
「“また”という言葉には、まだ言えない気持ちがそっと隠れている。」
未来がそれを見て、ふとつぶやく。
「…リンコちゃん、今日ちょっとだけ進んだかな」 遥がうなずく。
「言葉にするって、距離を縮めることなのかも」
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次回は金曜日編、第69話。 週の終わりに向かって、ふたりの関係性がどう揺れるか。




