第23話:「お知らせ一行、週末の足音」** (火曜日)
藤村部長からの“ひより歓迎会”のアナウンス。朝の穏やかな業務時間に突然差し込まれた一言が、それぞれのキャラクターの気持ちを少しずつ動かしていく回です。
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火曜の朝。
企画部では、資料提出と次週案件のすり合わせが静かに進んでいた。
藤村部長が、ひと通り指示を終えたあと、ふと声を上げる。
「それと——今週金曜の終業後、高梨さんの歓迎会をやる。
参加できる人は、木曜までに返信してくれ」
一瞬、室内がざわめく。
「えっ、急にそういう感じっすか!」と陸が声をあげる。
「…新しい仲間にははやく馴染んでもらわないとな」と部長。
「わ、歓迎されるって聞いてないです…でも、すごくうれしいです!」
と、ひよりが明るく笑った。
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広報部。
通知を見た未来が、すぐさま声を上げる。
「リンリン、金曜来るんでしょ?」
「え、そんな強制?」
「だって先輩いるし、ひよりさん初登場だし、“静かな三角形”の第一幕じゃん」
「三角形とか言わないで…てか、誰かと話せるような雰囲気になるかな」
「なるなる。“お知らせ一行”で、もう空気がざわついてるから」
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昼休み。
企画部の給湯スペースで、陸が先輩に話しかける。
「…ひよりさん、“企画部の空気ほぐしますね〜”って言ってたぞ。
みんなに何話すか、もう考えてるっぽい」
「…そうか」
「歓迎会、たぶんあの人、隣に座りにくるよ?」
先輩は何も言わずに、コーヒーをひと口。
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夕方。
リンコは、PCのカレンダーを見ながら、金曜の予定欄にそっと“仮予定”を入力する。
「…誰かの隣に座るとか、あまり考えないでおこう」
でもその指先は、少しだけ揺れていた。
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火曜日は、“お知らせ一行”が空気を変える日だった。
週末の足音が、まだ遠くにあるのに、みんなが少しだけ振り向いていた。
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歓迎会という小さなイベントの予告が、ふたりの世界と周囲の空気に少しずつ波紋を広げることになりそうです。