第2話:「レンズ越し、ふたり」** (火曜日)
レンズ越しにふと見えた先輩の素顔——、ふたりの距離が少しだけ近づいた瞬間です。
昼下がりの社内。
共用スペースに差し込む陽が、柔らかく書類の端を染めていた。
広報部のリンコは、社内SNS用の写真を撮るためにカメラを構えながら、ちょっとはしゃいでいた。
「この角度…いいじゃん!めっちゃ雰囲気出てるかも〜!」
その時、背後を通った人影が偶然フレームイン。
レンズ越しに映ったのは、企画部の先輩だった
「あ、ちょ、先輩!今フレームに入ったし!」
振り返った先輩は、少し驚いた顔でこちらを見たあと、肩をすくめた。
「…悪い。広報部の“激写タイム”には注意が必要なんだな」
「ほんとそれっしょ!」と笑いながら、リンコはシャッターを切る。
モニターに映った彼の表情は、会議室で見るそれより、少しやわらかくて。
「…なんか今の笑顔、ちょっとレアじゃない?」
彼は視線をカメラから外して、机のドーナツを手に取った。
「レアかどうかは…そっちのカメラ次第だろ」
そう言って、ぽいっと一口。
コーヒーと甘さで、場の空気はなんとなく昼下がりの余韻に満たされる。
リンコは、撮った写真をスマホに転送しながらぽつり。
「…この写真、個人的保存しよっと」
先輩は、少しだけ固まった。
だが何も言わず、ドーナツの箱を彼女の方へ押しやった。
静かな、でも確かに少しだけ近づいた午後だった。
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どうでしょう…火曜らしい“ちょっとした出来事”の中に潜んでいる、ほんのり甘い瞬間でした。