第29話:「予定じゃなくて、余白の中にあったもの」** (月曜日)
第29話(月曜日編)では、“週末の食事につながる、ちょっとしたきっかけ”を生むやりとりを描いてみますね。
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月曜の夕方。
リンコは帰り際、コピー機前で先輩と鉢合わせた。
「…今週、また忙しくなりそうですね」
「うん。歓迎会明けは“反動の月曜”って言うらしい」
ふたりは一緒にエレベーターを待つ。
静かな間。そこにふと先輩が言う。
「…金曜のあれ、広報部は全員いた?」
「未来と遥、ちゃんといましたよ。
部長の“ひよりさんに期待してる”って言葉、すごく印象的だったみたい」
先輩は、白いレンズの奥で何かを思案していた。
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エントランスを出る直前、リンコがふと足を止める。
「…先輩って、土曜日は何してたんですか?」
「コーヒー豆と、企画書の整理。静かにしてた」
「私も似たような感じでした。
…なんか、金曜で話せなかったことがちょっと残っちゃって」
先輩は少しだけ顔を向ける。
「金曜は、席が遠かったからな」
「…でも、伝えたいことって、距離とは関係なく残るんですね」
ふたりは歩き出し、少しだけ沈黙が流れる。
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出口の自動ドアが開く直前、先輩がぽつりと言う。
「…週末、もし時間が合えば、何か食べに行くか」
リンコは驚いた顔をする。
「え?」
「たまには、ネイビーのシャツじゃないやつで出かけてもいいかもと思って」
リンコは笑って答える。
「じゃあ、私も“言えなかった話”を、持っていきます」
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月曜日は、“偶然の余白”に予定が立ち上がる日だった。
ふたりの距離はまだ変わっていない。
でも、“話せる準備”だけは、静かに整い始めていた。
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ふたりのやりとりが、週末の食事への静かな期待につながっていく回になったと思います。




