第50話: 「言葉にしない気持ちが、少しだけ動く日」 (日曜日)
章太とリンコの関係性が少しだけ進展する休日の一幕を描きつつ、ひよりのさりげないヤキモチがふわっと香るような、柔らかくてちょっと切ない回にしてみます。言葉にしない気持ちが交差する、そんな“余白のある節目”をお届けします。
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日曜の午後。 章太とリンコは、札幌駅近くのギャラリーで開催されている“小さな言葉展”に足を運んでいた。 展示されているのは、短い詩や手紙の断片。 ふたりは、言葉を“仕事”として扱う者同士として、静かに見て回っていた。
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「この一文、好きです」 リンコが指さしたのは、手書きのカード。
“伝えなかったことが、ずっと残っている。”
章太はその言葉を見て、少しだけ黙った。
「…残るって、悪いことじゃないな。 言えなかったことが、次の言葉になることもある」
リンコは、章太の横顔を見ながらうなずいた。
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その頃、ひよりは広報部の資料整理をしていた。 ふと、社内チャットの履歴に目が止まる。
【章太】「今日は“小さな言葉展”展示見てきます。 言葉の余白、探してきます」
ひよりは、スマホを閉じて、コーヒーをひと口。
「…展示か。 言葉の余白なんて、章太さんらしいな。」
その声は、誰にも聞かれていない。 でも、少しだけ“さびしさ”が混じっていた。
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夕方。 ギャラリーを出たふたりは、駅前のベンチで並んで座る。
「先輩、最近ちょっと変わりましたよね。 言葉の“間”が、前より柔らかい」
「…誰かの言葉を受け取るようになったからかもしれないな」
リンコは、何も言わずに笑った。
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日曜日は、“言葉にしない気持ち”が少しだけ動く日だった。 章太とリンコの距離が、ほんの少しだけ近づいた。 そして、ひよりの胸の奥で、何かが静かに揺れた。
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節目にふさわしい、静かな進展とさりげない揺れを描いてみました。




