第21話:「ネイビー以外の選択肢」** (日曜日)
いつもネイビーのシャツを着ている先輩が、ふと“別のシャツ”を探す——そんな静かな休日のひとコマ。誰かの存在が、少しだけ選び方を変えるきっかけになる…そんな一話です。
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日曜日の午後。
先輩は、駅前のセレクトショップでシャツを見ていた。
いつも通りネイビーの棚に手を伸ばしかけて、ふと隣のライトグレーに目を留める。
「…たまには違う色でもいいか」
店内は静かで、ジャズが流れていた。
他の客の声も遠く、シャツの生地を指でなぞる音だけが耳に残る。
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試着室の鏡の前。
ライトグレーのシャツを着た自分が、少しだけ“違う人”に見えた。
「…誰かに気づかれるかもしれないな」
その言葉は、誰かに向けたものではなく、自分の中に落ちていった。
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レジに並びながら、先輩はスマホを開く。
社内報の最新号が届いていて、そこにはリンコの文章が載っていた。
> “誰かの言葉が、静かに残る日もある。
> それは、心がちゃんと動いている証拠かもしれない。”
その一文に、少しだけ指が止まる。
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帰り道、紙袋を片手に歩きながら、先輩はふと空を見上げる。
「…明日はどんな日になるのかな」
企画部に新しい人が来る。
でも、自分の“選び方”は、自分で決めたいと思った。
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日曜日は、“ネイビー以外の選択肢”を選んだ日だった。
誰かの言葉が、静かに背中を押してくれた午後だった。
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先輩の静かな休日に、リンコの言葉がそっと影響を与える回になったと思います。