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ショートシーン  作者: 木村ユキムラ
22/90

第22話:「はじめましての風、静けさの隣に」** (月曜日)

高梨ひよりの初登場回です。彼女の明るく積極的な性格が企画部に新しい風を吹き込み、先輩とのやりとりに微妙な空気が生まれる——そんな“始まりの気配”を描いた一話です。


---



月曜の朝。

企画部の空気は、いつもより少しだけざわついていた。


藤村部長が、朝礼の最後にふと声を上げる。


「今日から企画部に加わる、高梨ひよりさんだ。営業部からの異動になる」


ひよりは、白いブラウスにベージュのパンツ姿で、明るく一礼した。


「高梨ひよりです。企画の仕事、ずっと興味があって…

先輩方の背中、たくさん見させてもらいます!」


その“先輩方”の中に、章太も当然含まれていた。



午前中、ひよりは資料整理を終えたあと、先輩のデスクにふらっと現れる。


「先輩、これってどこに提出するんですか?」


「…部長に直接。午後の会議で使うから」


「ありがとうございます。

…先輩って、話すとき静かですね。声のトーン、落ち着くかも」


先輩は、少しだけ視線を上げる。


「…そうか」


「はい。営業部って、テンション高めだったんで。

企画部、空気が違って新鮮です」


その言葉に、先輩は何も返さず、資料に目を戻した。



午後、リンコは広報部の席で、社内チャットを見ていた。

そこには、ひよりが企画部に異動したという通知と、軽い自己紹介の文面。


「…高梨ひよりさん、か」


未来が隣で言う。


「リンリン、ちょっと顔が“気になるモード”入ってるよ?」


「え、そんなこと…」


「先輩の隣に新しい風が吹いたら、そりゃ気になるでしょ。

でも、風って、吹いても根っこは動かないから」


リンコはその言葉に、少しだけ安心したように笑った。



月曜日は、“はじめましての風”が吹いた日だった。

でも、静けさの隣に立つ人は、まだ変わらずそこにいた。


---


ひよりの明るさが企画部に新しい空気を運びつつ、先輩の静けさがそれにどう向き合うか——そんな始まりの一話になったと思います。

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