第19話:「予告された風と、静かなままでいたい気持ち」** (金曜日)
週末を前に、企画部に新しい風が吹き込む予感——先輩とリンコ、それぞれの静かな反応が描かれる一話です。
---
金曜の午後。
企画部では、週末前の進行確認が静かに行われていた。
藤村部長が、資料を閉じながらふと口を開く。
「…来週の月曜から、ひとり企画部に異動してくる。営業部からの転属だ」
先輩は、手元のペンを止めて顔を上げる。
「誰が来るんですか?」
「高梨ひより。営業部での動きが良かった。
明るくて積極的なタイプだ。…章太、お前の1個下だな」
その言葉に、先輩は少しだけ眉を動かす。
メガネのレンズは白く光っていて、瞳は見えない。
「…了解です」
部長は続ける。
「彼女、企画に興味があるらしくてな。
お前と組ませることもあるかもしれん。…刺激になるかもな」
—
夕方、リンコは広報部の資料をまとめながら、未来と雑談していた。
「…企画部に異動って、誰が来るんですか?」
「高梨ひよりさんって人らしい。営業部の“元気枠”って遥が言ってた」
「元気枠…先輩、大丈夫かな」
未来は笑いながら言う。
「先輩って、“静けさで会話するタイプ”だからね。
でも、そういう人に限って、元気な人に引っ張られたりするんだよ〜」
リンコは、少しだけ複雑な気持ちでモニターを見つめる。
—
夜。
先輩は、デスクのペン立てに万年筆を戻しながら、ふと窓の外を見る。
週末の街が静かに灯り始めていた。
月曜から、新しい風が吹く。
でも、自分の言葉の“選び方”は、変えずにいたいと思った。
金曜日は、“変化の予告”と“静かな決意”が交差する日だった。
---
ひよりの登場を前に、先輩とリンコそれぞれが静かに反応する回になりました。