表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ショートシーン  作者: 木村ユキムラ
6/60

第6話:「ミルクティーと本棚の間に」** (土曜日)

休日の静けさの中、偶然交差するふたりの午後——心の距離がやさしく溶けていくひとときです


土曜日、午後3時。

街のはずれ、レトロなカフェの奥には静かな本棚が並んでいた。 


氷川リンコは、ベージュのニットとスニーカー姿で、スコーンの甘い香りに包まれながらスマホでメニューを見ていた。

休日モード全開のまったり顔。


「…あれ?氷川?」

カップのふちに口をつける寸前、聞き慣れた声がカフェの空気を揺らした。

振り返ると、私服姿の先輩。ネイビーのパーカーにジーンズ。いつもより少しラフだけど、なんだかしっくりくる。


「先輩、カフェ似合うんですね。てか偶然すぎ…!」

リンコは笑いながら席を指さす。


先輩は少し迷ったあと、静かに向かいに座った。

店内はジャズが流れていて、ふたりの会話はゆっくりとしたリズムで進んでいく。


「普段はこういうとこ来るんですか?」


「月に1回くらい。“落とし物”探しに」


「え?落とし物…?」


「なんか、置いてきちゃった気分になった週ってあるだろ。気持ちとか、余裕とか」


「先輩…詩人になったんですか?それとも頭ぶつけちゃった?」

リンコはいたずらっぽく笑った。

それから、ぽんと手帳を取り出した。


「じゃあ、今日拾った気分になった言葉、書いてもいい?」


先輩は頷いて、ミルクティーに口をつけた。

そして、黙って本棚の端に視線を移した。


休日のカフェ。

ミルクティーと本棚の間に、ふたりの距離が静かに溶け始める午後だった。





休日ならではのゆるやかな時間が流れる一話でしたね

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ