第63話: 「静かな休日の、ささやかな誘い」 (土曜日)
週の疲れが少しずつほどけていく土曜日の空気と、ふたりの距離がまた一歩だけ近づく予感を込めて。
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午前の街と、午後の余白
土曜日の午前。 章太は、少し遅めに目を覚ました。 窓の外は晴れ。空気はひんやりしていて、秋の気配が街に染み始めていた。
コーヒーを淹れて、ゆっくりと服を選ぶ。 今日は予定がない。けれど、何かを探したくなるような気分だった。
街へ出ると、札幌の中心部は少しだけ賑わっていた。 大通公園では、オータムフェストが開催されている。 出店のテントが並び、香ばしい匂いが風に乗って漂ってくる。
章太は、ベンチに腰掛けてスマホを取り出す。 画面には、昨日リンコが送ってくれたメールマガジンの文章。
「誰かと過ごした時間の中に、変化はそっと息づいている。」
その一文を読み返しながら、ふと指が動いた。
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ささやかな誘い
夕方。 章太は、スマホに短いメッセージを打った。
「明日、大通のオータムフェスト、行ってみないか? まだ暑いけど、秋の匂いだけ拾いに」
送信ボタンを押したあと、少しだけ画面を見つめる。 “誘う”という行為が、こんなに静かに響くとは思っていなかった。
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夜の気配
夜。 章太は、部屋の灯りを落として、窓辺に立つ。 外では、風が少しだけ強くなっていた。
スマホが震える。 画面には、リンコからの返信。
「いいですね。秋の匂い、拾いに行きましょう。先輩おごってくださいよ」
その言葉に、章太は小さく笑った。 日曜日が、少しだけ待ち遠しくなった。
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“秋の匂い”が、ふたりの距離にどんな余白をもたらすのか。 静かな時間の中で、また一歩だけ進めてみましょう。




