第37話: 「同じ温度で語れないもの」** (月曜日)
リンコとひよりが“それぞれの言葉の矜持”を持って対峙する場面を軸に火花を散らすというより、「この人は自分と似てない。だからこそ気になる」という温度感の牽制。ふたりの交差が、章太との距離感にも静かに影響を与えていく一話になりそうです。
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月曜の朝。
広報部のリンコは社内報の構成案を整えながら、企画部との合同会議の資料をまとめていた。
「“感情の粒度”で読まれる文章と、“企画意図”で読まれる文章…」
画面の余白に、仮タイトルとして浮かび上がる。
> “言葉の届き方と、企画意図との距離感”
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同時刻、企画部では章太が参考資料の調整中。
傍らからひよりが話しかけてくる。
「…この補足、“読まれる側の温度”って入れたんですね」
「広報部の草案に合わせた。少し書き足しただけだ」
「ふーん。リンコさん、読む人の感情に寄り添いすぎるんですよね。
それが“言葉の強度”を曖昧にしてる気がする」
章太は、言葉を選ぶようにして答える。
「…曖昧じゃなくて、繊細なんだと思うよ」
ひよりは、資料の束を持ちながら首を傾げる。
その視線には、静かな疑問と、少しの焦り。
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昼過ぎ。会議準備で一部調整が入り、ひよりが広報部の席へ。
リンコに資料共有を申し出る。
「“読者の沈黙を前提にする”って文言、加えたんですね。
それって、反応を放棄してるだけに見えるんですけど」
リンコは手を止めて、ゆっくり顔を上げる。
声のトーンは落ち着いていた。
「放棄じゃなくて、**選択**ですよ。沈黙の先に、届く言葉もあると思ってる」
ひよりはその言葉に一瞬眉を動かす。
「…感情を優先する広報と、意図を組み立てる企画。
同じ温度で語れないものって、やっぱりあるんですね」
「温度が違うなら、届き方を調整するしかない。
その作業が、今日の会議なんじゃない?」
牽制にも近いやりとり。
でも、それは**互いの言葉に価値があると知っている者同士**の交差だった。
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会議直前。
章太が準備の合間にリンコの原稿をめくっていた。
そこに手書きで添えられていた一文。
> “余白のなかで選ばれる言葉が、感情の輪郭になる”
彼はその言葉に指を止める。
隣には、ひよりが配布資料を整えていた。
「…その文章、わたしも見ました」
「読んだ感触、どうだった?」
「強くはない。でも残る。
なんか、負けてる気もして、ちょっとムカついたかも」
章太は、静かに笑う。
「それは、届いたってことじゃないかな」
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**この日、名前は出なくても、言葉の力だけが交差していた。**
そして誰もまだ気づいていなかった。
**その重なりが、あとから誰かの感情に届いていくことを。**
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直接対峙するシーンを入れることで、リンコとひよりが「互いの文体や視点をどう感じ取っているか」がより立体的になったかと思います。




