第33話:「迷いと一緒に歩いてくれる言葉」** (金曜日)
未来と遥のふたりがリンコをそっと背中を押す展開を中心に描いてみます。ふたりの後押しは騒がしくないけれど、言葉の温度が高くて、リンコの心を静かに動かす力を持っています。
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金曜の午前。
リンコは、校正チェックを終えて社内報の最終確認に入っていた。
ふと、社内チャットに陸が軽口を書き込む。
> “歓迎会から1週間。今夜も何かある人、手を挙げなさい〜”
その文字に、指先が一瞬止まる。
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昼休み。
広報部の給湯スペースで、未来と遥が並んでいた。
「リンリン、今日の帰りってどうするの?」
「え…普通に帰るけど?」
遥がすかさず言う。
「“ふたりで食事に行く約束”って、内緒にしても表情に出る人、いるよね」
「…え、出てた?」
未来は紅茶のティーバッグをくるくるしながら答える。
「ちょっとだけ。でも、それは“迷ってる顔”だったよ」
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リンコは手元のマグを見つめる。
「…約束っていうか、まだ“ふわっと言っただけ”だから、
本当に行くのか自分でもよくわかってなくて」
遥が静かに笑う。
「それでいいんだよ。
行くかどうかより、“言えなかったことが言えるかも”って思えることの方が、大事じゃない?」
未来が続ける。
「迷いって、誰かが背中押してくれるまで残るものだから。
だから今日、わたしたちが押しに来たの」
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午後、リンコは業務連絡のため企画部に書類を届けた。
先輩は席を離れていたが、机には“週末タスク一覧”のメモが置かれていた。
最後の一項目に小さな文字で書かれていた。
> “食事の確認(調整できるか)”
その文字を見た瞬間、リンコは少しだけうつむいて笑った。
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夕方、未来と遥に一言だけ伝えた。
「…多分、今日行ってくるかな〜。なんちゃって」
ふたりはそれ以上何も言わなかったけれど、
その沈黙は“応援の言葉のあとに残る静けさ”だった。
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金曜日は、“迷いと一緒に歩いてくれる言葉”が生まれた日だった。
ふたりの声が、リンコの心の奥に柔らかく灯っていた。
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未来と遥の温かな後押しによって、リンコが一歩踏み出す勇気を得る回になったと思います。




