第28話:「沈黙の中で、残ったもの」** (日曜日)
歓迎会の翌日、静かな休日の中で、彼が何を思い、何を選ばずにいたのか——その“沈黙の中の感情”を丁寧に描いてみます。
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日曜の午前。
章太は、駅前のコーヒーショップで豆を選んでいた。
店員が話しかけてくる。
「先週と同じでよろしいですか?」
「…今日は、少し酸味のある方で」
それだけ言って、静かに袋を受け取る。
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帰宅後、章太はキッチンで豆を挽きながら、昨日の歓迎会を思い出していた。
ひよりの声。
隣の席で、軽やかに話しかけてくるテンポ。
「先輩って、笑うと目元がやわらかくなるんですね」
そう言われた瞬間、周囲が少しだけざわめいた。
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でも章太の記憶に残っているのは、
その声ではなく、**視線の先にいた誰かが、何も言わなかったこと**。
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午後。
章太は、企画書の下書きを整理していた。
ふと、文末に入れようとしていた一文を削除する。
> “伝えることより、残すことの方が難しい”
その言葉が、今の自分にはまだ早い気がした。
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夕方。
章太は、ベランダでコーヒーを飲みながら、スマホを開く。
社内報の最新号。
リンコの文章が、静かに画面に表示される。
> “週の終わりに残るのは、言えなかったひと言かもしれない”
その一文に、指が止まる。
「…言えなかった、か」
誰のことかは書かれていない。
でも、自分の中で“誰か”が浮かんだ時点で、それはもう届いていたのかもしれない。
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日曜日は、“沈黙の中で残ったもの”を見つめる日だった。
言葉にしなかった気持ちが、静かに心の奥に沈んでいた。
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章太の静かな休日の中に、リンコの言葉がそっと響いてくる回になったと思います。




