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ショートシーン  作者: 木村ユキムラ
4/60

第4話:「このひとくち、距離感注意」** (木曜日)

ランチタイムの“ひとくち”が距離をちょっとだけ変える瞬間——どうぞじんわりと味わってください


木曜日。

昼休み、社内食堂の匂いは今日もカレー寄り。


氷川リンコは、少し出遅れてランチスペースを歩いていた。

空席はまばらで、ふと視界に入った後ろ姿が——


「…先輩、食べるの早すぎっしょ」


企画部の先輩は、静かに自席でコロッケパンをかじっていた。

その様子を横目に、リンコは隣の席に座る。


「ひとくちもらってく?って顔してるよね?」


「してない」


「え〜、今絶対してた。わたし、察し力だけはあるんで」

そう言いながら、リンコは自分のサンドイッチをひょいと差し出した。


「たまごサンド、好きっしょ?ひとくちどーぞ」


先輩は、ほんの少し眉を上げて、それから一口だけかじる。

静かな時間の中で、カレーの匂いとたまごの甘みが混ざる。


「…うまい。味よりタイミングが良かった」


「え、それ褒めてる?ディスってる?」


「8:2で褒めてる」


リンコは小さく笑って、ジュースのストローをくるくる回す。

何気ない一口で、心の距離がほんの少しだけ動いた気がした。


隣のテーブルでは他部署が楽しそうに話している。

でも、この席のふたりだけが共有した味とタイミング——


木曜ランチ、距離感注意報。

でも、気づかないふりして進みたくなる午後だった。


---

味とタイミングでつながる関係…食堂の椅子に座っただけなのに、ちょっと甘い空気が流れる回でしたね

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