第66話: 「言葉にしないまま、残るもの」 (火曜日)
祝日でリンコさんが静かな時間を過ごしたあと、会社にやってくる一日。未来や遥との会話を中心に進めていきます。
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広報部の再始動
火曜日の朝。 三連休明け、広報部のフロアに久しぶりにみんなの姿が戻ってきた。 未来が笑顔で声をかける。
「おはよー、何か楽しいことあった?」 リンコは少し照れながら答える。
「うーん…。秋の空気、吸いすぎたかな。ちょっとフワフワしてるかも」
遥が資料を渡しながら言う。
「そうなの?そういえば先輩とどっか行った?」
リンコは、モニターを見つめながら答えた。 「大通公園行ってきたよ。後輩パワーで奢ってもらってきた」
「いいなぁ、ね。今度わたしたちも誘ってよ」
「三人で先輩に奢ってもらおう」
言葉の調整と、にじむ気配
午後。 社内報の本文調整が進む中、未来がふとつぶやく。
「“誰かと過ごした時間”って言葉、まだ読まれてるね。 …でも、今のリンコちゃんの文章は、それを言い切ってないよね」
遥がうなずく。
「先輩のコピーに近いかも。 “言葉の外側にあるもの”を残す感じ」
リンコは、少しだけ目を伏せてから答える。
「 それが、文章の温度になるのかもしれないと思ってて。でもなんだか煮え切らないっていうか、はっきりしないっていうか」
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静かな余白
夕方。 資料の整理を終えた未来が、ふとつぶやく。
「火曜日って、週末の余韻がちょっとだけ言葉に染みるよね」 遥がうなずく。
「それを整えるのが広報部だけど、 整えすぎないのが、リンコの文章」
リンコは、モニターを閉じながら思う。 “誰か”という言葉の中に、先輩の気配がそっと残っている。 それを言葉にするには、もう少しだけ時間が必要だった。
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次回は水曜日編、第67話。リンコさんの“言葉にならないもの”にそっと触れるような展開にしていきますね。




