第53話: 「見られていることに、気づいていない人」 (水曜日)
未来と遥がリンコを囲むようにして交わす、ちょっとした会話の時間を中心に描いてみます。プロジェクトがひと段落した今だからこそ、ふたりの視点からリンコの変化や“誰かとの距離”に触れるような、柔らかくて少しだけ鋭い一話にしてみましょう。
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水曜の昼休み。 広報部の給湯スペースに、未来と遥が並んで立っていた。 リンコは少し遅れてやってきて、カップを手に取る。
「…なんか、最近静かですね。 プロジェクト終わったから?」
未来が言う。
「静かっていうか、“余韻モード”って感じ。 リンコさん、ちょっと柔らかくなった気がする」
遥が笑いながら言葉を重ねる。
「それ、“誰かの影響”ってやつじゃないですか? 章太さんとか?」
リンコは、紅茶を注ぎながら答える。
「…影響っていうより、“言葉の余白”をもらった感じかな。 自分の文章に、ちょっとだけ“間”ができた気がする」
未来は、カップを持ちながら静かにうなずく。
「その“間”って、誰かの気配が残る場所ですよね」
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午後。 広報部の作業スペースで、遥がリンコに資料を渡しながら言う。
「章太さんとの“ご飯の約束”、聞きましたよ。 …楽しみですね」
リンコは、少しだけ驚いた顔をしてから、笑う。
「…なんで知ってるんですか」
「未来さんが“言葉のない時間を味わうらしい”って言ってました」
リンコは、資料を受け取りながらぽつりと返す。
「…見られてることに、気づいてない人って、案外多いんですね」
遥は笑いながら言う。
「でも、見てる人はちゃんと見てますよ。 ふたりの“余白”、すごくいい感じです」
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水曜日は、“見られていることに気づいていない人”が、少しだけ自分を意識する日だった。 未来と遥の視線が、リンコの変化をそっと言葉にしていた。 そして、その言葉がまた、リンコの中の何かを静かに動かしていた。
今回は未来と遥の視点から、リンコの“今”をやさしく見つめる一話になったと思います。




